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しつこい風邪(カゼ):遺伝子治療でカゼに感染しない体に! (BBC-Health, September 16, 2019)

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  咳、クシャミ、鼻づまりは、誰もが罹る「風邪 (common cold: 普通感冒)」の症状だ。その原因ウイルスは「rhinoviruses (ライノウイルス)」。風邪で命が脅かされることはないが、「風邪は万病の元」とも言い、昔から決してあなどってはならないとの戒めがある。また、ぜん息の症状を悪化させることもある。まれに、風邪ウイルスの仲間が脳に侵入すると、「paralysis (麻痺)」を引き起こす。

 ウイルスは、それ自体では増殖できない。他の生物の細胞に取り憑き、その細胞内のタンパク質、エネルギーを借用して自らの組織を複製し、増殖を繰り返す不届きものだ。
 その「rhinoviruses (ライノウイルス)」には約160種の血清型があり、しかも、DNAを変異させて、風邪薬に抵抗力をつけたり、免疫システムから逃れることを、いとも簡単にやってのける。
 つまり、風邪ウイルスは変化自在。いくら、風邪薬の新薬を開発しても、「いたちごっこ」になってしまう。

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 そこで Stanford大学の Jan Carette教授らの研究グループは、風邪ウイルスが取り憑くのは、細胞内のタンパク質「methyltransferase SETD3 (メチルトランスフェラーゼSETD3)」であることを突き止め、このタンパク質に指令を与えているDNAのスイッチを「遺伝子編集 (gene-editing)」によって切った。
 この状態では、風邪ウイルスがいくら細胞内に侵入しても、増殖は不可能となる。
 
 ウイルスの増殖に必要なポイントに的(まと)を絞ったこの治療法は「host-directed therapy (宿主標的治療HDT)」と呼ばれる。
 Carette教授らのマウスを使った動物実験では、風邪を引かない「genetic deletion (遺伝子欠失)」のマウスが誕生し、その生命を全うしている。

 ただし、「methyltransferase SETD3」は、細胞を組織する「cytoskeleton (細胞骨格)」に対して重要な役割を果たしているタンパク質。この機能を失ったマウスがなぜ生き延びることができたのか、また、なぜ、風邪ウイルスは、このタンパク質を宿主とするのかは、依然不明。

 マウスでは成功しても、人間のDNAを操作して、安全性は保証されるのか、さらに、変化自在の風邪ウイルスに、遺伝子治療HDTがどこまで効果を発揮できるのか等々、疑問は山積み。実用化の前に、さらなる研究が必要だ。

                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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