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肥満治療薬 マゥンジャロ皮下注:UKで正式に認可! (BBC-News, Nov 11, 2023)

Stock image of scales

 むやみに食べて、むやみに太っては、からだに良いはずがない。けれども、いったん体重が増えだすと、コントロールすることはなかなか難しい。そんなとき、だれでも減量の薬はないかと考える。

 運良く、そんな薬があることはある。その一つが「Mounjaro (マゥンジャロ)」。もともとは 2型糖尿病の治療薬として開発されたものだった。医療業界では「The King Kong of weight loss habs」とあだ名がつくほどよく知られている薬剤だ。

 

 この薬剤を糖尿病治療用のペン型注射器でおなかや太ももに注射すると、満腹感に襲われて食欲が減退するという。なお、Mounjaroは「tirzepatide (チルゼパタイド)」の商品名だ。すでにUSでは、2022年 5月、FDA (米国食品医薬品局)によって肥満症の治療薬として承認されていたが、今回、UKの医薬品規制当局 MHRAは、肥満症患者ならびに肥満が原因の疾患の患者に対して、「Mounjaro」を使用することを正式に認可した。

 

 これまで実施されたMounjaroの臨床試験 (trials)では、体重の 1/4も減量した被験者も現われ、UKの当局は、国内の販売、処方に当たって安全かつ有効と判断したのだ。

 ただし、「Healthcare spending watchdog (医療費監視機関)」の「The National Institute for Health and Care Excellence (国立医療技術評価機構NICE)」によると、肥満治療薬として「Mounjaro」を使用することに関しては、再審査の対象とし、その調査結果を2024年の 3月に公表することが義務づけられている。

 

 なお、定期的な Mounjaroの注射を途中でやめると、ほとんどの場合、体重がもとに戻るとの研究結果も報告されている。

 また、次のような副作用がある。

 

・nausea     :吐き気

・diarhoea    :下痢

・vormiting   :嘔吐

・constipation    :便秘

 

さらに、この薬剤は経口避妊薬 (contraceptive pill)」の効き目に影響を及ぼす可能性があると指摘する専門家もいる。このため、「Mounjaro (マゥンジャロ)」を使い始めた後の4週間、また薬剤の増量後の 4週間は「non-oral consttraception method (経口避妊薬以外の避妊法)」に切り替えることが推奨されている。

 

 一方、Mounjaroと ほぼ同じ作用のある糖尿病治療薬「Wegovy (ウゴービ)」については、今回、肥満治療薬としての承認が見送られた。しかし、NHSの減量治療専門家や個人病院で診断を受けると希望する治療が可能であり、今後、GP (一般開業医)に対してもオープンにする計画だ。現在、この Wegovy (ウゴービ)は、在庫が限られているものの、すでに USの「High Street」の一部のチェーン店で販売、処方されている。

 

 なお、肥満治療薬として承認された「Mounjaro (マゥンジャロ)」は、あくまで肥満症患者あるいは高血圧症など肥満に関連した疾患の患者を使用対象にしたものであると、規制当局の MHRAは釘を指す。

 さらに、この薬剤は処方してすぐに効果が現われるものではなく、減量を目指すためには、健康的な食生活や適度な運動が欠かせないと付け加える。

 

 肥満症は、UKの医療費を圧迫しているやっかいな疾患だ。肥満症の患者が減量に成功すれば数十億ポンドの医療費削減につながるという。

 

おわりに:病気の治療は大切だ。しかし、病気の原因・発症メカニズムを明らかにすること、そして、その予防対策を国民に周知することは、もっともっと大切だ。現在の医療は「あまりにも治療のみに重点が置かれて、基礎研究がおろそかになっている」と言わざるを得ない。これでは医療・医薬品業界の収益がうなぎ登りとなる一方で、医療現場で働くスタッフの労働負担と国民の医療費負担がますます大きくなるだけだ。

           (写真は添付のBBC Newsから引用)

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パフュームを嗅ぐとタイムスリップする:もの忘れが改善できる! (RTE-News, Dec 14, 2023)

Can the scent of freshly baked bread dredge up memories we didn't even realise were there?

