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パフュームを嗅ぐとタイムスリップする:もの忘れが改善できる! (RTE-News, Dec 14, 2023)

Can the scent of freshly baked bread dredge up memories we didn't even realise were there?

 木材の香り成分は「phytoncide (フィトンチッド)」。Garcia教授がスペインの とある病院の地下を歩いていて、まったく偶然に、その病院のメンテナンスルームに入ってしまった。そこは真新しい木材の香りが充満していた。

 その香り成分が鼻腔の「olfactory mucosa (嗅粘膜)」に触れると、その情報は「olfactory nerve (嗅神経)」、「olfactory bulb (嗅球)」を通って「limbic sytem (大脳辺縁系)」に伝わった。

 

 すると、一瞬にしてタイムスリップが起こった。もうすっかり忘れていた、幼い頃に遊んだ父親の仕事場の光景がまざまざと蘇(よみがえ)ったのだ。そこには20年前と同じように大工の父がいて、角材にサンドペーパーを掛けながら、こっちに来て手伝うようにと言っている。

 その木の香りは心地よく、日頃のストレスが消えて、気持ちが穏やかになった。まるで魔法にかかったようだった。ようやくのこと、近くのエレベータが動き出して、その音で我に返った。

Ep 2 – Smell: Why do smells evoke memories?

 

1.Smells that revive past emotions:過去の感情を思い出させる香り

 新鮮なウッドチップが、すっかり忘れていた過去の記憶を蘇らせるなんて、いったい、それは何なのだろう。

 木材に限らず、焼き立てのケーキ・パン、夏のプールサイドの塩素の匂い、海岸を吹き抜ける潮風、コーヒー、夕立後の雨・土の匂いも、記憶を呼び起こすきっかけとなることが多いという。

 

 ところで、記憶とは過去の経験に基づく情報を編集、保存、取り出す脳の能力とされる。しかし、どのような経験がもっとも記憶に残るものだろうか。それは、良しにつけ悪しきにつけ、過去において激しく感情が揺さぶられた経験だ。

 

 人間の脳は「bottomless drawer (底なしの引出し)」であり、情報の収納キャパシイは無限だ。でも、そうかと言って、過去のどんな情報でも、すぐに取り出せるものではない。それはなぜか。一度保存された情報は、常に新しい情報によって記憶回路の片隅に追いやられてしまうためだ。取るに足らない些細な情報ならなおさらのことで、他の情報に紛れてしまって、これを引き出すことが難しいのだ。

 

 それが、ある瞬間、ある特定の香り (smells)を嗅ぐことで、過去の記憶・感情が突然、蘇(よみがえ)ることがある。これが「olfactory memory (嗅覚記憶)」と呼ばれるものだ。

Perfume - Why we love the smell of vanilla?

 

2.A direct line to emotional memory:情動記憶に直結した神経回路

 臭覚 (the sense of smell)は、脳の大脳辺縁系 (limblic system)と眼窩前頭皮質 (orbitoftontal cortex)と呼ばれる2つの部位に深く結びついている。前者は匂い・香りの感応に欠かせない部位であり、後者はその匂いを識別して区分し、それを過去の経験や記憶に結びつける役目を担う。

 

 臭覚以外の神経繊維は、全て、感覚系の司令塔「視床(thalamus)」につながっているが、臭覚だけが唯一 VIPパスをもっていて、直接、記憶回路の中枢「大脳皮質 (cerebral cortex)」に入ることが許されている。このため、「familiar smell (嗅いだことのある匂い)」は、情動記憶 (emotional memory)に携わる脳の領域と同じ領域を活性化させることになるという。

Nosetalgia

3.The loss of smell, a sign of neurological illness1:臭覚喪失、神経疾患の兆候

 人は、老化にともなってさまざまな感覚機能が劣化するが、臭覚とて例外を免れない。けれども、匂いを感じなくなる原因は老化だけではない。その症状の裏に深刻な病気が隠れていることがある。

 新型コロナ (Covid-19)ウイルスに感染した患者の多くが、臭覚・味覚を失ったことはよく知られている事実だ。

 

 さらに「神経編成疾患 (neurodegenerative disorders)」に罹患すると臭覚を失うが、これに伴って「記憶喪失 (memory loss)を発症することが多い。つまりは、臭覚の衰え(deterioration)は精神・神経疾患 (psychiatric and neurological contions)の前兆として捉えることができるのだ。

 

 したがって、臭覚機能の低下は、海馬の「灰白質 (grey matter)」が失われて「mild cognitive impairment (軽度認知鳥害MCI)」の状態になり、最終的にはアルツハイマー病(Alzheimer’s disease )に進行しかねないことを示しているといえる。

 この事実が正しければ、臭覚の劣化の程度を知ることによって、MCI患者のアルツハイマー病の進行状況を診断できることになる。

 

 ただし、これを「認知症 (dimentia)」の診断に役立てることはできず、単に「認知機能障害 (cogmitive disfunction)」の兆候あるいは

 

・Parkinson' s disease:パーキンソン病

・Lewy body dementia:レビー小体型認知症

・Creutzfeldt-Jackob disease︙クロイツフェルト・ヤコブ

・Alcoholism:アルコール依存症

・Schizophrenia:総合失調症

 

などの精神疾患の進行状況の把握にとどまるとされる。

 

4.Can smells rehabilitate your memory?:記憶喪失のリハビリに匂いが利用できるか

 アルツハイマー病やパーキンソン病に罹患した患者は、脳の臭覚刺激 (olfantory stimulation)を失っているため、他の病気の症状を悪化させかねない。

 これまでの研究によると、臭覚の強さと死亡リスクの低さの間には、正の相関があることがわかっている。このため、近年、医学会では、精神障害の罹患者の記憶を刺激、リハビリする治療法の一貫として、匂いを活用する研究が話題になっている。

 

 さまざまな匂いを嗅ぎ分けできるように「olfactory enrichment (臭覚強化)」することによって

 

・infection:感染症

・oraneal trauma:眼窩外傷

・Parkinson’s :パーキンソン病

・aging:老化

 

などが原因で失った臭覚を取りもすことができるようになり、認知・記憶力が向上につながるというのだ。

 

 最近発表された臭覚回復治療法に関する研究報告によると、毎晩2時間、いろいろな匂いを嗅ぐことを半年にわたって続けると、記憶機能の改善が改善されたとか。

 ただし、この治療法が認知機能低下の予防・治療に活用できるかについてはさらなる研究が必要とのこと。

Luke Casserly

おわりに:「Proudt Effect: A sudden and vivid memory triggered by scent.」ラベンダーの香りを嗅いで、ラベンダーに関連した過去の記憶や感情が突然よみがえる現象はプルースト効果として知られている。たくさんの思い出がたくんさんの香り・匂いに包まれていて、それは切っても切り離せないものとなっている。

 

      (写真は添付のRTE-Newsから引用)

www.rte.ie