地球上から湿地がどんどん消えた:そして、トンボの姿が消えた! (BBC-Science, Dec 16, 2021)
トンボを古くは「秋津(あきつ)」と言った。ヤゴのときから勇猛果敢。「槍の又左」の異名をとった戦国時代の武将「前田利家」は、自らの兜(かぶと)の前立(まえだて)に、このトンボの飾りを置いたことで知られる。
ところで、トンボは英語で「dragonfly」。直訳すれば「飛翔竜」と勇ましい。ただし、その昔、「devil’s darning needle (悪魔のかがり針)」と呼ばれ、さらに「devil’s horse (悪魔の乗る馬)」との汚名を着せられ、さげすまれて さんざんだった。
こともあろうに、このトンボが世界中の空から姿を消している。その原因は、ひとえに湿地の宅地化・農地化にある。1970- 2015年の35年間で、湿地の35%が地球上から消失した。
(欲深い)人間には、
・湿地 (marshes, bogs, swanps)が、生態系 (ecosystems)にとって、どんなに重要であるのかに気づかず、あるいは気づいても知らないふりをし、
・湿地は荒れ地 (wastelands)と決めつけ、[ 悪賢(がしこ)く、狡智に長けた人物あるいはいっときの権力にしがみつき、自然環境をないがしろにする政治家が、湿地をかってに埋め立てし ]、 宅地や「unsustainable agriculture (持続不可能な農業)」の農地に変えてしまったのだ。
湿地帯の消失スピードは、同じように減少率が著しい森林に比べて3倍。ものすごい早さで、湿地が地球上からどんどん失われている。
その結果、地球上のトンボの仲間の約16%が数を減らして絶滅の危機に追い込まれてしまった。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト最新版では、絶滅の危機にあると認定されたトンボの仲間は 40,000種を超えるという。
加えて、川の生態系の破壊も著しい。川の上流に多くの水力発電施設・ダムを建設し、貯水池用だ、灌漑用だと言っては、川の水をどんどん汲み上げる。これでは、川辺・水辺に生息する水生動物は干上がってしまう。「Pyrenean desman (ピレネー・デスマン)」は、2011年以前に比べて、その個体数を半減させ、「絶滅危惧ⅠB 類 (endangered species)」の仲間入りしてしまった。
おわりに:交通の不便な田舎では、誰も住まなくなった「限界集落」が溢れ、地方都市の町中では、数多くの空き家が目立つ。それでも、宅地・農地の開発だ整備事業だと称し、山林の木々を伐採し、山を崩し、湿地・沼地を埋め立てすることをやめない。
どんな土地でも、土地は投機・金儲けの対象となり、政治家・資本家、金満家にとって「金の成るツール」、「力(権力)の維持に欠かせないツール」になってしまったのだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)