大雨でジャガイモ畑は水浸し:収穫量 激減のIreland! (RTE-News, Nov 10, 2023)
秋が深まり、日の落ちるのが早くなると、作物は収穫の時期を迎える。しかし豆、小麦、稲を刈り取るコンバインを動かすには、お天気の良い日に限る。
さて、今年の Irelandの夏は異常だった。夏の間、来る日も来る日も雨が降ってジャガイモ畑は水浸し (wateregogged)になった。
この春先に土地を耕して畝 (drills)をつくり、種(たね)イモを植え付けたジャガイモ畑は、畝(うね)と畝の間に雨水が流れ (flows in rivulets)をなすほどビシャビシャになった。畑に足を踏み入れると、長ぐつが人差し指ほどもぬかるんでしまう。
ジャガイモを掘り出してみると、ほとんどが腐っていて、悪臭を放っている。これでは、売り物どころか、家畜の餌(えさ)にもならない。「捨てるしかならない (a write off)」と、Mr Sean Ryanは嘆(なげ)く。
例年であれば、どこのジャガイモ畑も、とっくに収穫を終えているこの時期に、今年は、ジャガイモの収穫は、まだ半分も済んでいない。
その理由は土壌の状態にある。こんなビチャビチャなジャガイモ畑に機械を入れたら、すぐに、泥にはまって動けなくなるからだ。
Irelandの農業技術開発・指導機関「Teagasc」のジャガイモ栽培のスペシャリスト Mr Shay Phelanによると、「この地に住んで20年になるが、こんなにジャガイモが収穫できないで、畑に残っている年ははじめて」と語る。この段階で、農家に言えることは「掘れるものがあったら、掘り出すこと」。
なお、1ヘクタールのジャガイモの栽培に必要なコストは €10,500 (約171万円)。
・seed cost:種イモ費用
・planting cost:植え付け費用
・spraying cost:農薬散布費用
・harvesting:収穫作業代
を含めた経費だ。
Irish Farmers’ Association (アイルランド農業者協会IFA)によると、これ以上の被害が発生すると、農家はとても「financial hit (経済的な打撃)」を克服できなくなると言う。
いつもなら、流通業界の倉庫がジャガイモでいっぱいになっているはずが、今年は、どの倉庫もジャガイモが品薄だ。だから、年があけるころには、極端なジャガイモ不足に陥るかもしれないと見られている。
おわりに:お米が歴史、文化、経済のみならず、人間が生き抜くためにどんなに大切なものかは、それを主食とする国で生まれて育った人でなければ、なかなかわからないものだ。同じようなことが、ジャガイモにも言えるだろう。Irishにとって、ジャガイモがどんなに大切で、生活に根付いたものであるかについては、Irelandに住んでみないと、本当に理解できないに違いない。けれども、風が強い上に寒く、小麦の栽培には適さない Irelandの地で、必死になって先祖代々ジャイモを植え付けてきた農家の苦労と、ジャガイモを大事にする国民の気持ちは痛いほどわかるような気がする。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)
かぜ、インフルエンザ、花粉症:その違いをどうやって見分ける?(RTE-News, Nov 7, 2023)
木(こ)の葉が風に舞う 爽やかな秋 (crisp autumn)。一年中でもっとも過ごしやすい季節だ。
ところが、地球温暖化のせいで、これまでの秋のようすが違ってきた。10月、11月になっても夏の暑さが続いたり、大雨、嵐がひっきりなしに押し寄せるようになった。植物にも異変が現われた。雑草が枯れずに花粉を飛ばすのだ。その代表格が、
・Rogweed:ブタクサ
・Mugwort:ヨモギ
・Japanese hop:カナムグラ
実は、この秋から初冬にかけての「おそまきながら」の花粉症 (hay fever)が、やっかいだ。なにしろ、どちらもくしゃみ・鼻水が止まらず、からだにも力が入らないとあっては、かぜ (cold)なのか、インフルエンザ (flu)なのか、それとも花粉症なのか、症状がよく似ていて、三者の区別がつかないのだ。
