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フランスのオオヤマネコの運命:風前のともし火! (RTE-News, Feb 13, 2023)

There are at most 150 adult lynx hidden in the mountains of northeastern France

 オオヤマネコ (Eurasian lynx)の「lynx」はギリシャ語「lugx」に由来し、光 (light)と鋭い眼光を意味する。その母音を含まない動物名も珍しい。

 このネコ科の獰猛な大型肉食動物は、かって、ユーラシア大陸一帯の森に生息し、シベリアにチベット高原、それどころか 5,500m級のヒマラヤ山脈にさえナワバリをもっていた。

 

 この「ヤマネコ (wild cats)」は主に夜行性で、日中はめったに姿を見せない習性がある。このため、正確な生息個体数の確認が困難な動物種でもある。しかし、ヨーロッパでは「lynx」の個体数が減少の一途をたどり、フランスでも、20世紀の始めに絶滅してしまった。

 

 けれども、「lynx」は、生態ピラミッドの頂点に立つ「apex predator (頂点捕食者)」として、長年、エコシステムのバランスの維持に寄与してきた動物だった。

 そこで、フランスでは、1970年代に、この「lynx」を自国内に再導入した。現在、フランスとスイスの国境にそびえる「Jura mountains (ジュラ山脈)」を中心に、推定 120- 150頭の「lynx」が、人目を避けるように生息している。

 

 ところが、フランスの「Centre Athenas」のスタッフ Mr Nathan Huvierらの研究チームが、2008年から2020年に至る12年間にわたって、ジュラ山脈に生息するオオヤマネコ(lynx)の「genetic diversity (遺伝的多様性)」を調査した結果、その多様性は、ヨーロッパ中央・東に広がる「Capathian Mountains (カルパ山脈)」の同種のヤマネコに比べて極端に劣っていて、環境変化に対して脆弱になっていることが明らかになったという。(研究の詳細は科学雑誌「Frontiers in Conservation Science」に発表。)

 

 なお、さらに悪いことに、スイスとの国境に広がる山脈地帯は観光スポットやハイキングコースであふれている場所だ。このため、「lynx」の生息域は道路によってズタズタに寸断された「highly fragmanted (細切れ状態)」。

 

 もちろん「poaching (密猟)」の疑いも拭い切れないが、なんといっても、ヤマネコを絶滅の危機においやっている主たる原因は「vehicles (クルマ)」だ。

 2022年に限ってみても、クルマで轢かれた「lynx」は22頭にのぼる。そして、その事故で生き残ったのは、たったの一頭だった。

 

 昨年、「lynx」の実態に懸念を抱いたフランス政府は、オオヤマネコ復活プランをを開始した。

 しかし、直ちにハンター・農民の反対抵抗にあう。かれらの主張は、「自然のおもむくままにまかせよ」とか。

おわりに:事態は深刻。Mr Huvierが警鐘を鳴らすように、すぐに他の生息地から「lynx」を再導入しないと、フランスの「lynx」は遅かれ早かれ絶滅するに違いない。しかし、自由、平等、博愛の国フランスは揺れている。パリの治安は悪くなる一方だ。今、この国で「オオヤマネコ(Eurasian lynx)」の生存の危機を憂う人はどれだけいるだろうか。憂うどころか、猟銃まで持ち出すとは.....。良心・良識、倫理、罪悪感に関して、この数万年の間、人類は、ちっとも進化しなかったのだ。

追記:ヤマネコのはなしと言えば、次の本の右に出るものはない。

宮沢賢治 作、高野玲子絵:どんぐりと山猫、1989、偕成社

    (写真は添付のRTE Newsから引用)

www.rte.ie