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プラスチックがなくては、医療もクルマも大打撃!:それはなぜ? (RTE-News, Oct 13, 2023)

For the last 80 years we have grown to rely on petroleum-based plastics not only for conveniences but for essentials as well. Photo: Getty Images

1.Plastics(プラスチック)とは

 プラスチック (plastic)が英語の文献にはじめて現われたのは1632年。この語はギリシャ語「plastikos」に由来し、当初はギリシャ語の原義の「可塑性」すなわち「やわらかくて色々な形にできる性状の」という意味の形容詞として用いられた。

 

 それが、現在のフェノール樹脂「プラスチック」として使われるようになったのは、ベルギー生まれの科学者「Leo Baekeland( レオ・ベークランド) [1863-1944]」が「Bakelite(ベークライト)」を発明し、これが文献上で「plastic」と記されたことにある。その後、各種の「synthetic compounds (合成樹脂)」が誕生したが、それらは、みな「plastics」と呼ばれた。

 

 今では、スーパー、病院をはじめ、どこに行っても、プラスチック素材が目に入る。それもそのはず、プラスチックは世界で年間約4億トンに達するほどの膨大な量が生産されているからだ。

 

2.Synthtic compounds (合成樹脂)の歴史

 産業革命 (Industrial Revolution)の時代(およそ1760- 1860年)が終盤にかかると、「natural resources (天然資源)」の枯渇の兆候が見え隠れするようになる。

 森林伐採が進んで森は消え、装飾品素材の「ivory (象牙)」、「tortoiseshell (ベッコウ)」なども手に入り難くなった。

 

 1867年に刊行された「The New Times」の記事には、Ceylon (セイロン) (現 Sri Lanka」のゾウと言えども、このまま密漁 (poaching)が横行し、過剰ハンティングが続くなら、ゾウは絶滅してしまいかねない、との記事が載(の)ったのだ。つまりは、ペンケース、クシ、ビリヤード・ボールなどの高級素材として長年使われてきた「ivory (象牙)」が容易に手に入らなくなるという内容だった。

 

 このような状況にあって、危機感を抱いた産業界は、象牙の代替物 (alternatives)探しにやっきになった。

 

2.Celluroid (セルロイド)

 セルロイドは、植物のセルロースを主原料として、1840年代につくられた「semi-synthetic plastic (半合成プラスチック)」だった。

 この「imitating ivory (象牙のまがいもの)」は象牙よりも安価で、用途も多岐に及んだ。とにかく、セルロイドは木材のように水を吸うこともなく、金属のように腐食することもなかったのだ。このため、人形・おもちゃ、メガネのフレーム、写真フィルムなどの素材として、その需要は爆発的に高まる。

 

 ただ残念なことに、セルロイドには大きな欠点 (downsides)があった。それは「flammability(燃えやすいこと)」。このため、やがて「fully syntheti plastics (全合成プラスチック)」が登場すると、すぐに、その主役の座を追われてしまう。

 

3.Petroleum-based plastics (石油系プラスチック)

 ポリエチレン (polyethylene)は 1898年、ナイロン (nylon)は 1955年に発明された。この二つの石油系プラスチックはWWIIの勃発によって、需要も用途も急速に伸びる。とくに、デュポン社のナイロン・ストッキングは一大ブームを起こしたものの、ナイロンはストッキングの素材にとどまらず、戦時下ではパラシュート、ロープ、ヘルメット・ライナーの素材として大いに利用されたのだ。

 さらにアクリル樹脂 (acrylic plastics)として知られる「Plexiglass (プレキシグラス)」は、透明性および強度に優れ、軽量であるため航空機の窓に使われている。

Less than a third of Ireland's plastic packaging waste is being recycled

4.Medical application (プラスチック医療品)

 プラスチックが医療分野に普及した理由の一つは、

 

・Able to undergo rigorous disinfection without any alteration of its properties. (製品に影響を与えることなく、徹底した消毒が可能)

・Be free from contamination or moisture degradation. (汚染されることも湿気劣化の恐れもない)  

 

ことにある。このため、

 

・syringes:注射器

・surgical gloves:外科手袋

・containers for medicines and blood samples:医薬品・血液サンプルコンテナ

・medical PPE:医療装備品

 

などの素材に広く利用されている。

 

5.Car parts (クルマ用プラスチック部品)

 軽量 (light-weight)で耐久性のある (durable) プラスチックは

 

・steering wheel:ハンドル

・fenders:フェンダー

 

をはじめ、多くの箇所に使われていて、クルマ全体の軽量化に欠かせない素材だ。この軽量化によってクルマの燃費が上がり、CO2排出量の削減に役立っていると、Dublin City Universityの Dr Jennie O Leoughlinは述べる。

 

 なお、USの EPA (環境保護庁)によると、クルマの CO2排出量は2004年から2021年にかけて 23%も減少したという。

 

6.Plastic inslation and packaging(プラスチック断熱材とプラスチック包装)

 家屋や商業ビルの建築の際にプラスチック断熱材を多用することによって、エネルギー効率が上がるとともに、エネルギーコストが抑えられるようになった。

 また、食品用プラスチック包装は、生鮮食品の鮮度を保ち、食品廃棄 (food waste)の減少に役立っている。

 

 地球温暖化対策に取り組む「Project Drowdown」は、次のように述べる。

 

・Reducing food waste is 15 times more important than recycling in reducing humanity’s carbon footprint.

 [ 人類が温効果ガスを削減する上で、食品廃棄量を減らすことはリサイクルよりも15倍重要。]

 

7.Bio-based plastic (バイオプラスチック)

 プラスチックが現代社会に多大な恩恵を与えたことは事実だ。しかし、同時に、プラスチックが自然環境に与えた負の影響にも計り知れないものがある。

 OECE (経済協力開発機構)の調査によると、プラスチックの CO2排出量のうち、90%は化石燃料 (fossile fuels)から製造されるときのもので、残る 10%は使用済みプラスチックの焼却時に発生するものだという。

 したがって、もし、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を必要としないプラスチックが製造できれば、CO2排出量は激減することになる。

 

 現在、「more sustainable future」をめざし、

 

・durable and/or compostable plastics (耐久性・生分解プラスチック) 

 

の開発が、Avantium、 BASFなどの企業によって進められているとか。

 

おわりに:プラスチックが有用で不可欠なものであることはわかった。しかし、プラスチック・ゴミの問題は深刻だ。海岸 (ときに河川敷や藪のなか) に無造作に捨てられている危険な医療廃棄物、海洋にあふれるマイクロ・プラスチックは、いったい誰が管理し、どのようにして、この問題に取り組んだら良いのだろうか。今もって、解決の糸口・光がまったく見えていない。

 

               (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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