そこで、 Nottingham Trent大学の Dr Samuel J. White & Prof Philippe B. Wilsonは、「a cold, flu or hay fever」の症状の特徴と違い、ならびにその見分け方を簡潔にまとめて医学雑誌「The Conversation」に発表した。以下はその要約版だ。
1.How symptoms compare:症状の違いを知る
1.1 かぜと花粉症
くしゃみ、鼻水、鼻詰まりは、かぜ (cold)にも花粉症 (hay fever)にも見られる症状だ。ただし、両者の根本的な違いは、
[ hay fever ]
・itchy, red, watery or puffy eyes:目が赤く、痒く、涙目や腫れ目になる
・itchy throat:のどの痛み
[ a cold ]
・throat feels sore:のどの痛み
・cough:せき
にある。
1.2 インフルエンザとかぜ
インフルエンザ (flu)と花粉症 (hay fever)の症状が重なることはほとんどないので、まず、両者をとりちがえることはないが、むしろ、まぎらわしいのは、かぜ (cold)とインフルエンザ (flu)の区別だ。そのどちらも「せき (cough)」を伴い、他にも
・sore throat:のどの痛み
・sneezing:くしゃみ
・running nose:鼻水
・chills:寒気(さむけ)
・fatigue:疲れ
・body aches:からだの痛み
などの症状を共通にするが (ただし、人によって症状が違うこともあるので注意)、インフルエンザの顕著な症状として
[ flu ]
・fever:発熱
・gastrointestinal symptoms( vomiting or diarrhoea):胃腸症状 (吐き気、下痢)
1.3 一時的ながら味覚・嗅覚を失ったときの判断
この症状のとき
・blocked nose (鼻詰まり)なら → hay fever
・your nose isn’t blocked なら → a cold or flu
2.Supporting your immune system:免疫システムをサポートする
かぜ、インフルエンザ、花粉症のいずれであっても、その予防の第一は、科学的に裏付けのある方法で免疫力を高めることだ。
2.1 Bolster your gut:腸内細菌叢の強化
免疫力は、おなかにある。そこで
・amino acids
・vitamines
・minerals
・fibre
が豊富な食べ物を摂取し、加えて「probiotics (プロバイオティクス)」の
・Lactobacillus (ラクトバシラス [乳酸菌])
・Vifidbacteterum (ビフィズス菌)
を食べると、免疫力が強化され、たとえ体調を崩し (ailment)ても、症状の悪化が緩和される。
2.2 Avoid smoking and alcohol:タバコとお酒を控える
お酒の飲み過ぎとタバコは免疫力を弱めるだけだ。夜、レストランなどで「Even just five or six dirnks (お酒を5、6杯飲んだだけで)」、その後、最大24時間、免疫力が低下する。
2.3 Priotise sleep:睡眠第一
炎症 (inflamation)を抱えて、からだが弱っているときは、睡眠が何よりも大事だ。少なくとも7時間の睡眠が必要になる。また、睡眠時間が少ないと「common illness (よくある病気)」に罹りやすくなる。
2.4 Mnage stress:ストレス対策
ストレスホルモン「cortisol (コルチゾール)」は免疫細胞の機能を低下させるとともに、血液中の「histamine levels (ヒスタミン濃度)」を上昇させて、「allergy symptoms (アレルギー症状)」を悪化させる。