 木材の香り成分は「phytoncide (フィトンチッド)」。Garcia教授がスペインの とある病院の地下を歩いていて、まったく偶然に、その病院のメンテナンスルームに入ってしまった。そこは真新しい木材の香りが充満していた。

 その香り成分が鼻腔の「olfactory mucosa (嗅粘膜)」に触れると、その情報は「olfactory nerve (嗅神経)」、「olfactory bulb (嗅球)」を通って「limbic sytem (大脳辺縁系)」に伝わった。

 

 すると、一瞬にしてタイムスリップが起こった。もうすっかり忘れていた、幼い頃に遊んだ父親の仕事場の光景がまざまざと蘇(よみがえ)ったのだ。そこには20年前と同じように大工の父がいて、角材にサンドペーパーを掛けながら、こっちに来て手伝うようにと言っている。

 その木の香りは心地よく、日頃のストレスが消えて、気持ちが穏やかになった。まるで魔法にかかったようだった。ようやくのこと、近くのエレベータが動き出して、その音で我に返った。

Ep 2 – Smell: Why do smells evoke memories?

 

1.Smells that revive past emotions:過去の感情を思い出させる香り

 新鮮なウッドチップが、すっかり忘れていた過去の記憶を蘇らせるなんて、いったい、それは何なのだろう。

 木材に限らず、焼き立てのケーキ・パン、夏のプールサイドの塩素の匂い、海岸を吹き抜ける潮風、コーヒー、夕立後の雨・土の匂いも、記憶を呼び起こすきっかけとなることが多いという。

 

 ところで、記憶とは過去の経験に基づく情報を編集、保存、取り出す脳の能力とされる。しかし、どのような経験がもっとも記憶に残るものだろうか。それは、良しにつけ悪しきにつけ、過去において激しく感情が揺さぶられた経験だ。

 

 人間の脳は「bottomless drawer (底なしの引出し)」であり、情報の収納キャパシイは無限だ。でも、そうかと言って、過去のどんな情報でも、すぐに取り出せるものではない。それはなぜか。一度保存された情報は、常に新しい情報によって記憶回路の片隅に追いやられてしまうためだ。取るに足らない些細な情報ならなおさらのことで、他の情報に紛れてしまって、これを引き出すことが難しいのだ。

 

 それが、ある瞬間、ある特定の香り (smells)を嗅ぐことで、過去の記憶・感情が突然、蘇(よみがえ)ることがある。これが「olfactory memory (嗅覚記憶)」と呼ばれるものだ。

Perfume - Why we love the smell of vanilla?

 

2.A direct line to emotional memory:情動記憶に直結した神経回路

 臭覚 (the sense of smell)は、脳の大脳辺縁系 (limblic system)と眼窩前頭皮質 (orbitoftontal cortex)と呼ばれる2つの部位に深く結びついている。前者は匂い・香りの感応に欠かせない部位であり、後者はその匂いを識別して区分し、それを過去の経験や記憶に結びつける役目を担う。

 

 臭覚以外の神経繊維は、全て、感覚系の司令塔「視床(thalamus)」につながっているが、臭覚だけが唯一 VIPパスをもっていて、直接、記憶回路の中枢「大脳皮質 (cerebral cortex)」に入ることが許されている。このため、「familiar smell (嗅いだことのある匂い)」は、情動記憶 (emotional memory)に携わる脳の領域と同じ領域を活性化させることになるという。

Nosetalgia

3.The loss of smell, a sign of neurological illness1:臭覚喪失、神経疾患の兆候

 人は、老化にともなってさまざまな感覚機能が劣化するが、臭覚とて例外を免れない。けれども、匂いを感じなくなる原因は老化だけではない。その症状の裏に深刻な病気が隠れていることがある。

 新型コロナ (Covid-19)ウイルスに感染した患者の多くが、臭覚・味覚を失ったことはよく知られている事実だ。

 

 さらに「神経編成疾患 (neurodegenerative disorders)」に罹患すると臭覚を失うが、これに伴って「記憶喪失 (memory loss)を発症することが多い。つまりは、臭覚の衰え(deterioration)は精神・神経疾患 (psychiatric and neurological contions)の前兆として捉えることができるのだ。

 

