誘い・頼みを断りきれず:二つ返事で「いいよ!」と言っていると ― (RTE-News, Sep 15, 2023)
信号機のない交差点や踏切をクルマで渡るとき、だれでも、一旦停まって、少なくとも1、2度は左右を確認しているはずだ。また、それがドライバーの義務でもある。
それなのに、友達の誘い・頼みには、よく考えもせずに、二つ返事で引き受けてしまう。後(あと)になって、はたと気づく。あれもこれも「いいよ」と言ったお陰でスケジュールがつまって身動きがとれない自分に。「しまった、こんちくしょう」と地団駄を踏んで悔やんでみても、もう遅い。心理学では、これを「Yes...Damn Effect (いいよ...こんちくしょうめ効果)」と呼ぶそうだ。
今、自分の目の前に立っている相手の気分を損ねないようにとの思いが無意識のうちに働くせいか、あるいは、「まだ先のはなしだから」、「そんなに時間が掛からないだろう」などをたかをくくって、「いいよ (yes)」と言ってしまう。つまりは、「時間の見通しの罠(time trap)」にはまってしまっているのだ。
そこで、UCC(アイルランド国立大学コーク校)で「Applied psycholigy (応用心理学)」を研究する Dr Anna Navin Youngが、どうすれば軽々な約束 (commitment)を回避できるかについて、以下に解説する。
1.Recognise your time habits:時間見通しの自分のクセを知る
なによりもまず (First and foremost)、時間見通しの自分のクセを知ることだ。これまで、どんなときに、どんな相手に、ついうっかり「いいよ」と言って、後で悔やんだのか。それは、本当に頼みを断りきれない相手だったのか。今一度、振り返ってみることだ。
頼み・誘いを受けると、そのことに自分の時間が取られてしまう。実際のところ、その頼み・誘いが「実り多く、満足できるもの (productive and fulfilled)であったのか、と反省することが大切なのだ。
このように、自分の行動を時系列的に振り返ると、自分の「time habit (時間の使い方のクセ)」が明らかになってくる。
2.Don't be so optimistic:あまりに楽観的にならないこと
食事・パーティーに誘われたり、仕事を頼まれると、その時点では、たかだか 1、2時間で終わるだろうと思っても、実際には、それ以上あるいは予定時間をはるかに超過することさえある。これが心理学で「plannning fallacy (計画の誤謬(ごびゅう))」と呼ばれる、人間の陥りやすい「時間の見積もりの誤算」だ。
この「cognitive baias (認知バイアス)」によるミスを避けるためには、計画時に「buffer time (余裕時間)」を設けることだ。たとえば、仕事が2時間で完了すると思えても、それに 15- 20分の余裕時間をプラスしておくと、仕事にも、気持ちの上でも余裕が生まれる。
3.Pause before saying yes:「いいよ」と言う前にちょっと考えよう
・どうせ、ずっと先のこと
・今、「いいよ」と言った方が気が楽だ
・引き受けた頼み・誘いについて、あれこれと考えることも楽しいではないか
などと勝手に考えて、「いいよ」を口に出していると、後日、その結果がとんでもない重荷となって自分にのしかかる。
だから、何事につけ、自分の意思表示を相手に示すときは、「pause (ちょっとの時間的な間)」をおくに限る。また、これを「time habit」にすることだ。
また、「Time Smart」の著者 Dr Ashley Whiliansによると、
・来週、忙しくなるかどうかを着実に判断できる人は、今、忙しいことを判断できる人だ。
つまり、今日のスケジュールに、急きょ、予定をねじ込むのが無理なときは、来週だって無理だと心得た方がいいのだ。
4.Weigh up commitments against values and priorities:価値判断と優先度を考えよ
頼みごとあるいは誘いを受けたら、ひとまず「pause (間)」を入れる。その間に、「our values and priorities (自分の価値判断と優先順位)」に照らして、これを自分のスケジュールに入れるべきかを考える。
相手に「NO」と言って断る方が、自分の価値観と優先順位にかなっていることだってあるのだ。また、その方が、余計なことに関わらずに済むため、夜ぐっすり眠れることになる。
おわりに:友達の頼み・誘いを無理をしてまで承諾すべきか、あるいは断るべきか。これは難しい問題だ。結局、その答えは、過去の「いいよ」にある。その結果、どうだったか、よくよく考えてみることだ。同じような失敗を重ねてはいけない。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)