ストレスの解放には「mindfulmess (マインドフルネス療法)」が効果的。
2.5 Exercise:運動
運動といっても、免疫力を高めるための運動は、少し汗ばむ程度の「moderate-intensity physical activity」の
・brisk walk:早歩き
・ballroom dancing:社交ダンス
がおすすめだ。ただし、くれぐれも、運動し過ぎ (long, intense exercise)にならないように。からだがヘトヘトになっては、かえって免疫力が低下する。
2.6 Get your jab:ワクチン注射
それでも心配なら、
・Vaccination is vital.(ワクチンが不可欠)
ただし、ワクチンを打っても「preventative measures (予防対策)」を忘れてはいけない。
・washing your hands:手洗い
・wearing a mask in busy, indoor spaces:人通りの多い場所、屋内ではマスクを
3.Additiona measures to prevent allergy symptoms:その他の花粉症対策
3.1 Avoid allergens:アレルゲンを避ける
まずは、自分のからだが反応するアレルゲンを知ることだ (血液検査でわかる)。そして、花粉飛散情報を常にチェックして、
・花粉量が多いときは外出を控える
・窓は開けない
・室内で空気清浄機を使用する
・N95マスクを着用する
3.2 Antihistamines:抗ヒスタミン薬
市販の抗ヒスタミン薬 (over-the-conter antihistamins)
・cetirisine:セチリジン
・ioratadine:ロラタジン
が花粉症に有効。理想的には、花粉が飛散する前から服用し、花粉シーズン中は飲み続けることが求められる。その際には、専門医のガイダンスを受けること。
3.3 Consider immunotherapy:免疫療法
花粉症はアレルゲンに対する過剰な免疫反応だ。これを和らげる「allergy shots」が免疫療法 (immunotherapy)だ。ただし、その効果を引き出すためには、複数回の注射が必要となる。
おわりに:どんなに注意しても、かぜを引いたり、インフルエンザに罹ったりするものだが、軽い症状のうちに、適切に対処することが肝心だ。そして、たとえウイルスが体内に侵入しても、これに打ち勝つことができるように、日頃から免疫力を高めておくことだ。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)
自慢にならない 3時間睡眠:鬱(うつ)のリスクが高まるだけ! (RTE-News, Oct 20, 2023)
「ナポレオンは一日たったの 3時間しか眠らなかった。だから、少しぐらい寝不足が続いたって、どおってことはない」などと、高(たか)をくくっていると、大変なことになりかねない。
UCL Institute of Epidemiology and Health Care (UCL疫学・ヘルスケア研究所)の Ms Odessa Hmilton、Andrew Steptoe教授らの研究チームが、被験者7,146人 (平均年齢65歳)の遺伝子データ・カルテを解析した結果、寝不足 (short sleep)が続いていると、うつ病の初期症状とされる「悲哀感」、「孤独感」に襲われることがわかった。
とくに、「genetic predisposition (遺伝的な体質)」上、ほとんど毎日のように睡眠時間が 5時間以下の人は、注意が必要だ。今後4−12年にかけて、「うつ」を発症するリスクが高まるという。
なお、寝不足・寝過ぎと鬱(うつ)の どちらにも遺伝性があり、その遺伝的な要因が関与する割合は、
・Depression (うつ病):35%
・Genetic differences account for 40% of the variance in sleep duration.
