自慢にならない 3時間睡眠:鬱(うつ)のリスクが高まるだけ! (RTE-News, Oct 20, 2023)
「ナポレオンは一日たったの 3時間しか眠らなかった。だから、少しぐらい寝不足が続いたって、どおってことはない」などと、高(たか)をくくっていると、大変なことになりかねない。
UCL Institute of Epidemiology and Health Care (UCL疫学・ヘルスケア研究所)の Ms Odessa Hmilton、Andrew Steptoe教授らの研究チームが、被験者7,146人 (平均年齢65歳)の遺伝子データ・カルテを解析した結果、寝不足 (short sleep)が続いていると、うつ病の初期症状とされる「悲哀感」、「孤独感」に襲われることがわかった。
とくに、「genetic predisposition (遺伝的な体質)」上、ほとんど毎日のように睡眠時間が 5時間以下の人は、注意が必要だ。今後4−12年にかけて、「うつ」を発症するリスクが高まるという。
なお、寝不足・寝過ぎと鬱(うつ)の どちらにも遺伝性があり、その遺伝的な要因が関与する割合は、
・Depression (うつ病):35%
・Genetic differences account for 40% of the variance in sleep duration.
[ 遺伝的な違いが睡眠時間に寄与する割合:40%]
そして、ふしぎなことに、遺伝的にうつ病を起こしやすい人に、睡眠時間が短いということはなかった。
人それぞれが特定の病気に対して遺伝的な体質を持っていて、それは「多遺伝子スコア (polygenic scores)」によって知ることが可能だ。これは、睡眠時間とうつ病との関連性を解明する上で重要な鍵となると考えられている。
ただし、「genetic predisposition (遺伝的な体質)」を棚上げにして、単に睡眠時間とうつ病との関連性を解析すると
・睡眠5時間以下の人は、標準的な睡眠時間(約7時間)の人に比べて、うつ病の発症率が2.5倍高い。
・うつ病の兆候のある人が、睡眠不足になる確率は、1.3倍高い。
・睡眠時間が 9時間以上の寝すぎの人も、うつ病の発症率が 1.5倍高い。
・しかしながら、うつ病を発症してから 4年から12年後の間に、睡眠時間が長くなることはなかった。
Steptoe教授によると、「不適切な睡眠 (suboptimal sleep)と鬱 (depression)は老化に伴って現われるもので、世界中で起きている現象であり、社会の高齢化が進む中で、鬱と睡眠不足の関係を明らかにすることは、ますます重要になっている」と言う。
おわりに:もしも、寝不足、鬱(うつ)あるいは特定の病気に対する抵抗力の弱さが先祖から受け継いだものなら、しかたがない。しかし、それでも、その落とし穴に落ちないために、自分でできることが必ずあるはずだ。人間の信念ほど強いものはないと信じたい。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)