頭がボーとして集中できない―コロナ後遺症:脳・肺に血栓が残る! (BBC-News, Aug 31, 2023)
今さら言うまでもないことだが、中国武漢から世界中に広まったCovid (新型コロナ感染症) は、恐ろしい病気だ。医者によって回復したと判断され、たとえ、退院しても、多くの感染者が後遺症に悩まされている。
そこで、Oxford大学と Leicester大学の共同研究チームは、 Covidの後遺症、とくに頭の中にモヤがかかったようになる「Brain fog (ブレイン・フォグ)」について調査し、その結果を科学雑誌「Nature」に発表した。
その調査結果によると、Covidに感染して入院した被験者1,837人のうち、約16%が、退院後の少なくとも半年間は、思考力、集中力、記憶力に支障を来していることが分かった。
もちろん、比較的症状が軽く済んだ感染者であっても、類似の後遺症すなわち「Long Covid」の問題を抱えていた。
Oxford大学の Paul Harrison教授によると、この「post-Covid Brain fog (ブレイン・フォグ後遺症)」を解明するためには
・predictors:予測因子
・possible mechanisms:推定される発症メカニズム
を明らかにすることが、「a key step (重要な研究ステップ)」となる。
また、Leicester大学の Chris Brightling教授は、 Covidの後遺症の原因を
” It’s a combination of someone’s health before, the acute event itself and what happens afterwards that lead on to physical and mental health consequences.”
[ それは、感染前の体調、Covid特有の急性感染、それに感染後に心とからだに与えた影響などが複合的に結びついたものだ。]
なお、 Lancashire大学の専任講師 Dr Simon Retfordも、Covid後遺症でひどい目にあった一人だ。
Dr Retfordは、2020年10月 Covidに感染して、それが重症化した。2週間、昏睡状態(in a coma)に陥った。このとき、Dr Retfordの家族は、「最悪の事態の覚悟」とまで担当医から告げられるほどだった。
その後、健康状態は、なんとか感染前の 60- 70%まで回復したものの、
・problems concentrating:集中力障害
・short-term memory loss:短期記憶損失
・losing his train of thought:思考ルートの欠如
に悩まされ続けている。
Dr Retfordの語るところによると、
「昨年の5月に、大学のコース・リーダーを務めることになったが、頭はまるで動作の遅いコンピュータのようだった。」
それまで警察の仕事もこなしていたが、今は、それもかなわない。
「なにしろ、仕事をし過ぎると、とても疲れを感じる。」
今後、100%の完治は望めないにしても、Dr Retfordは前向きだ。
「私は、こうして、ここに居られるが、多くの人は、それさえ、できないでいるのだから.....。」
なお、研究チームの Dr Max Taquetによると、「brain fog (ブレイン・フォグ)」、「fatigue (疲れ)」の原因は、脳あるいは肺に生じた「blood clots (血栓)」のせいだ。
「brain fog」を訴える患者の血液を調べると、血漿タンパクの
・fibrinogen:フィブリノゲン
・D-dimer:Dダイマー
の数値が異常に高かった。「fibrinogen」が脳内の血管に直接働いて血栓を形成していると考えられ、その一方で、「D-dimer」は肺内の血管に血栓をつくって、脳に十分な酸素を供給できないようにしている可能性がある。
なお、D-dimaer値が高い人は、
・complained of extreme tiredness and being short of breath
[ 極度の疲労と息切れを訴え」
・tended to have difficulty holding down a job
[ 仕事を続けることが無理]
なことが多い。
おわりに:Paul Harrison教授らの Covid後遺症に関する疫学的な研究は、ようやく緒(しょ)に就いたばかりだ。一刻も早い、Covid後遺症の発症メカニズムの解明と、その予防・治療法の確立が求められている。
(写真は添付のBBC-Newsから引用)