イギリスで蔓延するコロナ変異ウイルス:どれほど凄いものか! (BBC-Health, Jan 2, 2021)
UKで新たに発生した「variant virus(変異ウイルス)」。「Public Health England (イングランド公衆衛生局)」による識別名は「Variant of Concern 202012/01」あるいはこれを略して「VOC」。これまで以上に獰猛(どうもう)なウイルスだ。
ウイルスの感染力の強さ (infectiousness)を表わす「Reproduction or R number (実効再生産数、R値)」で比較すると、従来のコロナウイルス「SARS-Cov-2」の R値は 1.1 -1.3だった。それが変異ウイルスVOCの実効再生産数 R値は、1.5 −2.0に増加。すなわち、1人の感染者が、最大 2人に感染を広げてしまうほど強力になった (なぜ、感染力が強まったかのは不明)。このVOCの出現で、またたく間に UK全土にコロナ感染が広がった。
なお、UKで二度目の「lockdown (都市封鎖) 」が出されたのは昨年11月。けれども、このとき、子どもたちの学校が閉鎖されることはなかった。Imperial CollegeのAxel Gandy教授らのデータ分析によると、その間に、変異ウイルスVOCが、20代、とくに中学生の子ども達を中心に広がり、その後、全世代に感染が移って行った。
その結果、従来のコロナウイルス「SARS-Cov-2」は、変異ウイルス「VOC」に駆逐されて、感染者数は 1/3に減少した。逆に、VOC感染者数は 3倍に膨れ上がった。
このことは、中途半端なコロナ対策がどんなに危険なものであるかを良く示している。
Warwick大学の Lawrence Young教授によると、ウイルスが生命体に侵入し、自らの遺伝子をコピーしながら増殖を繰り返す過程で、変異ウイルス (variant virus)が出現するのは、ごく普通のこと。
したがって、コロナ感染が始まった当初から様々なタイプの変異ウイルスが発生したと考えられる。しかし、ほとんどの場合、変異してもウイルスの特質が大きく変わることはない。ごくまれに、感染力が強まったり、免疫システムに対する抵抗力が高まることがあるという。
昨年の11月に確認された変異ウイルスVOCは、その 2ヶ月前の 9月に「South-East England」で発見されたウイルスと同じ種類と考えられている。
現在、この、感染力が強まった変異ウイルスVOCは、UK全土に広まっているが、とくに、LondonとEngland南東・南部に感染者が集中している。
Oxford大学の Jim Naismith教授は次のように訴える。
” In simpler terms, unless we do something different the new virus strain is going to continue to spread, more infections, more hospitalisations and more death.”
[ 平たく言えば、これまでとは違った(厳しい)対策を取らない限り、新たなウイルス株がさらに広がり続けて、感染者がもっと増え、入院患者がもっと増え、死亡者ももっと増える。]
おわりに:人命尊重か経済(損得勘定)尊重か。「命あっての物種」あるいは「経済あっての物種」か。どたんばに追い込まれたときに、なにを優先すべきか。指導者・権力者は、よくよく考えることだ。必ずや、10年後にその審判が下される。
(写真は添付のBBC Newsから引用)