坑廃水の重金属汚染地域で暮らす人:世界で23,000,000人! (BBC-News, Sep 22, 2023)
今から10万年以上もの大昔、スイスの洞窟をねぐらにしていた人類の祖先は、「primitive axes (ごく原始的な斧) 」を振るって、その洞窟の壁を削っては、ベンガラ(red paint)の原料の鉄鉱石 (ion ore)を手に入れていた。おそらく、これが地下資源開発の第一歩だったに違いない。
その後、火打石 (flint)、青銅の原材料 Cuを求めて、世界中で地中が掘り返される。とくに、産業革命が始まると、エネルギー源の石炭や鋼材に欠かせないFe鉱石はじめ多種多様な鉱物資源が、前代未聞の規模で採掘されるようになった。
しかし、鉱物資源は一度採掘されると、その後に空洞ができ、そこに地下水・雨水が溜まる。その水は鉱脈の重金属 (Cd, Pb, Hg, Cr, Znなど)を溶かし、有害な坑廃水(wastwater)となって、永久に流れ続ける。まさに、坑廃水は
・humankind's earliest and most persistent form of environmental contamination
[人類最古の、永遠に続く環境汚染]
そして、近年、Li電池の需要拡大と電化製品の普及 (electrification)に伴って、リチウム Liなどのレアメタルや銅 Cuの資源開発が盛んになった。人体に有害な重金属を高濃度に含む大量の汚染水は、ほんの一刻も休むことなく、とめどなく環境に流れ出す。
さて、Lincoln大学の Mark Macklin教授らの研究チームは、現在、世界各地で稼働を続ける金属鉱山22,609箇所、既に採掘を終えた廃鉱 (abandoned metal mines)159,735箇所から流れ出る坑廃水の実態を調査し、その結果をまとめて科学雑誌「Science」に発表した。
解析に当たっては、各国の政府、鉱山会社、研究機関が公表したデータを使用した。鉱山分布や汚染リスクの高い河川域をマップに示すとともに、坑廃水流出汚染に関するシミュレーションモデルに基づいて、解析したところ、
・旧鉱山跡地から流れ出る坑廃水「負の遺産(legacy)」が数百万人の健康を脅かしている
・坑廃水に含まれる重金属は、鉱山周辺の土壌や、河川の中洲などの「flood-plains(氾濫原)に濃縮された重金属が蓄積されている。
そんな場所で
・agriculture:農業
・irrigation:灌漑
が行なわれている。
Manchester大学の Jamie Woodward教授が指摘するように、flood-plains (氾濫原)は、「scilent pollution (密かに進行する環境汚染)」となっている。だから、この場所を酪農に使用してはならないと注意を促す。
おわりに:工場や鉱山跡地から止めどもなく流れ出る工業排水や坑廃水には、有害な物質が含まれていることが多い。産業が生み出したこれらの「real nasties (やっかい物)」の有害物質を、大量の水で希釈して川や海に流すなら問題なしとする水質基準法は、このままで良いのだろうか。極めて疑問だ。有害物質を除去する技術開発、モニタリング・罰則の強化が必要なことは言うまでもない。
(写真は添付のBBC-Newsから引用)