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もっとハートを大切に!:知っていても忘れがちな心臓疾患の予防 (RTE-News, Sep 29, 2023)

Heart Health on The Ray D'Arcy Show

 ガン (cancers)が、暗闇に潜(ひそ)んで銃口を向ける冷血な暗殺者なら、心臓疾患(heart diseases)は、さしずめ、無慈悲にも、不特定多数に向けて悪魔によって放たれた殺し屋・刺客だ。死因別でみると、日本では、ガンに次いで多い病気だ。年間およそ 20万人 (2016年統計) が死亡している。

 

 Ireland (人口約500万人) でも心臓疾患で死亡する人は年間 9,000人と深刻だ。しかし、「The Mater Private Network's Director of Cardiology (マーター私立病院心臓病学科長)」Robert Byrne教授によると、心臓疾患の 70− 80%は「preventable (予防可能)」。残る 20− 30%の要因は、「genetic (遺伝性)」にある。

 

 なお、「heart attack (心臓発作)」の多くは「abrupt occlusion (冠動脈閉塞)」が原因だ。けれども、近年、「stent (血管拡張器具ステント)」を使った革新的な治療が開発されたお陰で、心臓発作の死亡率は激減した。現在、救急窓口に担ぎ込まれた患者の生存率は 94− 95%に達するとか。

 ただし、心臓疾患の予防対策が遅れていて、それこそが問題だ。心臓疾患を未然に防ぐためには、次の 3点が重要になる。

 

1.Stop smoking:タバコを止(や)める

 タバコを吸うと動脈硬化が進み、虚血性心疾患 (ischemic heart disease)を誘発するリスクが高くなることは、40年以上も前から知られていたことだ。その専門家の指摘を無視して、未だにタバコを吸い続ける人は少なくない。

 とにかく、タバコは血液をドロドロにしてしまう。これに加えてコレステロールが高いとくれば、

 

” It can be the straw that breaks the camel's back.”

[ さすがの免疫力も、力が尽きる寸前に追い込まれてしまう。]

2.Moderate exercise:中程度の運動を

 

“ Listen, I'm rushing about the whole time.”

[ ねぇ、聞いて聞いて、私、四六時中、バタバタしているの。]

 

ところが、日中、忙しくからだを動かしくいているからと言って、運動したことにはならない。軽くからだを動かした (mild exercise)だけでは、「To generate the elevated heart rate (心拍数の上昇)」の効果が認められないのだ。心臓疾患を防ぐためには、

 

”It needs to be enough to get up a light sweat.”

[ 軽く汗ばむ程度の運動が必要なのだ。]

 

そうでない運動は、ただ、からだを動かしていることになる。少なくとも、

 

”Getting 30 minutes of exercise five days a week"

[ 週5日は 30分の運動 (すなわち週当たり 150分の運動)をすること。]

 

もちろん、運動量がその倍なら、なおさら結構だ。

 

3.Mediterranean diet:地中海式食生活を

 健全な食生活も大切な予防ファクターだ。まずは、ハム、サラミ、ソーセージなどの「processed foods (加工食品)」をできるだけ避けて、「Medeterranean diet (地中海式食生活)」を取り入れることだ。おすすめの食品は

 

・fresh fruit and vegetables:新鮮なフルーツ・野菜

・white meat:鶏肉・豚肉などの白肉

・fish:青魚

・olive oil:オリーブオイル

・seeds and nuts:ナッツ類

・high fiber carbohydrates:繊維質の多い炭水化物 (全粒粉パン)

4.Health checks:健康チェック

 40歳を過ぎた人は、定期的に健康診断を受けて、平常時の血圧、コレステロールの値を知っておくこと。そして、もしも異常な値が計測されたなら、その原因を考えて、手遅れにならないうちに、適切な対策をとることだ。

 

おわりに:油断すると、目に見えない「敵」に取り憑(つ)かれ、あっけなく病気にされて、あっけなく死にかねない。しかし、この「敵」を駆逐するのは容易なことではない。これは、だれでも知っていることだが、だれでも、忘れていることでもある。

 

     (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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だれも言ってはいけない︰「電子タバコが無害」だなんて! (RTE-News, Sep 15, 2023)

The RCPI said chronic exposure to nicotine in the developing brain can lead to cognitive defects

 今では、若い女子もクルマを運転中、口にくわえている「erectronic cigarette (電子タバコ)」。これを英語では、

 