[ 遺伝的な違いが睡眠時間に寄与する割合:40%]
そして、ふしぎなことに、遺伝的にうつ病を起こしやすい人に、睡眠時間が短いということはなかった。
人それぞれが特定の病気に対して遺伝的な体質を持っていて、それは「多遺伝子スコア (polygenic scores)」によって知ることが可能だ。これは、睡眠時間とうつ病との関連性を解明する上で重要な鍵となると考えられている。
ただし、「genetic predisposition (遺伝的な体質)」を棚上げにして、単に睡眠時間とうつ病との関連性を解析すると
・睡眠5時間以下の人は、標準的な睡眠時間(約7時間)の人に比べて、うつ病の発症率が2.5倍高い。
・うつ病の兆候のある人が、睡眠不足になる確率は、1.3倍高い。
・睡眠時間が 9時間以上の寝すぎの人も、うつ病の発症率が 1.5倍高い。
・しかしながら、うつ病を発症してから 4年から12年後の間に、睡眠時間が長くなることはなかった。
Steptoe教授によると、「不適切な睡眠 (suboptimal sleep)と鬱 (depression)は老化に伴って現われるもので、世界中で起きている現象であり、社会の高齢化が進む中で、鬱と睡眠不足の関係を明らかにすることは、ますます重要になっている」と言う。
おわりに:もしも、寝不足、鬱(うつ)あるいは特定の病気に対する抵抗力の弱さが先祖から受け継いだものなら、しかたがない。しかし、それでも、その落とし穴に落ちないために、自分でできることが必ずあるはずだ。人間の信念ほど強いものはないと信じたい。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)
干ばつにも大雨にも強く、手間いらずの野菜:プロのおすすめは? (RTE-News, Oct 24, 2023)
リンドウ、秋明菊、ホトトギス (trycyrtis hirta )、ハマギクの花々が庭を彩(いろど)りはじめると、秋は終盤を迎える。
「園芸家12カ月」のカレル・チャペックではないが、この時期、ガーディナーの頭は、もう春の種まき・植え付けでいっぱいになっている。
さて、その植え付けは
・allotment:市民菜園
・vegetable patches:野菜畑
・greenhouse:温室
の、どれだって、かまわない。
ところが、気がかりなのは「気候変動 (climate change)に伴う異常気象だ。気温が極端に上がったかと思うと、どっと雨が降って洪水をもたらし、なにもかも水びたしにしてしまう。
こんな気象状況にあって、比較的容易に育てられ、収穫が楽しめる野菜があるとすれば、それは、いったい、どんなものか。園芸家 Mr Kevin Hobbsがその疑問に答える。
まずは、野菜を植え付ける場所と野菜の種類を吟味することだ。水はけが悪かったり、逆に乾燥しがちな土壌では、トマトのような「thirsty crops (頻繁に水やりが必要な作物)」が適さない。水の管理が難しく、手間がかかり過ぎるからだ。
これに対して、「perennial veg (多年生野菜)」は、長い時間をかけて土壌に根を張り、その土壌になじむため、育てやすい。
以下は、その代表的な野菜。
英語名を直訳すると「ツルホウレンソウ」。見た目も味もホウレンソウ (spinach)に似るというが、ぬめりがあってネバネバした食感は異様だ。(それに少々草っぽい味がする。)ただし、ビタミンA、C、Eの他、カルシウム、カリウム、βカロチンに富む栄養価の高い野菜だ。
東南アジア原産のこの野菜は、温暖で霜の心配がない地域であれば、一年中栽培可能。秋になると、白と赤の小さな花が咲いて、暗赤色の実を結ぶ。この実は食べられないことはないが、味がイマイチのため (bland to eat)、古くから染料として使われてきた。
2.Moringa:モリンガ (ワサビノキ)
インドとパキスタンの北部に広がるヒマラヤ山麓原産のこの木は、高さ10- 12mに生長する。どの部分も食べられる。その葉と芽は栄養価が高く、マスタードに似た風味がある。ビタミンB1、B2に富み、根はワサビダイコンのように辛(から)く、花は生食にしてもよし、料理の食材としても活用される。
なお、モリンガは乾燥に強いが、寒さに弱いため、冬越しさせるには、霜に当てないように注意が必要だ。
3.Mediterranean saltbush:地中海ソルトブッシュ
南アフリカ原産の低木で、学名は「Portulacaria afra」。別名「tree purslane」と呼ばれるように、この植物の葉は「purslane (スベリヒユ)に似て、高さ 4mに生長する「halophyte (塩性植物)」。つまり、アイスプラントと同じように、塩気(しおけ)のある土壌を好み、乾燥に強い「semi-evergreen (半常緑樹)」だ。
