むやみに食べて、むやみに太っては、からだに良いはずがない。けれども、いったん体重が増えだすと、コントロールすることはなかなか難しい。そんなとき、だれでも減量の薬はないかと考える。
運良く、そんな薬があることはある。その一つが「Mounjaro (マゥンジャロ)」。もともとは 2型糖尿病の治療薬として開発されたものだった。医療業界では「The King Kong of weight loss habs」とあだ名がつくほどよく知られている薬剤だ。
この薬剤を糖尿病治療用のペン型注射器でおなかや太ももに注射すると、満腹感に襲われて食欲が減退するという。なお、Mounjaroは「tirzepatide (チルゼパタイド)」の商品名だ。すでにUSでは、2022年 5月、FDA (米国食品医薬品局)によって肥満症の治療薬として承認されていたが、今回、UKの医薬品規制当局 MHRAは、肥満症患者ならびに肥満が原因の疾患の患者に対して、「Mounjaro」を使用することを正式に認可した。
これまで実施されたMounjaroの臨床試験 (trials)では、体重の 1/4も減量した被験者も現われ、UKの当局は、国内の販売、処方に当たって安全かつ有効と判断したのだ。
ただし、「Healthcare spending watchdog (医療費監視機関)」の「The National Institute for Health and Care Excellence (国立医療技術評価機構NICE)」によると、肥満治療薬として「Mounjaro」を使用することに関しては、再審査の対象とし、その調査結果を2024年の 3月に公表することが義務づけられている。
なお、定期的な Mounjaroの注射を途中でやめると、ほとんどの場合、体重がもとに戻るとの研究結果も報告されている。
また、次のような副作用がある。
・nausea :吐き気
・diarhoea :下痢
・vormiting :嘔吐
・constipation :便秘
さらに、この薬剤は経口避妊薬 (contraceptive pill)」の効き目に影響を及ぼす可能性があると指摘する専門家もいる。このため、「Mounjaro (マゥンジャロ)」を使い始めた後の4週間、また薬剤の増量後の 4週間は「non-oral consttraception method (経口避妊薬以外の避妊法)」に切り替えることが推奨されている。
一方、Mounjaroと ほぼ同じ作用のある糖尿病治療薬「Wegovy (ウゴービ)」については、今回、肥満治療薬としての承認が見送られた。しかし、NHSの減量治療専門家や個人病院で診断を受けると希望する治療が可能であり、今後、GP (一般開業医)に対してもオープンにする計画だ。現在、この Wegovy (ウゴービ)は、在庫が限られているものの、すでに USの「High Street」の一部のチェーン店で販売、処方されている。
なお、肥満治療薬として承認された「Mounjaro (マゥンジャロ)」は、あくまで肥満症患者あるいは高血圧症など肥満に関連した疾患の患者を使用対象にしたものであると、規制当局の MHRAは釘を指す。
さらに、この薬剤は処方してすぐに効果が現われるものではなく、減量を目指すためには、健康的な食生活や適度な運動が欠かせないと付け加える。
肥満症は、UKの医療費を圧迫しているやっかいな疾患だ。肥満症の患者が減量に成功すれば数十億ポンドの医療費削減につながるという。
おわりに:病気の治療は大切だ。しかし、病気の原因・発症メカニズムを明らかにすること、そして、その予防対策を国民に周知することは、もっともっと大切だ。現在の医療は「あまりにも治療のみに重点が置かれて、基礎研究がおろそかになっている」と言わざるを得ない。これでは医療・医薬品業界の収益がうなぎ登りとなる一方で、医療現場で働くスタッフの労働負担と国民の医療費負担がますます大きくなるだけだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)