 したがって、臭覚機能の低下は、海馬の「灰白質 (grey matter)」が失われて「mild cognitive impairment (軽度認知鳥害MCI)」の状態になり、最終的にはアルツハイマー病(Alzheimer’s disease )に進行しかねないことを示しているといえる。

 この事実が正しければ、臭覚の劣化の程度を知ることによって、MCI患者のアルツハイマー病の進行状況を診断できることになる。

 

 ただし、これを「認知症 (dimentia)」の診断に役立てることはできず、単に「認知機能障害 (cogmitive disfunction)」の兆候あるいは

 

・Parkinson' s disease:パーキンソン病

・Lewy body dementia:レビー小体型認知症

・Creutzfeldt-Jackob disease︙クロイツフェルト・ヤコブ

・Alcoholism:アルコール依存症

・Schizophrenia:総合失調症

 

などの精神疾患の進行状況の把握にとどまるとされる。

 

4.Can smells rehabilitate your memory?:記憶喪失のリハビリに匂いが利用できるか

 アルツハイマー病やパーキンソン病に罹患した患者は、脳の臭覚刺激 (olfantory stimulation)を失っているため、他の病気の症状を悪化させかねない。

 これまでの研究によると、臭覚の強さと死亡リスクの低さの間には、正の相関があることがわかっている。このため、近年、医学会では、精神障害の罹患者の記憶を刺激、リハビリする治療法の一貫として、匂いを活用する研究が話題になっている。

 

 さまざまな匂いを嗅ぎ分けできるように「olfactory enrichment (臭覚強化)」することによって

 

・infection:感染症

・oraneal trauma:眼窩外傷

・Parkinson’s :パーキンソン病

・aging:老化

 

などが原因で失った臭覚を取りもすことができるようになり、認知・記憶力が向上につながるというのだ。

 

 最近発表された臭覚回復治療法に関する研究報告によると、毎晩2時間、いろいろな匂いを嗅ぐことを半年にわたって続けると、記憶機能の改善が改善されたとか。

 ただし、この治療法が認知機能低下の予防・治療に活用できるかについてはさらなる研究が必要とのこと。

Luke Casserly

おわりに:「Proudt Effect: A sudden and vivid memory triggered by scent.」ラベンダーの香りを嗅いで、ラベンダーに関連した過去の記憶や感情が突然よみがえる現象はプルースト効果として知られている。たくさんの思い出がたくんさんの香り・匂いに包まれていて、それは切っても切り離せないものとなっている。

 

      (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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文章を綴る、練る、寝かせるには「紙とペン」が一番:手書きの魔力! (RTE-News, Nov 8, 2023)

'Another benefit to writing by hand is that is puts less strain on our brains'. Photo: Darius Bashar/Unsplash

 作家 (writers)によっては、小説やエッセイを書くに当たって、下書きなしで、すぐにワープを使って原稿の作成作業に入る人もいると聞くが、私の場合は、考えをまとめて文を綴る際には、「紙とペン」が欠かせない。

 

 文章の下書きは、キャンバスに描く絵のデッサンによく似ている。キャンバスに鉛筆、木炭・コンテを走らせるように、本来、雲や霧のように漠然として捉えどころのない世界のものを、白い紙の上に思いどおりに具現化する作業は、H.G.Wellsではないが、4次元の時空を縦横無尽に駆け巡る、この上なく自由で、創作的で楽しいものだ。

 

 さて、Universidad de Murcia (ムルシア大学)の Javier Marin Serrano教授らは「手書き中の脳の働き」に関する論文を科学雑誌「The Conversation」に発表した。標記のRTEの記事は、その抄録版で、次のような文章で始まる。

 

”At the beginning of 1882, the philosopher Friedrich Nietzsche received a machine called the “ Malling-Hansen Writing Ball”, a nifty little gadget covered with keys. The thinker’s eyesight had been getting worse, to the point where he could no longer write by hand. In March of the same year he was able to continue writing thanks to this new instrument.”

