コロナのワクチン接種:麻疹(はしか)の予防接種と、何が違う?(RTE-News, March 9, 2020)
人類の祖先は、数百万年にわたる「the law of natural selection (自然淘汰の原則)」を経て、「immune system (免疫システム)」を獲得した。一度ウイルス・病原体に感染すると、体に抗体が生じ、さらに「memory B (メモリーB細胞)」、「T-cells (T細胞)」が働いて、再感染を防ぐ防御システムだ。
この医学的根拠がワクチンの開発につながった。
さて、「麻疹(はしか) (measles)」の予防接種を一度受けると、ほぼ一生その効き目が続く。この事実は、Oregeon Health & Science University」の Dr Ian Amannaらの研究グループが「The New England Journal of Medicine」に発表した研究論文 (2007年)で実証済みだ。
ところが、インフルエンザ (flu)ウイルスは、常に変異 (mutation)を繰り返している。このため、変異を予測したワクチン開発が欠かせず、そのウイルス感染拡大の前に、ワクチン接種を打つ必要がある。
では、新型コロナ Covid-19のウイルス「SARS-Cov-2」の予防接種は、一度打つと「meals (はしか)」、「smallbox (天然痘)」のワクチン接種と同様、一生その効果が期待できるのか。
答えは「No」だ。
ワクチンの効果はウイルスの「安定度 (stability)」に大きく左右される。新型コロナ・ウイルスの安定度は、麻疹(はしか)とインフルエンザの中間程度と考えられている。
コロナウイルスは、変異を起こすと、その表面に突き出た「spike protein (スパイクタンパク質)」の形状を変える。こうなると、一度ウイルスに感染して体内にできた抗体が役に立たない。
変異ウイルスに感染しないためには、さらに「booster shot (ブースター注射)」が必要になる。
また、「natural infection (自然感染)」して、症状が軽かった人、あるいは感染しても症状が現われなかったコロナ感染者についても、抗体が不十分で、再感染のリスクが高くなる。
ともあれ,「Moderna (モデルナ)」ワクチンなどは「durable antibody response (耐久性のある強い抗体反応)」を誘発するように設計されている。
もちろん、抗体 (antibody)が機能しない変異ウイルスには、「T cells(T細胞)」の活躍に期待できる。なお、「T cells」は、次の免疫細胞の総称だ。
Hepler CD4+ T cells
Cytotoxic CD8+ T cells
Memory T cells
Regulatory CD4+ T cells
Natural killer T cells
Mucosal associated invariant
Gamma delta T cells
ただし、加齢とともに. 血液中の「T-cells」は極端に減少することが知られている。高齢者が新型コロナに感染すると重症化しやすいのは、このためだ。
麻疹(はしか)の予防接種を受けないと、どうなるか、その危険性は誰でも知っている。新型コロナの予防接種はインフルエンザ・ワクチンとほぼ同様と考えておくと無難だ。一回の接種で万事収まるとは行かないが、ともかく差し迫った危機を乗り切ることが大事だ。
おわりに:新型コロナ発祥の地であり、くしくも、兵法の発祥の地の中国。その国の書「孫子の兵法」で、「戦いに勝つためには、まず相手をよく知ること」とある。しかし、Covid-19のウイルスとの戦いが始まったばかりだと言うのに、すでに世界で 275万人が討ち死にした。それに、敵の正体(特性)もよく分かっていない。こんな敵に対しては、こちらの防備を完璧にして、敵の襲撃を寄せ付けないことだ。
(写真は添付のRTE Newsから引用)