・e-cigarette

・vape (ヴェイプ、ベイプ)

・heated tobacco (加熱式タバコ)

 

とも呼んで、まるでバブルガムを買うように、カラーやフレーバーなどの好みに合わせて、「disposabale vapes (使い捨て電子タバコ)を選択するのが若もののファッションとなった。また、近年、UKでは、これを愛好する若ものが爆発的に急増し、昨年の使用者数は前年度の 9倍にのぼった。

 

 ネットで「電子タバコ」を検索すると、

 

・日本で販売されている電子タバコは無害、とか

・肺に煙を入れても大丈夫

 

などとの記事があふれている。その記事を書き込みした人物のほとんどは、もちろん、医学の専門家でもなく、電子タバコ健康被害に携(たずさ)わる研究者でもない。そもそも、「無害」と断定できる明確な医学的根拠 (evidence)は、この世で存在しないのだ。事、健康に関わることだけに、これは、あまりにも無責任な言動だ。

 

 ただし、これまで有効な禁煙対策を探しあぐねていた、一部の医学関係者が、紙巻きタバコ (cigarette)の禁煙療法の一環として、電子タバコをすすめることがあったことは事実だ。

 では、その医学的な選択は正しかったのか、あるいは禁煙に役立ったのか。結論から言って、それは「NO」。

 

 表題のRETの「article」は、Ireland保健省の健康サービス機関「The Health Service Exective (HSE)」の報道官 Dr Paul Kavanaghが、最新の医療情報をもとに「電子タバコの健康上のリスク」についてまとめたもので、医学的に極めて信頼度の高い内容だ。

Are Our Kids Addicted To Vaping?

1.What is vape?:ヴェイプ、ベップ、ベープとはなんだ

 

 電子タバコとは、ニコチン混入の溶剤をバッテリー式加熱装置で「aerosel (エアロゾル)」に気化させて、これを吸い込むタバコだ。その原理は、蚊取り器の「ベープマット」と同じ。ただし、電子タバコの「Vape」は「ベープマット」と違って、その「plume (プルーム)に含まれるのは、



・ultrafine particles:超微粒子

・volatile organic compounds:揮発性有機化合物 

・cancer-causing chemicals:発ガン性物質

・heavy metals:(有害な)重金属

 

2.Are there particular health concerns for young people?:若ものに特有の健康リスクがあるって?

 

 2020年に、Ireland政府の健康問題に関する研究機関「The Health Research Board (健康研究委員会, HRB)」が「電子タバコ健康被害」について調査した「evidence review (医学的検証レビュー)」によると、電子タバコのリスクとして

 

・poisoning:中毒

・burning:やけど

・lung injurary:肺損傷

・exacerbation of asthma:ぜん息の悪化

 

などの健康被害があり、さらに悪いことに「carcinogens (発ガン性物質)」に満ちていることだった。

 なかでも、電子タバコのニコチンは、脳の発達段階にある青少年にとって極めて依存性の高い化学物質 (addictive chemials)だ。これを吸い続けていると、

 

・developing brain:脳の発達

・impulsive control:衝動制御

・concentraion:集中力

・mood disorders:気分障害

 

に支障をきたす。つまりは、脳が十分に発達せず、情動(怒り)のコントロールができず、集中力が続かず、ふさぎ込んだかと思うと、はしゃいでみたりのメチャクチャな人間になりかねない。

 

 さらに、電子タバコを吸っている青少年は、その後、紙巻きタバコにも手を出す確率が、電子タバコを吸わない人に比べて3倍から 5倍。電子タバコが禁煙に役立つどころか、むしろ「両刀使い、二刀流」を招いただけだ。

3.Is vaping worse than smoking?:電子タバコは紙巻きよりも健康に悪いか

 

” Compared to cigarettes,vaping may be less harmful, but that does not mean that it is harm-free.”

[ 紙巻きタバコに比較すると、おそらく健康被害は少ない。しかし、これは、電子タバコが無害であるということではない。]

 

“ Here’s a product that - when used exactly as the manufacturers intend them to be used - kills one in two people. People can expect to lose, on average, 10 years of life if they’ve been smoking across their life. 100 people die each week from smoking in Ireland, 1,000 people are hospitalised. So, to say that something is not as dangerous or not as harmful as smoking? That’s an incredibly low bar.”