 

[ 1882年のはじめ、哲学者フリードリヒ・ニーチェは、一台の小さな すばらしい器械を受け取った。その器械の上半分はキーボードで埋め尽くされていた。モーリン・ハンセン・ライティングボールと呼ばれる初期のタイプライターだ。その頃、ニーチェの視力はどんどん悪くなる一方で、ついに、手書きで文書が書けなくなっていたのだ。ところが、その年の3月になると、ニーチェは、その新しい器械のおかげで、再び文書をしたためることができるようになった。]

Malling-Hansen writing ball, as used by F. Nietzsche following his loss of eyesight. The keyboard is oval in shape, and the roll that holds the paper is inserted underneath.

  ニーチェの友人で作曲家の Heinrich Köselitz (ハインリッヒ・ケーゼリッツ)は、そのニーチェのタイプ原稿を見て、驚いた。それまでのニーチェの文体 (文書スタイル)が、まったく変わってしまっていたのだ。「more terse and succinct (そっけない、短い文章)」になり、ニーチェの哲学自体も変化したように思えたほどだった。

 

 これこそ、「The medium is the message.(思考の媒体は、それ自体がメッセージである。)」ことを如実に物語る良い例だった。すなわち人間のからだの動きは、思考・感情と複雑な関係で結ばれている。心理学で「sensory-motor processses (感情運動プロセス)」と呼ばれているものだ。

The Art of handwriting

1.Memory ability:記憶力

 文章を書くに当たって、手書きにするか、それともタイプ打ちにするかによって、人間の脳の文書処理 (word processin)は大きく変わってくる。

 2021年に発表された、短い単語を記憶する実験では、手描きで覚えたグループの成績が、タイプ打ちのグループよりも優れていた。

 また、Paul Sbatier大学が実施したインドのベンガル文字、グジャラート文字を学習する実験によると、タイプ打ちで単語を覚えても、時間が経つとほとんど忘れてしまうことが実証されている。(Human Movement Sicence, 2006)

 

 これらの研究結果から、「紙とペン」で単語を記憶するやりかたは「more embodied (より体現的)」であるため、深く記憶に残ることがわかる。

 

2.Mental resources:メンタル・リソース

 手書きのもう一つのメリットは、文章を書く際の「脳の負担 (ストレス)」が小さいことにある。これに対し、タイプあるいはキーボード入力では、多くの「メンタル・リソース」が必要になる。とくに、タイプスピードが上がるにつれて「mental load (心の負担)」が急増するため、単語の記憶がままならなくなるのだ。

 

Handwriting - Liam Geraghty

3.Planning and composition:文書のプランと構成

 手書きにするかタイプ入力にするかによって、人間の脳の文書処理 (word processing)は、大きく変わってくる。頭の中で思ったことを文章にする際に、タイプ操作にまごついたり、「認知プロセス (cognitive process)」が追いつかないと、文章を作成している間にアイデアや必要な情報を忘れてしまうのだ。

 学生に手書きで作文・エッセイを書かせる実験では、タイプ入力に比べて文章の「quality, length and fluidity (質、長さ、流暢さ)」が向上した結果となった。また、「紙とペン」は「キーボード入力」よりも、文書のプラン、推敲に十分な時間が割かれたという。

Correcting the Leaving Cert & The Decline Of Handwriting

4.Longer and better quality texts:長文で優れた文章

 ただし、「Meta analysis (メタ・アナリシス)」の結果では、ワードプロセッサを使って文書を書くと、多くの場合、文章は長めになって、グレードも上がるとされる。

 

5.A disembodied mind:実態のない心

 仮想空間が舞台となった映画「Matrix (マトリックス)」では、肉体のない「心」がテーマだった。「Plato's cave (プラトンの洞窟の比喩)」は、実態の影を実態と勘違いしている人間を揶揄する。しかし、現実の世界では、人間の心はからだの動きと切り離せないものだ。

 すなわち、認知システムはからだの動きとその時の感覚・感情に深く関わっている。コンピュータにキーボード入力する際は「minimal sensory involovement (最小の感覚関与)」の文章となり、したがって、出来上がった作品は、「紙とペン」で仕上げた文章に比べて、ただシンボリックな文字が連なるだけで「実態のない心」に近いものとなりがちだ。

 

6.Implications for education」教育上の示唆

 以上のことから、思考力・認知力を高める上で「手書き」が極めて重要であることは明々白々。それにしても、北欧の Finlandでは、学校で手書きをなくしたと伝えられるが、それが子どもの教育にとって、本当によい判断だったのかについては疑問が残る。今後の研究と、その教育効果を見守る必要がある。