寒さに弱いが、それさえ気をつけてやれば、一年中、「siver foliage (銀色の葉)」が楽しめる。サラダにして召し上がれ。
4.Great burdock:ゴボウ
川岸や河原にコロニーをつくって群生するため、雑草と思われがちだが、古くから UKに自生し、中世の時代 (medieval times)には食材として利用された貴重な野菜だ。ゴボウは食物繊維 (fibre)と抗酸化物質 (antioxidants)が豊富だ。炒めてもよし、スープやシチューの具としても最適。
おわりに:高級ブドウ「シャインマスカット」を実らせるためには、てまひま惜しまず働かなければならない。これに反して、じゃがいも、ゴボウ、長芋などは、土壌を選ばず、ほとんど放っておいても育つ野菜だ。将来の世界の食を確保するためには、このような野菜をもっと見直す必要がある。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)
プラスチックがなくては、医療もクルマも大打撃!:それはなぜ? (RTE-News, Oct 13, 2023)
1.Plastics(プラスチック)とは
プラスチック (plastic)が英語の文献にはじめて現われたのは1632年。この語はギリシャ語「plastikos」に由来し、当初はギリシャ語の原義の「可塑性」すなわち「やわらかくて色々な形にできる性状の」という意味の形容詞として用いられた。
それが、現在のフェノール樹脂「プラスチック」として使われるようになったのは、ベルギー生まれの科学者「Leo Baekeland( レオ・ベークランド) [1863-1944]」が「Bakelite(ベークライト)」を発明し、これが文献上で「plastic」と記されたことにある。その後、各種の「synthetic compounds (合成樹脂)」が誕生したが、それらは、みな「plastics」と呼ばれた。
今では、スーパー、病院をはじめ、どこに行っても、プラスチック素材が目に入る。それもそのはず、プラスチックは世界で年間約4億トンに達するほどの膨大な量が生産されているからだ。
2.Synthtic compounds (合成樹脂)の歴史
産業革命 (Industrial Revolution)の時代(およそ1760- 1860年)が終盤にかかると、「natural resources (天然資源)」の枯渇の兆候が見え隠れするようになる。
森林伐採が進んで森は消え、装飾品素材の「ivory (象牙)」、「tortoiseshell (ベッコウ)」なども手に入り難くなった。
1867年に刊行された「The New Times」の記事には、Ceylon (セイロン) (現 Sri Lanka」のゾウと言えども、このまま密漁 (poaching)が横行し、過剰ハンティングが続くなら、ゾウは絶滅してしまいかねない、との記事が載(の)ったのだ。つまりは、ペンケース、クシ、ビリヤード・ボールなどの高級素材として長年使われてきた「ivory (象牙)」が容易に手に入らなくなるという内容だった。
このような状況にあって、危機感を抱いた産業界は、象牙の代替物 (alternatives)探しにやっきになった。
2.Celluroid (セルロイド)
セルロイドは、植物のセルロースを主原料として、1840年代につくられた「semi-synthetic plastic (半合成プラスチック)」だった。
この「imitating ivory (象牙のまがいもの)」は象牙よりも安価で、用途も多岐に及んだ。とにかく、セルロイドは木材のように水を吸うこともなく、金属のように腐食することもなかったのだ。このため、人形・おもちゃ、メガネのフレーム、写真フィルムなどの素材として、その需要は爆発的に高まる。
ただ残念なことに、セルロイドには大きな欠点 (downsides)があった。それは「flammability(燃えやすいこと)」。このため、やがて「fully syntheti plastics (全合成プラスチック)」が登場すると、すぐに、その主役の座を追われてしまう。
3.Petroleum-based plastics (石油系プラスチック)
ポリエチレン (polyethylene)は 1898年、ナイロン (nylon)は 1955年に発明された。この二つの石油系プラスチックはWWIIの勃発によって、需要も用途も急速に伸びる。とくに、デュポン社のナイロン・ストッキングは一大ブームを起こしたものの、ナイロンはストッキングの素材にとどまらず、戦時下ではパラシュート、ロープ、ヘルメット・ライナーの素材として大いに利用されたのだ。
