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敵の襲撃に備えて、アヒルは片目を開けて眠る:では、人間は? (RTE-News, Jan 24, 2022)

'The results of this study suggest that the identity of a speaker is a potential cue pointing to danger: familiar speakers are deemed safe, while unfamiliar speakers could pose a threat.' Photo: Kinga Cichewicz/Unsplash

 アヒルは、他の鳥類と同じく、夜になると片目をつぶり、もう一方の目は開けて眠る。このとき、ア匕ルの脳は半分だけ眠り、残りの半分は目覚めているのだ。これを「unihemispheric sleep (半球睡眠)」という。絶えず敵 (predators)に脅かされている動物が進化させた監視システム (monitoring systems)だ。Three ducks on the pavement.

 ところで、睡眠科学 (sleep science)が進歩するにつれて、人間にもアヒルの脳に似た監視機能が備わっていることが分かってきた。

 けれども、睡眠中、人間は、両目を閉じて眠る。したがって、外敵の監視はもっぱら聴覚に頼ることになる。その際、耳に入ってくる音でも、夜間、パートナーの立ち回る音や、屋根を打ち付ける雨の音などの「familiar sounds (聞き慣れた音)」に対してはアラーム反応は起きない。目が覚めるのは「unfamiliar sounds (異様な音)」が聞こえたときだ。

 

 Salzburg大学の研究チームがボランティアの被験者(17名)の協力を得て、睡眠中の音に対する脳の反応を「electroencephlography (脳波図、EEG)」に記録して調べたところ、人間の脳は、「familiar sounds (聞き慣れた音)」と「unfamiliar sounds (聞き慣れない、怪しげな音)」に対して、まったく違った反応を示すことがわかったという。

 

 その違いは脳波図EEGの「K-complexes (K複合)」と「micro-arousals (マイクロ覚醒)」と呼ばれる信号特性に現われる。

 「K-complexes (K複合)」は、EEGにおいて約 0.5秒間シャープに変化する信号波形特性。睡眠中に他人から体に触られたときなどに現われる。ただし、その「外からの睡眠妨害 (outside disturbances)」が「harmless (危害なし)」と判断すれば、本人を覚醒させないように働くと考えられている。

 

 ところが、睡眠中に「unfamiliar voices (聞き慣れない音)」が耳に入ると、この

「K-complexes (K複合)」波形が異様に多くなり、脳はその音にがまんしきれなくなって、今度は目を覚まさせようとする。

 

 興味深いことに、「familiar sounds (聞き慣れた音)」と「unfamiliar sounds (聞き慣れない音)」に対する「K-complexes (K複合)」の違いも、夜もふけて後半に入ると、その差はほとんどなくなってしまう。どうやら、脳が「unfamiliar sounds」に慣れて、これを「harmless (危害なし)」と学習するためと推測されている。

 

 「unfamiliar voices」に対しては、「micro-arousals (マイクロ覚醒)」と呼ばれる微細振動波形も頻繁に現われる。その波形は数秒間続くが、これによって目を覚ますことはない。ただし、マイクロ覚醒の働きについては、まだ、よくわかっていない。おそらく、耳にした音が「harmful or not (危険か、それとも安全か)」の判断に使用されているものと考えられる。

 

 つまり、人間は、たとえ深い眠りや「consciousness fades (意識混濁、もうろう状態)」にあっても、脳は「processing mode or stunby mode (警戒モード)」を続けて、危険と判断すれば、目を覚まさせようとするのだ。

 

 ところで、旅先のホテルで なかなか寝付けないのはなぜか。それは、寝室環境が変わったことで、脳が普段よりも「K-complexes」と「micro-arousals」の信号を連発していることにある。

 しかし、時間が経つにつれて、脳は、その環境になれて眠りにつく。

 

 さっさと、スマホの「pocast」や TVのスイッチを切って、静かな環境にすると、脳は安心してぐっすりと眠りにつくことができるとか。

 

おわりに:雨だれの音も、ときには気になるもの。そんなときは、せいぜいショパン前奏曲第15番「雨だれ」を思い浮かべるほかに、その雑音から逃れる方法はない。

                          (写真は添付のRTE Newsから引用)

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