 

おわりに:ワープロどころか、子ども・学生までが生成AIを使って文章を書く時代だ。その結果、本人の思考・分析力のまともな評価が不可能になり、授業におけるレポート提出もほとんど意味をなさなくなった。便利なクルマに頼って歩かないでいると、体力が極端に落ちてしまうのと同じように、AIに文章を書かせていると、やがて母国語・外国語の読み書き能力が低下し、そのうち、まともな文章が書けなくなるのは必定。(話ことばと書きことばは違う。英文、和文にかかわらず、多くの学生にとって、文章の磨き上げは必須の課題だ。)

付記:新年あけましておめでとうございます。読者のみなさんにとって素晴らしい年でありますように。

                            (写真は添付のRTE-Newsから引用)

 

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濃厚なエスプレッソの淹れ方:火山噴火の雷光メカニズムがヒントに! (RTE-News, Dec 11, 2023)

Adding a small amount of water to coffee beans before grinding them produces more consistent and tastier espresso, researchers say.

 エスプレッソ用のコーヒー豆をグラインダーで挽くとき、ひたすら細かく挽いてフィルターで抽出していませんか。コーヒー豆を細かくすると、粒子と粒子の間の摩擦で静電気が発生し、これが原因で、細かい粒子が互いに結び付いたり、グラインダーにくっつくものだ。

The fracturing and friction of coffee beans during grinding generates electricity that causes coffee particles to clump together and stick to the grinder

 Portland State大学の Dr Joshua Mendez Harperによると、この帯電現象は火山噴火の際に発生する雷光現象によく似ているという。

 

”During eruption, magma breaks up into lots of little particles that then come out of the volcano in this big plume, and during that whole process, those particles are rubbing against each other and charging up to the point of producing lighting.”

[ 火山の噴火では、まずマグマが大量の細かい噴石に分解され、次に、それが噴煙とともに火口から吹き上げられる。このとき、噴石は互いにこすり合って帯電を続け、やがて雷光の発生点に達する。]

 

  なお、コーヒー豆を挽くときに発生する静電気は、コーヒー豆の生産地、製造工程によって大きく異なることはなかった。しかし、静電気は

 

・coarse or fine grinding:細挽き、粗挽き

・light or dark roast        :浅煎り、深煎り

 

の別で、違うことが分かった。

 コーヒー豆を「浅煎り」「粗挽き」にすると、静電気の発生が抑えられた。また、「浅煎り」の豆はプラスに、「深煎り」の豆はマイナスに帯電する傾向があった。

 そこで、エスプレッソ用のコーヒー豆を挽く前に、豆に(霧吹きなどで)「a splash of water (湿り気)」を与えてみた。すると、グラインドの際に粉が飛び散らず、静電気も発生しない。そして抽出時間が延びて、コーヒーの味も香りも濃厚になったという。

 

 以上は、科学雑誌「Matter」に発表された内容だ。Dr Harperらは、次に、「完璧なコーヒーの淹れ方」の研究に挑戦する予定とか。

おわりに:もちろん、エスプレッソの風味は、豆・水の質、抽出方法によって大きく変わる。しかし、グラインダーで挽く前に「豆を湿らせる」テクニクは初耳だった。試してみる価値は十分にある。

 さて、2023年も残すところ数日となった。山猫教室は冬休みに入る。読者の皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。

         (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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先進国でも貧困に苦しむ子ども:7人に 1人は まともな食事ができない (RTE-News, Dec 6, 2023)

The report called for action to ensure children's well-being (Stock image)

 「貧」は「貝 (お金)」と「分 (分散させる)」の 2つの漢字で成り立つ。つまり、「貧しい」とは、「お金を使いすぎた (散財した) こと」を意味する。

 しかし、古代中国人の、この考え方はどうもしっくりこない。現在、貧しさに苦しむ人の多くは、大金に縁もゆかりもなければ、それを目にしたり、直に手に取ったこともない人々だからだ。

 

 現代人の貧しさの原因は浪費にあるのではなく、生まれたときの境遇、人生の幸不幸、個人の努力が大きな貧富の格差を生み出しているように思える。

 