さらにアクリル樹脂 (acrylic plastics)として知られる「Plexiglass (プレキシグラス)」は、透明性および強度に優れ、軽量であるため航空機の窓に使われている。
4.Medical application (プラスチック医療品)
プラスチックが医療分野に普及した理由の一つは、
・Able to undergo rigorous disinfection without any alteration of its properties. (製品に影響を与えることなく、徹底した消毒が可能)
・Be free from contamination or moisture degradation. (汚染されることも湿気劣化の恐れもない)
ことにある。このため、
・syringes:注射器
・surgical gloves:外科手袋
・containers for medicines and blood samples:医薬品・血液サンプルコンテナ
・medical PPE:医療装備品
などの素材に広く利用されている。
5.Car parts (クルマ用プラスチック部品)
軽量 (light-weight)で耐久性のある (durable) プラスチックは
・steering wheel:ハンドル
・fenders:フェンダー
をはじめ、多くの箇所に使われていて、クルマ全体の軽量化に欠かせない素材だ。この軽量化によってクルマの燃費が上がり、CO2排出量の削減に役立っていると、Dublin City Universityの Dr Jennie O Leoughlinは述べる。
なお、USの EPA (環境保護庁)によると、クルマの CO2排出量は2004年から2021年にかけて 23%も減少したという。
6.Plastic inslation and packaging(プラスチック断熱材とプラスチック包装)
家屋や商業ビルの建築の際にプラスチック断熱材を多用することによって、エネルギー効率が上がるとともに、エネルギーコストが抑えられるようになった。
また、食品用プラスチック包装は、生鮮食品の鮮度を保ち、食品廃棄 (food waste)の減少に役立っている。
地球温暖化対策に取り組む「Project Drowdown」は、次のように述べる。
・Reducing food waste is 15 times more important than recycling in reducing humanity’s carbon footprint.
[ 人類が温効果ガスを削減する上で、食品廃棄量を減らすことはリサイクルよりも15倍重要。]
7.Bio-based plastic (バイオプラスチック)
プラスチックが現代社会に多大な恩恵を与えたことは事実だ。しかし、同時に、プラスチックが自然環境に与えた負の影響にも計り知れないものがある。
OECE (経済協力開発機構)の調査によると、プラスチックの CO2排出量のうち、90%は化石燃料 (fossile fuels)から製造されるときのもので、残る 10%は使用済みプラスチックの焼却時に発生するものだという。
したがって、もし、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を必要としないプラスチックが製造できれば、CO2排出量は激減することになる。
現在、「more sustainable future」をめざし、
・durable and/or compostable plastics (耐久性・生分解プラスチック)
の開発が、Avantium、 BASFなどの企業によって進められているとか。
おわりに:プラスチックが有用で不可欠なものであることはわかった。しかし、プラスチック・ゴミの問題は深刻だ。海岸 (ときに河川敷や藪のなか) に無造作に捨てられている危険な医療廃棄物、海洋にあふれるマイクロ・プラスチックは、いったい誰が管理し、どのようにして、この問題に取り組んだら良いのだろうか。今もって、解決の糸口・光がまったく見えていない。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)
健康に欠かせないフルーツ・野菜:Irelandだって生産が危ない! (RTE-News, Oct 11, 2023)
オレンジにリンゴ、ニンジン、トマト、ネギ、レタス、キャベツ、ホウレンソウ。どれもこれも健康を維持する上で欠かせないフルーツ・野菜だ。しかし、Irelandでは、その生産と消費のあり方が問われている。
