今年の冬は強烈なウイルスがウヨウヨ:カゼとコロナにご用心! (RTE-News, Nov 5, 2021)
カゼ (common cold)を正式には「カゼ症候群 (common cold syndrome)」と呼ぶ。その昔、カゼは、風の邪気によって起こると考えられた。そこで、カゼを風と区別し、「風邪」と書く。
もちろん、今では、風の邪気を信じる人は誰もいない。
1.油断大敵、風邪引くな
「RCSI (アイルランド王立外科医学院)」の Fidelma Fitzpatrick教授によると、カゼの原因の約 50%は、ライノウイルス (rhinovirus)感染。他にも
・coronaviruses (コロナウイルス):10% (寄与率)
・flu viruses (インフルエンザウイルス):5− 10%
・respiratory syncytial viruses (RSウイルス)
& parainfluenza viruses (パラインフルエンザウイルス):5%
などが、カゼの症状を引き起こす主なウイルスとして知られている。
これらのウイルスは主に、人の鼻から咽頭、喉頭に至る「上気道 (upper respiratory tract)」に感染し、
・sore throat:のどの痛み
・headache:頭痛
・fatigue:倦怠感
・blocked or runny nose:鼻水、鼻詰まり
・sneezing:くしゃみ
・coughing:せき
などの症状を引き起こす。
その症状は
・感染者の年齢
・免疫力
・ウイルスに対する抗体の有無
によって違い、一般にカゼを引いてから 1週間程度、長引いても 3週間で完治する。
しかし、カゼを「カゼぐらい」と侮(あなど)ってはいけない。とくに免疫力の弱い子どもや高齢者などは、ウイルス感染が
・middle ears:中耳
・sinuses:静脈洞
・lungs:肺
に広がって、それぞれ、中耳炎、静脈洞炎、肺炎を引き起こすことがあるので注意が必要だ。
さらに、呼吸器系に
・asthma:ぜん息
・chronic obstructive pulmonary diseases:慢性閉塞性肺疾患
などの既存症のある人が、カゼを引くと、重症化する。
まさに「風邪は万病の元(もと)」なのだ。油断大敵。
2.カゼの予防
基本的には新型コロナ感染対策と同じ。
・ソーシャルデスタンス (2m間隔)を保つ
・不要不急の集会(集まり)を避ける
・室内の換気を良くする
・テレワーク
・学級閉鎖
・外出や旅行の自粛
・マスクの着用
・手洗い(消毒)、うがい
ただし、これまでの新型コロナ感染対策として、一般大衆が、すでに、上記の「non-pharmaceutical interventions (公衆衛生的措置)」を徹底した結果、多くの人の体内には、カゼの原因となるウイルスの抗体が薄れている可能性がある。
こんなとき、新型コロナ感染の規制も、自粛ムードも緩まって、人々がマスクをせずに集まりだすと、カゼが大流行するリスクがある。
3.カゼに罹りやすくなっている
昨年2020年の10月、香港でカゼが大流行した。それまで、新型コロナ感染の防止対策の一環として閉鎖していた学校を再開したところ、カゼのウイルスがまたたく間に生徒に広がってしまったのだ。
Princeton大学の Dr Rachel Bakerらの研究グループは、今年の冬、新型コロナ感染の規制緩和によって、「RSウイルス」と「インフルエンザウイルス」が猛威を振る可能性がある、と指摘している。
なお、すでに、オーストラリアが規制緩和に踏み切ったとたん、RSウイルスによるカゼが急増したという。
また、イングランド公衆衛生局は、この 6月、子どもたちの間にカゼなどの呼吸器系感染症が広がっていることを憂慮し、保育関係者(caregivers)に注意勧告を発している。
4.マスクの正しい着用と手洗いでカゼ防止
咳(せき)、くしゃみに伴う飛沫は、ウイスルを拡散させる元凶だ。マスクは、この飛沫防止にも効果的だ。ただし、マスクを正しく着用しないと、その効果は半減する。まちがった、見せかけだけの「鼻出しマスク」は、やめた方が良い。また、外出から帰宅した際には、手洗い(消毒)、うがいを忘れずに。
5.この冬、新型コロナ感染は再燃するか
日本では、ワクチン接種が進んだせいか、新型コロナウイルス「SARS-Cov-2」は、息を潜めている。今のところ、このウイルスに感染しても、多くの場合、症状が現われず、まれに、重症化して肺炎を起こす患者が出る程度だ。
しかし、本格的な冬を迎えて、ドイツ、イギリス、フランス、ロシアなどのヨーロッパの一部の先進国では、新型コロナ感染者が急増している。患者数は、一日当たり数万件に達し、医療関係者は疲弊している。
このコロナ再燃現象が、ワクチン接種の効き目が薄れたためなのか、それとも「SARS-Cov-2」が変異したことに原因があるのかは、不明だ。
どんなウイルスにしろ、多かれ少なかれ常に変異を繰り返し、自らの生き残りを図っている。「SARS-Cov-2」とて例外ではない。このしぶといウイルスは、すでに「seasonal circulation (季節性型)」に変異していることは間違いなさそうだ。
つまり、インフルエンザウイルスと同じように、増殖に適さない季節には、じっとどこかに姿を隠し、増殖・繁殖に適した冬がやってくると、猛烈に暴れ出すタイプに変身した可能性が高い。
ワクチン接種のお陰で、新型コロナに感染しても、軽いカゼの症状で済む人もいれば、重症化して肺炎を引き起こす人もいる。このため、新型コロナ感染とカゼとの区別が難しくなったことも事実だ。
確かなことは、冬の呼吸器系感染症として、カゼとインフルエンザの他に、新型コロナが加わったことだ。これは人類にとって、大変な脅威だ。
おわりに:どんなウイルスであれ、地球上から、それを完全に抹消することは、ほとんど不可能だ。「SARS-Cov-2」は、人の体内に潜伏し、着々と大攻勢のチャンスを狙っているに違いない。人類は、とんでもないゲリラ戦に引き込まれてしまった。なお、数日前、南アフリカ共和国で、これまで以上に感染力の強いオミクロン(変異株)が発生し、ベルギー、イスラエル、ドイツ、UK、チェコ、イタリア、オランダ、オーストラリア、カナダに飛び火している。
(写真は添付のRTE Newsから引用)