 

[ メーカーの言うことをまともに聞いて電子タバコを吸っていると、2人に 1人の確率で死んでしまう製品がある。電子タバコを生涯手放せない人は、平均して10年寿命を縮めている。Ireland (人口約500万人)では、この電子タバコが原因で死亡する人は、週当たり100人、入院する人は週当たり1,000人にのぼる。さて、紙巻きタバコが電子タバコほど危険ではないとか、健康被害が少ないだって?そんなことを言う人には、信じがたいほど、電子タバコのリスクを低めようとする魂胆がある。]

 

” The ‘not as harmful as cigarette’ message has perhaps distorted people’s risk perception around e-cigarette.”

[(電子タバコの製造・販売メーカーあるいは関係者が) 「紙巻きタバコほど有害ではない」と言い立てたせいで、おそらく、電子タバコのリスクに対する人々の受け止め方がゆがめられてしまった。

Should Disposable Vapes Be Banned?

4.What are the lon-term effects?:長い間、これを吸っているとどうなるか

 

 現時点で (at time of writing)、医療専門家は、電子タバコの長期的な健康被害について十分な情報を得ていない。その原因の一つは、電子タバコが世に出てから、たかだか15年しか経っていないことにある。

 日本でも、「現段階で健康への長期的な影響について予測することは難しい状況」(国立がん研究センターHP)とされる。

 

 しかし、Dr Kavanaghの考えは違う。

 電子タバコを吸っている人は、今すぐ止めたほうがいい。もたもたしていると、「nicotine addicton(ニコチン依存症)」に陥ってしまう。

 これまで、電子タバコについて「complrehensively and robustly (包括的かつ確実に)」理解するのに数十年の歳月を要した。今後、以下の健康被害リスク

 

・risk of respiratory disease:呼吸器疾患リスク

・risk of cardiovascular disease:心血管疾患リスク

・risk of cancer:発ガンリスク

・risk or problem in pregnancy:妊娠中のニコチン障害リスク

 

の検証データを得るためには、さらに十年の調査・研究が必要になると考えられる。

 

5.Does vaping help people to quit smoking?:電子タバコは禁煙に役立っているか

 

 電子タバコの「selling point (セールスポイント)」は、「紙巻きタバコの消費本数を減らす」または「禁煙に役立つ」であった。

 しかし、Dr Kavanaghによると、その謳(うた)い文句を証明する事実は存在しない。単に、それまでの喫煙者が目新しい電子タバコを手にして「dual users (二刀流)」になっただけだ。

 また、「nicotine replacement products (ニコチン代替薬)」にも注意が必要だ。なにしろ、Irelandでは、このニコチン代替薬が、当局の規制の対象となる「医薬品 (medical products)」として指定されていないため、だれでも薬局で自由に購入できる。使用に当たっては個人責任となる。

6.Tips for quitting:電子タバコをやめる(禁煙の)コツ

 電子タバコも紙巻きタバコもやめようと決心したなら、「licensed stop-smoking medicines (認可された禁煙薬)で治療する専門医に相談することだ。

 Dr Kvanaghによると、Ireland保健省のHSEは、禁煙希望者を対象にした無料の「nicotine replacement therapy free-0f-charge」を始めたとか。

 

おわりに:単なる噂(anecdotal evidence)をもっともらしく言う人は「何も悪いことをした覚えはない」とか「犯罪には当たらない」と、言い張る。しかし、ネット記事の内容をそのまま信じてしまう人がいることも事実だ。「有害」を「無害」と言いふらす人間は、「黒」を「白」と言い張る人間よりも質(たち)が悪く、「sin (道義上の罪)」が重い。

     (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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Halloween (ハローウィン):ケルトの亡霊が徘徊する夜! (RTE-News, Oct 23, 2023)

Luke Rix-Standing dares to investigate the creepiest night in the calendar.