これらの食品は、どの国でも、あり余るほど多く生産されているわけではないが、スーパーでは「客の呼び込み (on promotion)」をねらってか、ときに格安価格で販売される。そのせいもあって、人々の「もったいない気分」が薄れて、「food waste (食品廃棄)」は増える一方だ。
1.Food waste:食品廃棄
Cork University Buisness Schoolの Thia Hennessy教授によると、クリスマスが近づくと、スーパーの売り場には 1袋 29c (¥46)のニンジンが並ぶという。
こんな状態だから、「food waste (食品廃棄)」に関して Irelandは EU圏内で第5位にランクされ、その量は EU平均値の1.15倍に達する。
なお、USの「The Environmental Protection Agency (環境保護庁 EPA)」の調査によると、食品廃棄物の大半は「fluit and vegetables (フルーツ・野菜)」で、しかも、全食品のおよそ 1/3が生産・消費段階で捨てられている。
また、食品を生産するためには、どうしても「greehouse gas emittions (温室効果ガスの排出)」が避けられないが、食品廃棄をゼロにすることができるなら、温室効果ガスの排出量は 8− 10%低下すると考えられている。
2.Irish horticultural sector:Irelandの園芸セクターの現状
「UniversalCollege Dublin」の Dolorres O' Riordan教授が Ireland議会の「Oireachtas Agricultural Committee (オアラクタス農業委員会)」に語ったところによると、Irelandの園芸セクター(農産物生産・販売業界)は、年間 €500million (約790億円)の売上を挙げているが、現在、多くの問題を抱えている。その代表的なものは次の 3点。
・input price inflation:物価上昇
・power dominance of buyers:バイヤー(スーパー)の権力支配
・impact of climate change:気候変動の影響
とくに、気候変動の影響に関しては深刻だ。この春は天候が悪くて種まきが遅れ、そのせいで生育期間が短縮された。加えて、6月に干ばつ、7月には大雨に見舞われた。この結果、穀物の品質はガタ落ちとなり、農家の収益 (margins)も農業の魅力(attaciveness)も低下した。
なお、「 Bord Bia Director of Horticulture」の Mr Mike Nearyによると、この数年でIrelandの園芸セクターに携わる生産者が
・ポテト生産者:1,400→300
・野菜生産者:1,400→400
と大幅に減少し、Leek (ネギ)に至っては、栽培している農家がたった 1件のみだ。
それでも、Irelandで園芸作物の生産に携わる人口は約7,000人で、その「downstream business (ダウンストリーム事業)」に関わる雇用者は11,000人以上。
3.More growers and more consumption:もっと生産者を、もっと消費を
さて、Irelandが国外から輸入する「fruit and vegetables」は、金額にして年間 €850m相当分。もちろん、その中には、Irelandで栽培できないバナナやオレンジも含まれるが、努力次第で、自国で生産量を伸ばすことができる農産物 (crops)、ポテト、リンゴなども含まれている。つまりは、他国に頼っているのだ。
とくに、Irelandはリンゴの栽培に適しているのにもかかわらず、その生産量は需要の3-4%を占めるだけで、毎年約65,000トンのリンゴを輸入している状況だ。
なお、当局は「fruit and vegetables」の摂取量の目安として、400g/dayを推奨しているが、現実の摂取量は、これよりもはるかに低いレベルだ。このため「Bord Bio」は、新鮮で品質の高い「フルーツ・野菜」の消費をもっと高めるようと、現在
・yonger demographics:若ものの人口統計
・millennial cohort:ミレニアル・コホート(青春期の健康・発達調査)
に取り組んでいるという。
おわりに:それにしても、近ごろの食品の値上がりは異常だ。便乗値上げもあると聞く。庶民にとって、それは、ほとほと困る。泣き寝入りを余儀なくされているのは、消費者あるいは農家だろうか。これまで幾度となく流通改革が叫ばれては来たものの、弱い立場の陣営の懐(ふところ)具合は一向に改善しない。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)