 さて、UNICEFの調査報告書によると、先進国 Irelandの「子どもの貧困率 (child poverty)」は「 7人に 1人」で、子どもの10人に 1人は、貧困が 3年以上継続する「長期貧困 (prolonged poverty)」の家庭で暮らしている。

 しかし、これは、2014年から2021年にかけて、子どもの貧困率が19%改善した後の調査結果でもある。(7年前の貧困状況はもっとひどかったことになる。)

 

 一方、UNICEFが世界でもっとも豊かな 40ヶ国の「child poverty rate (子どもの貧困率)」を調査したところ、2021年末現在で、「国人平均所得 (average national income)」の 60%未満の家庭で暮らす子どもの割合は「 5人に 1人」で、その数約6,900万人にのぼった。

 

 なお、EUおよびOECD (経済協力開発機構)の富裕国40ヶ国では、2012年から2014年さらに2019年から2021年にかけて、子どもの貧困率に約 8%の低下があったことがわかっている。すなわち、子どもの総人口 2億9,100万人のうち、約600万人の子どもが、この 10年で貧困状況下から抜け出たことになる。

 それでも、2021年末の段階で、前述の 40ヶ国で貧困家庭で暮らす子どもの数は、6,900万人以上と推定されている。

 

 貧困家庭では、

 

・nutritious food:栄養価の高い食事

・clothes:衣類

・school supplies:学用品

・warm place to call home:我が家と呼べる暖かい場所

 

に事欠き、子どもは「physical and menta health (心身の健康)」に問題を抱えて、あるいは将来の不安を抱えて暮らすことを余儀なくされる。

 

 なお、「子どもの貧困率」に関しては、2012年以降、特定の富裕国で改善の傾向が認められ、

 

・UK  :19.6% up

・France: 10.4% up

 

また、子ども貧困は「economic inequality (経済的不平等)に深く結びついているが、その背景には

 

・single-parent families:ひとり親家庭

・minority:マイノリティ出身

 

があることも事実。USにおける子どもの貧困率を人種別でみると

 

・African−American children (アフリカ系)                                     : 30%

・Indigenous (native) American children (大陸先住民系)       : 29%

・Non−Hispanic white children (非ヒスパニック系白人)               : 10%

 

と、白人とそれ以外の人種では、約 3倍の違いが存在する。

 

 なお、EUでは、「non-EU nationality」の子どもの貧困率は「EU nationality」の子どもの貧困率の約2.4倍とか。

 

おわりに:人類にとって、貧富の格差のない世界、争いのない世界、健康に不安のない世界は単なる夢物語なのだろうか。

     (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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職場のイジメ:加害者のずる賢さに負けずに問題を解決するために (RTE-News, Nov 13, 2023)

Bullying in the workplace can have harmful effects on employees and may come in a variety of forms (Alamy/PA)

 「姑(しゅとめ)の嫁いびり」は昔からあったという。しかし、近頃は、国会・地方議会の議員あるいは地方自治体の長が、昔の姑(しゅうとめ)の真似をして、弱い立場の事務担当者をイジメることがはやっているという。なんとも「優れた人物」が選挙で選ばれているものだ。

 

 そのイジメの機運が職場にまで蔓延しては、社会が暗くなる。イジメの多くは「subtle and insidious (巧妙で狡猾)」だからだ。それに、イジメが表ざたになると、加害者はあらゆる権力や伝手(つて)を使い、必死になって

 

・隠蔽(いんぺい)工作

・握り潰し

・ごまかし

・言い逃れ

・言いわけ

 

に奔走(ほんそう)するのが常だ。

 

 さて、職場は厳然とした「hierarchy (ヒエラルキー、階層社会)」だ。平社員が目上の上司に睨まれて、明智光秀が信長から執拗に受けたようなイビリ・イジメにあったなら、たまったものではない。しかし感情のもつれ、確執がない職場などないのが現実だ。

 では、実際に職場の同僚あるいは上司からイジメを受ける立場になったら、どうすればよいだろうか。「Primas Law (プリマス法律事務所)」で雇用法を専門とする弁護士として働く Ms Danielle Ayresは、「workplace bulling (職場のイジメ)」の特徴を