1.「Halloween」とは

 ケルトの伝説・伝統が、これほど宗教 (キリスト教会)の権威拡大、商人の販売セール、それに単なる「飲み会」に利用されたものはない。それが「Halloween (ハローウィン)」だ。

 

 この「Halloween」は「All Hallow Even」すなわち「All Hallows Day」の前夜が語源。その「Hallow」とは「Holy people (聖人)」の意味。そして、歴史の長い間に「All」が省略され、「Hallow」と「Even」がくっついて「Halloween」となった。

2.ケルトの祭り「Samhain」と「Halloween

 しかし、その昔の「October 31」には、「All Hallow Even」などなかったのだ。8世紀の頃、第90代ローマ教皇「Pope Gregory Ⅲ (グレゴリー3世)」が「in a slyly successful attempt (悪知恵を働かせて)」、それまで4月に執り行なわれていた「All Martyrs' Day (殉教者デイ)」を無理やり「November 1」に変更し、「All Hollows Day」と名前まで変えた。

 

 その、目的は、民衆の間に広まっていた「ケルトの祭り」を教会行事に取り込んで、「Christianity (キリスト教)」の権威を高めることだった。

 

 その結果、民衆は、当時、絶対的な権力を誇っていた教会に対して、何の気兼ねをすることなく、「bonfires (焚き火)」を焚き、「costumes (仮装し)」、「どんちゃん騒ぎ (merriment)」ができるようになった。

 

 そもそも「Halloween」の原型は「an ancient Celtic festival (古代ケルトの祭り)」の「Samhain(サウィン祭)」だ。10月31日から11月 1日になることは、ケルトの暦(こよみ)で、夏から冬に変わることを表わし、夏の最終日の「October 31」には、「あの世」と「この世」の「veil [帳(とばり)] 」がほとんど消えかかる。そして、その帳(とばり)をすり抜けた亡霊が、この世に現われて、街を徘徊するのだと言う。

 そこで、人々は、亡霊に供物を捧げ (offering of food)、焚き火(bonfires)を焚いて、亡霊が家の中に入らないようにした。

 

 中世の England、そして16世紀前半の Scotland、Irelandでは、貧しい家庭の子どもたちが白いシーを頭にかぶったり、おばけの格好(guising)をして、歌を歌い、詩を朗読しながら裕福な家を「門付(かどづ)け」し、「soul cakes」や「treat」をねだった。ただし、当時の「treat」としては、「fruit or nuts」が一般的だった。 もちろん、子どもたちが「trick or treat」などと叫ぶことはなかった。

 

3.「trick or treat」の呪文

 その後の 19世紀、Irelandでは「Potato Famine (ジャガイモ飢饉)」が起こり、大勢の Irishが大西洋を渡って北米大陸に逃れる。移民は、Irelandの文化、伝統、風習、そして「Halloween」までUSに持ち込んだ。

 

 現在、子どものだれもが口にするようになった「決り文句」の「trick or treat」は、奇妙なことに、北米大陸で生まれた。なんという驚き。活字になって世に現われたのは 1927年の Canadaの新聞が初出だった。

 やがて「Halloween」の子どもたちの様子が、USのマンガ「Peanuts」、「Snoopy」、「Donald Duck」に取り入れられ、そのマンガの中の子どもたちが唱える呪文のような「trick or treat」が一般大衆に広まった。

  

  そして、またまた奇妙なことが起こる。その「trick or treat」の呪文がUSからUKに逆輸入され、UKの子どもたちが「trick or treat」と叫んで、家々を回るようになった。しかし、子どもたちがドアをノックしても、Brits (イギリス人)は「po-faced (冷たく、そっけなかった)」。およそ半数の UKの大人たちは、居留守を決め込んで、子どもたちの「trick or treat」を無視したと言う。(イギリス人は冷酷?)

 

4.「Jack-O’-Lantern (ジャックの灯り)」

 さて、その「trick or treat」と一緒にUKに逆輸入されたものがある。「Halloween」のシンボルの「お化け顔したカボチャのランタン(pumpkin carving)」だ。

 その「lantern(ランタン)」には、Irelandの古い伝説(legend)が関係する。

 

 その昔、Irelandの片田舎に、人を騙(だま)すことに長(た)け、およそ悪いことしかしない、飲んだくれで、Stingy Jackと呼ばれる男がいた。この男は、devils (悪魔) を騙し、Satan (魔王)を騙して、たとえ死んでも地獄に落ちないように画策した。しかし、そうかと言って天国に行けるはずもなく、結局、死んだ後は、暗闇(くらやみ)をうろつく他なかった。飲んだくれの Jackは、Satan (魔王)から「last wish (最後の望み)」は何かと問われると、足元を照らす「小さな明かり」と答えてしまう。

 

 そこで、Satanは石炭の燃えカス一つをJackにくれてやる。Jackは、その辺にあった「turnip (カブ)」をくり抜いて、その中に、石炭の燃えカスを入れて、足元を照らしながら、あの世とこの世をうろつくようになったという。