誘い・頼みを断りきれず:二つ返事で「いいよ!」と言っていると ― (RTE-News, Sep 15, 2023)
信号機のない交差点や踏切をクルマで渡るとき、だれでも、一旦停まって、少なくとも1、2度は左右を確認しているはずだ。また、それがドライバーの義務でもある。
それなのに、友達の誘い・頼みには、よく考えもせずに、二つ返事で引き受けてしまう。後(あと)になって、はたと気づく。あれもこれも「いいよ」と言ったお陰でスケジュールがつまって身動きがとれない自分に。「しまった、こんちくしょう」と地団駄を踏んで悔やんでみても、もう遅い。心理学では、これを「Yes...Damn Effect (いいよ...こんちくしょうめ効果)」と呼ぶそうだ。
今、自分の目の前に立っている相手の気分を損ねないようにとの思いが無意識のうちに働くせいか、あるいは、「まだ先のはなしだから」、「そんなに時間が掛からないだろう」などをたかをくくって、「いいよ (yes)」と言ってしまう。つまりは、「時間の見通しの罠(time trap)」にはまってしまっているのだ。
そこで、UCC(アイルランド国立大学コーク校)で「Applied psycholigy (応用心理学)」を研究する Dr Anna Navin Youngが、どうすれば軽々な約束 (commitment)を回避できるかについて、以下に解説する。
1.Recognise your time habits:時間見通しの自分のクセを知る
なによりもまず (First and foremost)、時間見通しの自分のクセを知ることだ。これまで、どんなときに、どんな相手に、ついうっかり「いいよ」と言って、後で悔やんだのか。それは、本当に頼みを断りきれない相手だったのか。今一度、振り返ってみることだ。
頼み・誘いを受けると、そのことに自分の時間が取られてしまう。実際のところ、その頼み・誘いが「実り多く、満足できるもの (productive and fulfilled)であったのか、と反省することが大切なのだ。
このように、自分の行動を時系列的に振り返ると、自分の「time habit (時間の使い方のクセ)」が明らかになってくる。
2.Don't be so optimistic:あまりに楽観的にならないこと
食事・パーティーに誘われたり、仕事を頼まれると、その時点では、たかだか 1、2時間で終わるだろうと思っても、実際には、それ以上あるいは予定時間をはるかに超過することさえある。これが心理学で「plannning fallacy (計画の誤謬(ごびゅう))」と呼ばれる、人間の陥りやすい「時間の見積もりの誤算」だ。
この「cognitive baias (認知バイアス)」によるミスを避けるためには、計画時に「buffer time (余裕時間)」を設けることだ。たとえば、仕事が2時間で完了すると思えても、それに 15- 20分の余裕時間をプラスしておくと、仕事にも、気持ちの上でも余裕が生まれる。
3.Pause before saying yes:「いいよ」と言う前にちょっと考えよう
・どうせ、ずっと先のこと
・今、「いいよ」と言った方が気が楽だ
・引き受けた頼み・誘いについて、あれこれと考えることも楽しいではないか
などと勝手に考えて、「いいよ」を口に出していると、後日、その結果がとんでもない重荷となって自分にのしかかる。
だから、何事につけ、自分の意思表示を相手に示すときは、「pause (ちょっとの時間的な間)」をおくに限る。また、これを「time habit」にすることだ。
また、「Time Smart」の著者 Dr Ashley Whiliansによると、
・来週、忙しくなるかどうかを着実に判断できる人は、今、忙しいことを判断できる人だ。
つまり、今日のスケジュールに、急きょ、予定をねじ込むのが無理なときは、来週だって無理だと心得た方がいいのだ。
4.Weigh up commitments against values and priorities:価値判断と優先度を考えよ
頼みごとあるいは誘いを受けたら、ひとまず「pause (間)」を入れる。その間に、「our values and priorities (自分の価値判断と優先順位)」に照らして、これを自分のスケジュールに入れるべきかを考える。
相手に「NO」と言って断る方が、自分の価値観と優先順位にかなっていることだってあるのだ。また、その方が、余計なことに関わらずに済むため、夜ぐっすり眠れることになる。
おわりに:友達の頼み・誘いを無理をしてまで承諾すべきか、あるいは断るべきか。これは難しい問題だ。結局、その答えは、過去の「いいよ」にある。その結果、どうだったか、よくよく考えてみることだ。同じような失敗を重ねてはいけない。
(写真は添付のRTE-Newsから引用)