 

It :

・occurs over a period of time.(一定の間、続き)

・can be a process of emotional, micro-aggression or manipulation. (感情的で、マイクロ・アグレッシブで、思いどおりに事を運ぼうとする態度の現われ)

 

と捉える。

 

1.What are the signs?:イジメの兆候とは

 イジメの形態は、実にさまざまだ。加害者 (perpetrators)の行動に如実に現われるものもあれば、表面に現われないイジメもある。けれども、直接的または間接的であれ、被害者 (victims)を

 

・hurt:傷つけ

・belitte:けなし

・isolate a person:孤立化

 

させることに変わりはない。加害者が一人のときもあれば、複数(グループ)のときもあり、スマホの「Text message」、「e-mail」などの文書スタイル (written communication)で攻撃することもあれば、電話であるいは相手に向かって「verbal bulling (口頭でいじめる)」こともある。

 

 だれにとっても職場は人生の大半を過ごす場所だ。その職場でイジメを受けると、人生が悲惨になり、

 

・breaking down confidence and self-esteem:自身と自尊心が打ち砕かれ

・leaving individuals feeling extremely low and upset:気分が極端に落ち込んで、心がかき乱される

 

 さらに、場合によっては

 

・anxious:不安

・depressed:ウツ

 

に追い込まれて、結果的に病気を発症することさえあるという。

 なお、イジメの「warning signs (警戒すべき兆候)」としては、

 

・becoming withdrawn:(性格が) 引きこもりがちになる

・stopping engaging with colleagues:同僚との交流がなくなる

・their work dropping in standard or productivity:仕事のレベルが下がる

・increased absenteeism:欠勤が増える

・changes of personality:性格が変わった

 

したがって、雇用者 (enployers)は、上記の兆候に気を配り、問題 (what’s wrong)の発見に向けて行動を起こす必要がある。

2.What if the bulling is done by a manager:加害者がマネジャーであったら

 残念ながら、イジメの加害者 (perperators)が上司(マネジャー)であることも少なくない。そのイジメは、とりわけ「subtle (巧妙)」だ。チームのコミュニケーションを一手に握っているからであり、意識的であれ、無意識的であれ、

 

・allocating excessive workloads:過度の仕事を割り当てる

・contacting an employee outside of their working hours:勤務時間外にコンタクトを求める

・singling them out for criticism in front of the rest of the team:チームの面前でやり玉に挙げて叱責する

・excluding them from information communication:仕事上の情報(ミーティング連絡など)を与えない

 

などのイジメが起こることもあれば、他にも

 

・チームの飲み会・昼食会に誘わない

・重要な仕事を回さない

・人事評価(昇給)でえこひいきする

・異常なほど厳しく当たり、欠点だけを責め立てる

・できそうにもない目標設定を強要される

・業績を挙げているのに、業務改善計画の提出を強要される

 

などの例がある。こんな調子で、常に上司からイジメを受けていると、

 

・very embarrassed:どうしたら良いか分かなくなって

・isolated her from the rest of the team:チームの他の仲間から孤立

 

してしまう。

3.What should victims do?:イジメにあったら どうすれば良いか

 3.1 記録する

 職場でイジメを受けたら、その内容を詳細に記録することだ。(記録することでイジメの進展状況、相手の意図・行動の悪質性が浮き彫りになる。それに、後日、どうしようもない状況に追い込まれて、苦情相談室あるいは法定に駆け込んだ際に必要とされる被害証拠にもなる。)

 記録する内容は

 

・いつ

・どこで

・だれによって

・どのようなイジメ(ハラスメント)を受けたか

・その場に同席した目撃者 (witnesses)の氏名

・そのときの苦痛レベル

・どのように対処したか

3.2 ファースト・ステップは、表沙汰にしない非公式の解決を

 職場イジメを解決するために、被害者がとるべき手段の第一歩として、弁護士Ms Ayresが勧めるのは、

 

・Try and sort the matter out informally.(表沙汰にしないで非公式に問題の解決を図る)

 

 具体的には、直接の上司 (line managers)に「事の真相」を説明し、対処・解決を望んでいることを伝える。(ただし、上司がイジメの加害者でない場合に限る。)

 

