ストレスを解消してくれるのは:お酒、それとも散歩? (RTE-News, Sep 10, 2021)
公衆衛生学・疫学(Public Health & Epidemiology)が専門の T教授は、晩酌が大好きだった。ある日のこと、旅先の電車の中で偶然乗り合わせると、その医学系 T教授は、旅の間に、お酒の効能を説いた。いわく「ちょっとだけなら、ストレスを発散させてくれるので体には薬だ」と。そのときは、そんなものかと思った。
しかし、Anglia Ruskin大学の Dr Rudolph Schutteらの研究グループが、UK Biobank事業として、平均 7年間に及んで追跡調査した被験者 446,439人の健康データを分析した結果、お酒は、ビール、リンゴ酒 (cider)、蒸留酒のなんであれ、また、それをちょっとだけに加減して飲んでも、
・cardiovascular disease:心血管疾患 (循環器疾患)
・coronary heart disease:冠状動脈性心臓疾患
・cerebrovascular disease:脳血管障害 (脳卒中など))
・cancer :ガン
・overall mortality :全体の死亡率
のリスクの上昇が避けられないことが分かったという。(研究の詳細は医学雑誌「The American Journal of Clinical Nutrition (アメリカ臨床栄養学会誌)」に発表。)
ただし、この研究論文によると、ワインを摂取すると「coronary heart disease (冠状動脈性心臓疾患)」の発症リスクが下がった。しかし、これは、ブドウに含まれる「antioxidant polyphenols (抗酸化物質ポリフェノール)の働きによるもので、アルコールがプラスに作用したものではないと、Dr Shutteは説明する。
結局のところ、お酒がストレスを解消することはありえず、むしろ健康を損ねるだけと結論づけられる。
では、ストレスを解消するためにはどうすればよいか。RTEは、お酒よりももっと健康的で確実なストレス解消法を、以下に紹介している。
1.Try active relaxation:身体を動かす
運動といっても、なにも、夢中になってハードな運動を続ける必要はない。のんびりと歩いたり(leisurely walk)、ちょっとの空いた時間を見つけてヨガやピラテス(Pilates)に取り組むと気が晴れる。(ただし、ポーズを取る際には決して無理をしないこと。)
また、NHSのランニング・プラン「Couch to 5k」もお勧めだ。とにかく、そとの空気を吸って身体を動かすことは、「mental health (メンタル・ヘルス)」に効果的だ。
それが無理なら、お部屋を掃除しながらダンスでもいいし、階段の上り下りでも構わない。
2.And breathe...:深呼吸
緊張したとき、あるいはストレスで気が滅入ったとき、心をやすめる一番の方法は深呼吸だ。ゆっくりと、鼻から息を大きく吸って、口から息を吐き出す。これを数回繰り返すだけで、気持ちがずいぶんと楽になるもの。
3.Crafty relaxation:クラフトでリラックス
上手、下手は関係なし。絵を描いても、クラフト (カード作り、イヤリング・ブローチの手作り) にチャレンジしても、ピアノやギター、リコーダー演奏でも、ソーイングでも、いい。なにか別なことをやってみると、リフレッシュするものだ。
4.Get outside:そとに出て自然に触れる
近くに公園があるなら散歩に出てみよう。木々の枝の下をくぐり、草花に目をやり、小鳥の声を聴くだけで、大いに気分転換になる。とんでもなく疲れたからと言って、ボーとしているよりも、庭の土をいじるだけでリラックス効果が期待できる。
5.Listen to music:好きな音楽を聴く
自分の好きな音楽を聴くのも、自分を取り戻す手段の一つだ。
6.Turn off the tech:電源を切る
近年のデスクワークといえば、ほとんどが、一日中、パソコンのモニター画面に向かう仕事だ。それに加えて、常にスマホをいじっている。これでは、頭も眼も変になる。
ときには、いっさいの電源を切って、「tech-free time」を設ける。これが心に開放感を与え、いつのまにか、ストレスも消えている。
おわりに:お酒はタバコ、薬物と同じ。依存症になる可能性が高い。その危険なアルコールに、「心のコントロール」をまかせては、危険この上ない。どろぼうに自宅の鍵をあずけるようなものだ。
(写真は添付のRTE Newsから引用)