スプリング・エクィノックス:太陽神アポロが暗黒神エレボスを押しつぶす日 (RTE-News, Mar 20, 2023)
地球の磁場にN極とS極があり、電流の流れにもプラス(+)とマイナス(−)の電極があるように、この世には相反する 2つが同時に存在する。
・virtue vs vice:善と悪
・heaven vs hell:天国と地獄
・holy vs valgar:聖と俗
・light vs darkness:光と闇(やみ)
・prosperity vs ruin:繁栄と没落
・success vs failure:成功と失敗
・fortune vs misfortune:幸運と不運
・happy vs unhappy:幸福と不幸
・peace vs war:平和と戦争
・life vs death:生と死
・positive vs negative:陽と陰
・maia vs depresssion:躁と鬱
・win vs lose:勝ちと負け
これらの 2つは、互いにその優劣を競い合うことを常とし、たとえ、どちらかがどんなに優位にあったところで、隙(すき)があれば、瞬時にして相手に打ち負かされてしまう。それは、人知を超えた、人間にとってはどうしようもない、創造主 (The Creator)のみが知る「fate (運命)」だ。
さて、およそ138億年前、宇宙が誕生し、約46億年前に太陽系が形成された。地球から見て、その太陽の見かけの通り道「黄道 (eqliptic)」が、地球の赤道面 (Equatorial Plane)を天球に投影してできる「天の赤道 (terrestial equator)」に交わる日は、わずかなズレを除くと、太陽は真東から昇り、真西に沈む。このため、昼と夜の長さはほとんど同じになる。
これが、春の 3月20日(または21日)の「Spring Equinox (春分)」だ。この日を境に、昼の日照時間は夜間時間よりも徐々に長くなり、日中の空気は温かみを帯びて、気温も上昇するようになる。梅や桜の蕾(つぼみ)がふくらんで、スイセン、クロッカス、ムスカリの花が咲き始めるのもこの時期だ。
Irelandの春は 2月1日の「Imbolg (インボルグ)」の祭りで始まるとされ、春半ば (mid-spring)」にやってくる「Spring Equinox (春分)」の日には、
・cleansing:清め
・fertility:豊饒
・creativity:創造
の儀式 (rites)を執り行なって、先祖の霊に感謝を捧げた。
その後、時が過ぎて、キリスト教が Irelandに普及すると、この日は「St Brigid (聖ブリギッド)」を称える祭りの日となった。
歴史上のいかなる文明にとっても、春分の日を正しく知ることは、農業の営みに欠かせない一大事であった。それゆえ、古代のエジプト、ギリシャ、マヤ、クメールの文明を築きた王国は、いずれも、その遺跡・建造物に工夫を凝らし、春分の日の朝日を目に見える形で捉ることができるように設計した。
[ From: Paul G. Bahn: Archaeology; The definitive Guide, Fog City Press, 2003 ]
なお、Ireland北部の「Meal (ミール)の小高い丘の「Loughcrew Cairn (ラフクルー・ケルン)」は、およそ2,000BC- 3,000BCの新石器時代に建造された「passage tombs (羨道墳[せんどうふん])」。3月20日、朝日が昇って、その光が入り口に差し込むと、光は暗くて狭い通路を奥へ奥へと一直線に進んで、やがて、すばらしい絵で埋め尽くされた壁面と、その前の床の中央に置かれた石棺を照らし出す。入念に設計された古代人の技だ。
かれらにとって、「Spring Equinox]とは、まさに「光」が「闇」に打ち勝ち、「生」が「死」を打ち負かして、枯れ尽くした生物がこの世に再生することを許す「Resurre (復活)」の瞬間であったに違いない。
おわりに:天の運行と時間に逆らうことなどできない。この世の全ては時間とともに移りゆくものであり、人は、ほんのひとときの間、生を営むに過ぎない生物だ。現世の全ては有為転変とも言うが、そんな中で、人間の「まごころ」や「やさしさ」までが変わっては、まともな人間ではなくなる。
(写真は添付のRTE Newsから引用)