 なお、加害者 (perpetrators)は、被害者 (victims)の気持ちがわからずにイジメを繰り返していることもあるので、加害者の言動が不快でイジメと感じたら、その旨をきちんと相手に伝えるのも一案 (alternative avenue)だ。

 

3.3 苦情(ハラスメント)対策室に適切な措置を願い出る

 それでも、イジメが続いたり、希望どおりの解決がなされないときは、事業体の「grevance procedure (苦情処理手続き)」に措置を願い出る。

 

3.4 法的措置

 所属する事業体(会社等)が迅速な対応を渋ったり、怠ったり、あるいは。苦情処理の進捗状況の連絡がないときは、最後の手段として残るのは「legal action (法的措置)」。

 

3.5 付記

 日本で働く人をイジメ(bulling)、ハラスメント (harassment)から守ってくれる法律は「男女雇用機会均等法」だ。全国の政府公共機関、大学、企業等の事業主は、ハラスメント防止処置と、事業体の組織内にハラスメント対策室を設置することが義務づけられている。イジメ・ハラスメントの被害を受けて困っている人には、ぜひ、その相談対策室の活用を勧めたい。なお、相談に際しては、信頼できる友人あるいは信頼できる上司の同伴が望ましい。相談する側が複数であれば、何よりも心強いし、発言の間(ま)を利用して良く考えることができる。

 

    (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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冬になると:疲れがとれなくて、いつでも眠いのはなぜ? (RTE-News, Nov 8, 2023)

Why are you always tired in winter?

 どうして、こうも、冬は、ねむくて眠くてたまらないのだろう。それに、朝の起床がつらい。職場や学校に着いても、まだ眠い。やっぱり、人間もクマと同じように「hibernation (冬眠)」が必要なのだろうか。

 

 Berlinの「St Hedwig Hosptal’s Clinic of Sleep & Chronomedicine (セント・匕ドヴィッヒ病院 睡眠と時間医療クリニック)」の研究チームが、このテーマに取り組んだ。そしてわかったことは、

 

・We may need more sleep during the colder months of the year.

[ どうやら、人間は、寒い冬の間、睡眠時間を長くする必要があるようだ。]

 

 その研究によると、睡眠時間だけでなく、睡眠パターンまで変わってしまうという。

 一般に、睡眠の前半は「non-REM sleep (ノンレム睡眠)」が多く、後半に入ると「REM sleep (レム睡眠)」が多くなる傾向がある。

 

 ノンレム睡眠は、からだの疲れをとって体力を回復させるための睡眠で「restorative sleep (回復睡眠)」とも呼ばれる。これに対して、ノンレム睡眠は、情報と記憶を整理するための睡眠で、「psycological well-being or emotional health (心の健康)」のためには欠かせない睡眠だ。夢はノンレム睡眠の間に見るとされる。

 

 ところが、調査の結果、冬は、他の季節に比べて、ノンレム睡眠が長くなっていたのだ。ただし、なぜ、冬と夏で、睡眠時間、睡眠パターンが変わるのかについて、明らかにすることはできなかった。おそらく、冬の

 

・daylight:日照時間 (の短さ)

・darkness:暗さ

 

が関係していると考えられている。

 

 では、この冬、十分なノンレム睡眠を確保しつつ、定刻の起床時間に起きて、普段の生活リズムを維持するためには、どうようにすれば良いのか。Maynooth大学の Andrew Coogan教授によると、

 

・Early bedtime (早めにベッドに入り)

・Good, quality sleep (ぐっすりと質の高い睡眠)

 

をとって、寒い冬を乗り切ることだ。なお、睡眠不足だったり、よく眠れない日が続くと、

 

・grumpier:とかく不機嫌で

・more unhappy :落ち込みやすく

・more impulsive:感情的で

・going for the sugary, fatty stuff:砂糖・脂肪たっぷりのスナックに手を出し

 

がちになるとか。

 

おわりに:疲れや、眠いのは、からだが必要に迫られて発するサインだ。無理をせず、からだを休めることだ。ビタミンが豊富なフルーツ・野菜をたっぷり食べて、適度な運動で汗を流す一日のルーチンを終えたら、早めにベッドに入ると良い。

 

     (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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