「遊びごころ」と「遊ぶよゆう」に欠けると:コチコチの堅物! (RTE-News, Nov 23, 2022)
遥か昔の平安時代、白拍子は、『遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけむ … 』と歌い上げて、舞を披露した。
しかし、それからおよそ800年の月日が過ぎると、第二次世界大戦が勃発。日本のほとんどの都市は廃墟と化した。人々は、豊かな生活と社会のインフラを取り戻すために、あくせくと馬車馬のように (toil and moil)働いた。
当時、ヨーロッパ人からは「work adiction (仕事中毒)」と蔑まれ、「過労死(karoshi)」という日本語は、そのまま英語の辞書「COD」に取り入れられてしまった。
そして時代は過ぎた。
多くの人が海外旅行に頻繁に出かけたり、高価なブランド品を買い漁ったり、高級車を乗り回すなど、その生活は過剰なまでに贅沢なものになった。もちろん、働き方もずいぶんと変わった。しかし、本当に、社会は平和に、人々は「幸せ」になったのだろうか。
RTEは、ここに、著名な心理学者 Dr Sturar Brownが創設した「The National Institute for Play (国立遊戯研究所)」の調査結果をまとめた。きっと、今後の「働き方」や「人生の生き方」を考える際のヒントになってくれるはずだ。
1.なぜ「遊びごころ」が必要か
仕事はいつも楽しいとは限らない。職場では、常に業務能力 (productivity)と競争力(competitiveness)が問われて、緊張とストレスにさらされ、義務 (commitments)と責任(responsibilities)が追求される。
ただし、この環境に置かれて、余りにも仕事、仕事に追い回されていると、「燃え尽き症候群 (burnout syndrome)」や「うつ (depression)」を発症しかねない。
だから、ときには「ガス抜き」が必要なのだ。そこで、おすすめなのが「遊び」。
日常の生活に「遊びごころ (play spirit)」と、それを持つ余裕を取り入れることだ。
Dr Brownによれば、遊びたいと思う心は、人間が生まれながらにしてもっている本能。しかし大人になるにつれて「人前をあまりにも気に (too self-conscious)するようになったり、遊びたい衝動を抑え込んでしまう傾向が現われるという。そして、遊びを「unproductive or silly (なんの役にも立たず、バカバカしいもの)」と見なしてしまう。たいていの大人にとって、現実は子どもの世話だったり、お金の心配や日常の雑事に追われて、遊びどころではなくなっているのだ。
2.遊びの「効用」とは
しかし、遊びには、
・keeping our brains flexible:思考の柔軟性を保ち
・boosting neurotransmitters:神経伝達物質の分泌を促し
・sharpening our socio-emotional skills:社会・情動スキルを磨き上げる
作用があり、加えて、遊ぶことによって、脳内に新たな「neural connections (神経連絡回路)がつくり出されるという。
それに、「笑い (laugh)」と「遊び (play)」によって、抱擁ホルモン (cuddle hormone)の「オキシトシン (oxytocin)」、「エンドルフィン (endorphins)」が分泌されると、「憂い (depression」は吹き飛ばされて、心が「おおらかな気持ち (optimism)」で満たされるようになる。
なお、年配の人には
・cognitive health:健全な認知機能
・emotional well-being:幸福感
を高める効果が期待できる。
3.どんな「遊び方」があるか
さて、その遊び。遊び (play)は、ただ、子どもの頃に戻って、
・enjoyable:楽しく
・voluntary:気ままに
・done for its own sake:自分だけのために
するもの。だから、「The Journal of Personality abd Individual Diffences」が指摘するように、こんなことだって、遊びとなる。
・social engagement (社会活動)
・imagination
・mental fun challenge
・just being whimsical (おどけてみる)
・jigsaw puzzles
・colouring books
・riding a bike for fun
・playing fun games
・playing with a dog
・freestyle dance
・singing happy songs
・crafts
・learning magic tricks
・interacting with a baby or child
さらに、遊び仲間を見つけて、一緒に遊ぶなら
・social connections (人と人とのつながり)
が深まって、完璧この上なし。
おわりに:遊びの基本は、あくまで「よく学び、よく遊べ」。気合を入れて学びもしないし、働きもしない人は、遊んでも、心から楽しめない。そして、もちろん、遊びで、ひと様に迷惑をかけないことだ。近頃は、まともに勉強もしないし、遊び方さえ分からない大学生や、遊びのマナーが分からない紳士淑女(自称)がずいぶんと増えた。気の毒なことだ。
ちなみに、紳士とは
・気品や教養をそなえ、礼儀正しく道義を重んじる男子。
[金田一春彦編:学研現代新国語辞典 改訂第三版、2002]
とある。今では、ほとんど絶滅危惧種に属する「立派な人」のことを言う。
(写真は添付のRTE Newsから引用)