 

 この話が古くから伝わり、Irelandでは、暗闇に奇妙な灯りが見えると、あれは「Jack-O’-Lantern (ジャックの灯り)」だと言うようになった。

 

 Irelandでは、10月31日の Halloweenの夜、だれもがカブをくり抜いて、その中に石炭の燃えカスやロウソクを入れ、「Jack-O’-Lantern」をつくっては、玄関先に置いて、魔除(まよ)けとした。

 

 ところが、Irishが北米大陸に移住してみると、その土地でカブは育たず、カボチャがたくさん採れた。そこで、カブの代用品として、カボチャをくり抜いて「悪魔除け」のランタンを作ったのだ。

5.「secularisation (世俗化)」

 こうして、ケルトの祭り「Samhain (サウィン祭)」と Irishの伝説・風習の魔除け「Jack-O’-Lantern」が、キリスト教徒に受け入れられた後に、大西洋を渡ってUSに根を下ろした。そのUSでは、おどろおどろしい風習の角(かど)がとれて丸くなり、さらに「commercialisation (コマーシャル化) 」と「secularisation (世俗化)」されて、現在の「Halloween」となった。

 現在の「Halloween」は、表向き (ostensibly) 子どものお祭だが、実際には大人たちが、これを巧みに利用して、デパート・スーパーの売上を伸ばしたり、飲み会やパーテイを開催するだけの一日となった。

 

    (写真は添付のRTE Newsから引用)

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頭がボーとして集中できない―コロナ後遺症:脳・肺に血栓が残る! (BBC-News, Aug 31, 2023)

Brain fog

 今さら言うまでもないことだが、中国武漢から世界中に広まったCovid (新型コロナ感染症)  は、恐ろしい病気だ。医者によって回復したと判断され、たとえ、退院しても、多くの感染者が後遺症に悩まされている。

 

 そこで、Oxford大学と Leicester大学の共同研究チームは、 Covidの後遺症、とくに頭の中にモヤがかかったようになる「Brain fog (ブレイン・フォグ)」について調査し、その結果を科学雑誌「Nature」に発表した。

 その調査結果によると、Covidに感染して入院した被験者1,837人のうち、約16%が、退院後の少なくとも半年間は、思考力、集中力、記憶力に支障を来していることが分かった。

 

 もちろん、比較的症状が軽く済んだ感染者であっても、類似の後遺症すなわち「Long Covid」の問題を抱えていた。

 

 Oxford大学の Paul Harrison教授によると、この「post-Covid Brain fog (ブレイン・フォグ後遺症)」を解明するためには

 

・predictors:予測因子

・possible mechanisms:推定される発症メカニズム

 

を明らかにすることが、「a key step (重要な研究ステップ)」となる。

 

また、Leicester大学の Chris Brightling教授は、 Covidの後遺症の原因を

 

” It’s a combination of someone’s health before, the acute event itself and what happens afterwards that lead on to physical and mental health consequences.”

[ それは、感染前の体調、Covid特有の急性感染、それに感染後に心とからだに与えた影響などが複合的に結びついたものだ。]

 

  なお、 Lancashire大学の専任講師 Dr Simon Retfordも、Covid後遺症でひどい目にあった一人だ。

 Dr Retfordは、2020年10月 Covidに感染して、それが重症化した。2週間、昏睡状態(in a coma)に陥った。このとき、Dr Retfordの家族は、「最悪の事態の覚悟」とまで担当医から告げられるほどだった。

 

 その後、健康状態は、なんとか感染前の 60- 70%まで回復したものの、

 

・problems concentrating:集中力障害

・short-term memory loss:短期記憶損失

・losing his train of thought:思考ルートの欠如

 

に悩まされ続けている。

 

 Dr Retfordの語るところによると、

「昨年の5月に、大学のコース・リーダーを務めることになったが、頭はまるで動作の遅いコンピュータのようだった。」

 それまで警察の仕事もこなしていたが、今は、それもかなわない。

「なにしろ、仕事をし過ぎると、とても疲れを感じる。」

 今後、100%の完治は望めないにしても、Dr Retfordは前向きだ。

「私は、こうして、ここに居られるが、多くの人は、それさえ、できないでいるのだから.....。」

Simon and his dog

 なお、研究チームの Dr Max Taquetによると、「brain fog (ブレイン・フォグ)」、「fatigue (疲れ)」の原因は、脳あるいは肺に生じた「blood clots (血栓)」のせいだ。

