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トラ・ジャガーが絶滅寸前!:その原因は、水力発電ダムの建設! (BBC-Science, Dec 9, 2021)

tiger

 2022年、干支(えと)のシンボルがウシからトラに変わる。その昔、牛は身近な存在であり、田んぼの代掻(しろかき)の重労働に欠かせない動力源だった。それに引き換え、ほとんどの人にとって、トラは想像上の動物だった。その状況は「宇治拾遺物語 巻第三の七『虎の鰐(ワニ)取りたる事』」に伺い知ることができる。

 

 それは、『今は昔、筑紫(ちくし)の人が、新羅(しらぎ)の国に、船で商(あきな)いに出かけた折、崖の上で狙っている虎から、寸前のところで逃げ延びた話』だった。日本人は、この話を伝え聞いて、トラのすごさを思い浮かべた。

 

 さて、「tiger(トラ)」の語源はギリシャ語「tigris」。その語義は、「swift animal (動きのすばやい動物)」。力強さの象徴でもあったが、残忍な面もあると見なされ、人々から恐れられた。

 

 そのトラも、今では「絶滅危惧種 (endangered species)」。地球上に生息するトラの総数はおよそ3,500頭に過ぎない。

 なお、同じネコ科に属するジャガーに至っては、トラよりも悲惨な生息環境に置かれている。jaguar

 なぜ、こうも大型のネコ科動物がその数を大幅に減らしてしまったのか。ポルトガルPorto大学の Ms Ana Filipa Palmeirimらが科学雑誌「Communications Biology」に発表した研究によると、その主な原因は「hydroelectric dams (水力発電ダム)」の建設にあるという。

 ダム建設には、建設資材の搬送用道路が必要になる。この縦横無尽に走る道路が森をズタズタに切り裂いて、生息地は細切れに寸断される。そして、最終的に森の一部はダム湖の底に沈む。こうして、ダム湖に消えた森の総面積は13,000km2 (130 万ha)。

 

 たとえば、1987年にタイ政府は「Cheow Lan (チェオ・ラン)」に水力発電ダムを建設したが、これによってトラが生息していた森の約165km2が消失した。その上、かって連続した一つの生息地が、細切れの森に分断されてしまった。ダムの完成後、まもなくして、この地域からトラは姿を消したという。

 

おわりに:政治家が金儲けと権力争いに血眼になり、経済優先、エネルギー・資源最優先策を掲げる限り、環境・自然保護は置き去りにされる。自然を守ろうとする有識者・市民の声は政治家に届かない。そもそも、政治家とは、自分の考えに そぐわない意見には、耳をかさない人たちのことだ。

 なお、「酔っぱらい」のことを虎とも言うが、「酔って怖いもの知らず」になっているためだとか。さて、そろそろ、この辺で切り上げないと、「虎の尾を踏んで」、とばっちりがありそうだ。  

  丑年のWorld Newsはこれにて終了。読者のみなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。  

         (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com