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北極の氷の下に封印された魔物たち:氷が融けて、ぞろぞろ出現! (BBC-News, Sep 30, 2021)

Ice in the Arctic

 地球温暖化のせいで、北極圏の氷がどんどん融けている。氷が融けると、異常気象が加速し、海面が上昇する。しかし、実は、もっと厄介なことが起こっていた。

 

 WalesのAberystwyth(アベリストウィス)大学のDr Arwyn Edwardらが「Nature Climate Change」に発表した論文によると、北極圏の環境は今、次の3大汚染

 

・nuclear wastes:核廃棄物

・antibiotic resistant bacteria:抗生物質耐性菌

・pollutants from the metal minings:重金属汚染物質

に直面しているというのだ。

 

1.Nuclear wastes:核廃棄物汚染

 WW2以降に始まったUSの共産主義封じ込め政策「Truman Doctorin (1947)」から旧ソ連USSRの崩壊 (1991)までの 44年間は、世界史の上で、冷戦時代 (Cold War era)と呼ばれる。この間、核超大国の USと USSRは、ともに核実験を盛んに実施した。

 

 USが公式に認めた核実験の回数は1,054回 (1945-1992)。膨大な放射能を大気圏に撒き散らした。

 なお、デンマークグリーンランドに建設された秘密軍事基地「Camp Centry」のエネルギーは、原子力発電でまかなわれた。この基地は1967年に廃止されたが、グリーンランドの氷の下に、大量の核廃棄物、ディーゼル廃棄物が放棄されることになった。

 さらに1968年 1月 21日、都合の悪いことが、同じグリーランドで起こる。今、思えば、それは、背筋が寒くなるような事故だった。「Thule bomber crash (チューレB-52爆撃機事故)」だ。

 水爆4発を搭載し、USSR付近の上空から偵察・監視任務に当たっていた USの B-52 爆撃機が機内火災を起こして、地上に墜落した。この事故で、4発の水爆は起爆しなかったものの、膨大な量のプルトニウムがグリーランド一帯を汚染した。

 

 一方、旧ソ連 USSRは、1955− 1990の35年間にわたって、ロシア北西部の北極圏「Novaya Zemlya archipeloago (ノヴァヤゼムリャ列島)」付近の海域あるいは地上において、少なくとも130回の核実験を実施した。

 

 その一連の核実験で使用された「explosive devices (爆破装置)」は224基。大気圏に放出された核エネルギーは 265Mt (TNT換算)。

 さらに、Novaya Zemlyaの周辺海域「Kara sea (カラ海)」、「Barents (バレンツ海)」には、100艦以上の「decommissioned nuclear submarines (退役原子力潜水艦)」が沈められている。

 ロシア政府は戦略的クリーンアップ計画に着手したと述べるが、Dr Edwardらの調査によると、その一帯の海底土壌、植生、氷床からは、高いレベルのセシウムプルトニウム放射線が検出されている。K-27 sub being towed prior to being scuttled off Novaya Zemlya, 1981

2.Antibiotic resistant bacteria:抗生物質耐性菌

 永久凍土の深部 (3m以下)は、未知の微生物(ウイルス、細菌)が眠る世界だ。シベリアの永久凍土の深部からは、100種以上の「antibiotic resistant bactera (抗生物質耐性菌)」が発見されている。

 北極圏の永久凍土が融けるにつれて、氷の中に閉じ込められていた微生物が地上に出現し、これまでとはまったく違った新たな耐性菌株を拡散させる可能性がある。

 

3.Pollutants from the metal minings:重金属汚染物質

 北極圏の地下には、石油・天然ガスが豊富に眠っている。その資源をRussia、USは虎視眈々と狙っている。

 しかし、北極圏には化石燃料の他にも、ヒ素、水銀、ニッケルなどの鉱物資源が大量に包蔵されていることは余り知られていない。

 

 Dr Edwardらの研究報告によると、この数十年間で、それらの地下資源開発があいつぎ、北極圏の数千万ヘクタール (ほぼ日本の国土面積)に及ぶ面積が、「waste material (廃石)」から滲み出る重金属イオンで汚染されているという。有害金属イオンは食物連鎖によって、やがて北極圏に居住する人々の健康を害する可能性が高い。Industrial revolution mining factory on railroad tracks - stock photo

おわりに:北極圏は人口密度が小さく、観光客もめったに足を運ばない。その上、夏は極端に短く、冬は耐え難いほど寒い。北極圏の海の底あるいはぶ厚い氷床で覆われたグリーランドの地下深くに、「都合の悪いもの」を捨てても、しばらくは見つかるまいと思ったに違いない。「天網恢恢疎にして漏らさず」とは、このことだ。悪いことは、やがて暴かれる。それまで逃げ回るのが悪人の常套手段か。

       (写真は添付のBBC Newsから引用)

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