「brain fog」を訴える患者の血液を調べると、血漿タンパクの

 

・fibrinogen:フィブリノゲン

・D-dimer:Dダイマ

 

の数値が異常に高かった。「fibrinogen」が脳内の血管に直接働いて血栓を形成していると考えられ、その一方で、「D-dimer」は肺内の血管に血栓をつくって、脳に十分な酸素を供給できないようにしている可能性がある。

 

 なお、D-dimaer値が高い人は、

 

・complained of extreme tiredness and being short of breath

  [ 極度の疲労と息切れを訴え」

・tended to have difficulty holding down a job

 [ 仕事を続けることが無理]

 

なことが多い。

 

おわりに:Paul Harrison教授らの Covid後遺症に関する疫学的な研究は、ようやく緒(しょ)に就いたばかりだ。一刻も早い、Covid後遺症の発症メカニズムの解明と、その予防・治療法の確立が求められている。

                  (写真は添付のBBC-Newsから引用) 

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坑廃水の重金属汚染地域で暮らす人:世界で23,000,000人! (BBC-News, Sep 22, 2023)

Aerial view of a tailings dam - embankment used to store by-products of mining operations, in this case of the extraction of copper- of the Minera Valle Central mining company, in Rancagua, Chile

 今から10万年以上もの大昔、スイスの洞窟をねぐらにしていた人類の祖先は、「primitive axes (ごく原始的な斧) 」を振るって、その洞窟の壁を削っては、ベンガラ(red paint)の原料の鉄鉱石 (ion ore)を手に入れていた。おそらく、これが地下資源開発の第一歩だったに違いない。

 その後、火打石 (flint)、青銅の原材料 Cuを求めて、世界中で地中が掘り返される。とくに、産業革命が始まると、エネルギー源の石炭や鋼材に欠かせないFe鉱石はじめ多種多様な鉱物資源が、前代未聞の規模で採掘されるようになった。

 

 しかし、鉱物資源は一度採掘されると、その後に空洞ができ、そこに地下水・雨水が溜まる。その水は鉱脈の重金属 (Cd, Pb, Hg, Cr, Znなど)を溶かし、有害な坑廃水(wastwater)となって、永久に流れ続ける。まさに、坑廃水は

 

・humankind's earliest and most persistent form of environmental contamination

[人類最古の、永遠に続く環境汚染]

 

 そして、近年、Li電池の需要拡大と電化製品の普及 (electrification)に伴って、リチウム Liなどのレアメタルや銅 Cuの資源開発が盛んになった。人体に有害な重金属を高濃度に含む大量の汚染水は、ほんの一刻も休むことなく、とめどなく環境に流れ出す。

Waste leaks downstream after a dam partially fails at a mine in Romania

 さて、Lincoln大学の Mark Macklin教授らの研究チームは、現在、世界各地で稼働を続ける金属鉱山22,609箇所、既に採掘を終えた廃鉱 (abandoned metal mines)159,735箇所から流れ出る坑廃水の実態を調査し、その結果をまとめて科学雑誌「Science」に発表した。

 

 解析に当たっては、各国の政府、鉱山会社、研究機関が公表したデータを使用した。鉱山分布や汚染リスクの高い河川域をマップに示すとともに、坑廃水流出汚染に関するシミュレーションモデルに基づいて、解析したところ、

 

・旧鉱山跡地から流れ出る坑廃水「負の遺産(legacy)」が数百万人の健康を脅かしている

・坑廃水に含まれる重金属は、鉱山周辺の土壌や、河川の中洲などの「flood-plains(氾濫原)に濃縮された重金属が蓄積されている。

 そんな場所で

 

・agriculture:農業

・irrigation:灌漑

 

が行なわれている。

 Manchester大学の Jamie Woodward教授が指摘するように、flood-plains (氾濫原)は、「scilent pollution (密かに進行する環境汚染)」となっている。だから、この場所を酪農に使用してはならないと注意を促す。

A map of south eastern Australia showing where active and inactive metal mines are located. There is a large cluster around Melbourne in the state of Victoria and also south west of Sydney in New South Wales. The majority of them are inactive.

おわりに:工場や鉱山跡地から止めどもなく流れ出る工業排水や坑廃水には、有害な物質が含まれていることが多い。産業が生み出したこれらの「real nasties (やっかい物)」の有害物質を、大量の水で希釈して川や海に流すなら問題なしとする水質基準法は、このままで良いのだろうか。極めて疑問だ。有害物質を除去する技術開発、モニタリング・罰則の強化が必要なことは言うまでもない。

   (写真は添付のBBC-Newsから引用)

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体内時計の「チックタック」:遺伝子レベルの解析で分かったこと! (RTE-News, Sep 1, 2023)

 

How can isolated human beings keep regular track of time, even when they're disconnected from their surrounding environment? Photo: Getty Images

 スペインの登山家  Ms Beatriz Flamini (50歳)が、グラナダの洞窟から姿を現わしたのは今年2023年 4月14日。その洞窟に入って500日目のことだった。もちろん世界最長の滞在記録。その経験談を聞かれた Ms Flaminiは、洞窟に入って 65日目に、すべての時間感覚を失った、と答えたという。しかし、本人が語ったように、本当に 65日目であったのかは定かでない。

 

 また、1962年、フランスの洞窟探検家 Mr Michel Siffeが、イタリアの「スカラソン洞窟 (Scarasson Chasm)」で 58日間を過ごした。しかし、本人は、洞窟で過ごした日数は 33日と思い込んでいたという。もちろん、どちらの場合も、洞窟に時計を持ち込まない、単独滞在だった。

 

 人間のからだには、体内時計が備わっていて、暗闇でも時間を感じることはできる。ただし、置かれた環境によって、わずかながら、その時計にズレが生じることが知られている。

 体内時計は人間に限らず、地球上のすべての生物が有する特別な時間機能だ。いったい、その時計は、どのような仕組みで「概日リズムリズム (平均 24.2周期)」をつくりだしているのだろうか。

The A to Zzzzz of Sleep | Brainstorm

 この疑問の解明に、Universität Wien (ウイーン大学)の研究者 Mr Audrey Matが挑戦する。以下は、Mr Audreyらの研究グループが科学雑誌「Conversation」に発表した論文の要約版だ。

 

1.The tick of life's clocks(体内時計の「チックタック」)

 たとえ光の届かない暗闇の中でも、体内時計は「時」を刻み続け、

 

・sleep/wake cycle:睡眠・覚醒サイクル

・body temperature:体温調整

・hormones:ホルモン分泌

・metabolism:新陳代謝(メタボリズム)

・cardiovascular system:血液循環システム

 

は、もちろんのこと、からだの分子レベルの細胞から、からだ全体に至るまで、正常な機能の維持に欠かせないリズムをつくりだしている。

 

 もちろん、体内時計には負の側面もあり、夜になるとぜん息の発作を起こし、朝には脳卒中のリスクを高めるのも、この時計のせいだ。

 また、「shift work (交代勤務)」によって概日リズムが壊れると、ガンの発症リスクが高まる可能性があるとも指摘されている。

 

 さらに、人間に寄生する「Trypanosoma brucei (ブルース・トリパノソーマ)」は、そのメタボリズムを人間の免疫系に同調させていることが知られている。ツェツェバエが媒介するこの寄生虫は「African trypanosomiasis (アフリカ・トリパノソーマ病HAT)」と呼ばれる「sleeping sickness (眠り病)」を起こしては、人間を死に追いやる恐ろしい原虫だ。

 

2.Genes: the great clockmakers(時を刻む:時計遺伝子)

 地球上の生物の「biological clock」は、太陽の周りを周回する地球と月の運動に同期している。このため、天体の運動・軌道システムが、生物の概日リズムの進化に影響を与えたことは明らかだ。しかし、その時計は、夜と昼の変化に関わらず、一定のリズムで動く仕組みを持っている。

Common fruit fly

 その「circudian click mechanism (垓日時計のメカニズム)」が初めて明らかにされたのは1970年代のこと。ショウジョウバエ (Drsophila)に時間のリズムをコントロールする時間遺伝子 (period genens)」が見つかったのだ。

 

 2つの異なる時計遺伝子が相互に「transcription and translation (転写・翻訳)」を繰り返すフィードバック・ループによって、約 24時間周期の時間を刻んでいた。

 遺伝子Aが遺伝子Bの発現 (expression)を促して、それが一定量に達すると、今度は遺伝子Bが遺伝子Aの発現を抑制する。遺伝子Aの発現量が減少すると、また遺伝子Bが遺伝子Aの発現を促すというサイクルだ。

 

 ただし、日中は、光受容体 (photoreceptor)の「Cryptochrome (クリプトクロム)」によって、時を刻む振動因子が調整されている。

 この他にも、体内時計の精度を上げるために、複雑な分子・神経ネットワークが働いているとされる。

 

 このように、体内時計は、2つの異なる遺伝子発現量の振動に基づいているものの、時計遺伝子 (clock genes)は、生物によって、みな違っている。

 これまで垓日リズムの研究は

 

・cyanobacteria:シアノバクテリア

・fungi:菌類

・plants:植物

・animals(humans):動物 (人類を含む)

 

など、「taxa groups (生物群)」ごとに進められている。

Two birds on a branch

 なお、生命体の「時計遺伝子 (time givers [zeitgebers])」は光、温度、餌などの環境変化に同期 (synchronise)していることも知られている。

 

3.An internal clock synchronised by the environment (体内時計の時間合わせ)

 時差ボケ(jet lag)で狂ったヒトの体内時計は、もとに戻す (re-synchronise)ことが可能だ。

  時計遺伝子はもちろん光を感知できない。しかし、網膜 (retina)が光を捉えると、その情報は、「reino-hypothalamic pathway (網膜視床下部路)」を通して、体内時計の中枢「視交叉上核」に直接伝えられる。その情報に基づいて、概日リズムの「clock protein (時計遺伝子タンパク質)」の産出が調整される。

 ただし、体内時計の1時間のズレを調整するためには、まる一日の時間が掛かる。

 

 なお、西の方角に移動すると、一日の時間が長くなるため、東の方角に移動するよりも体内時計の修正が楽になる。

 また、夜明けに光を浴びると体内時計が進み、日没に光を浴びると体内時計が遅れ、日中の光は なんの影響も及ぼさない。

 

4.Other times, other clocks (季節性、さまざまな生物時計)

 生命体の活動 (biological process)

 

・migration:渡り

・reproduction:繁殖

・hibernation:冬眠

・flowering of plants:花の開花

 

などは、垓日リズムの他に、季節性 (seasonality)によって変化する。しかし、生命体が、どのようにして、その季節性を感知しているのかについては、現在、十分に解明されていない。

 

 海洋生物の「ecosystem (生態系)」は、「solar cycles (夜と昼のサイクル)」と「lunar cycles (干潮と満潮のサイクル)」がつくりだす

 

・phase of the moon:月の満ち欠け

・light:光の強さ

・tides:潮の満ち引き

・seasons:季節

によって大きな影響を受けている。

 たとえば、corals (サンゴ)の産卵 (laying eggs)は、一年のごく短い時間に行われ、「Polychaete worm (エラコ)」などの海洋ワームは月に一度、真っ暗な海で一箇所に集まっては、「reproductive dance (繁殖ダンス)」パーティを行なう。そして死に絶える。

Victor6000 submersible during a campaign

 さらに、「mid-Atlanticridge (太平洋中央海嶺)」の深さ1,700mの「hypdrothermal vents (熱水噴出孔)」の周りに棲息する「mussel (イガイ)は、最も過酷な生存環境に関わらず、「生理学的な時間調整 (temporal coordination in physiology)」を行なっていることが明らかにされている。

Sampling and preservation of samples using the ROV

おわりに:科学者は、もっと謙虚な姿勢で自然を見つめなければならない。とくに医学に携わる人間は、病気の原因、その予防、ならびに治療が、それぞれ、まったく別の世界と考え、自分の専門分野に閉じこもりがちだ。たとえば、臨床医は、患者に対して治療薬を処方するだけで、病気の原因、予防について語ることは、ほとんどない。

  人々の要望と医学関係者の考えが完全にズレてしまっている。

 

     (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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蜘蛛、てんとう虫、カメムシ:なぜ、秋になると家の中にやって来る ? (RTE-News, Sep 11, 2023)

Coming soon to a bedroom near you? Photo: Charlie Goodall/ Shutterstock

 「クモ(蜘蛛)が巣をつくると雨」、「クモの巣に朝露がかかると晴れ」などと言い伝えられるが、Irelandでも、「クモが大きな巣をつくると、天気が崩れる」との「言い伝え(folklore)」があるという。

 さて、クモの気象予報の精度は別にして、季節が秋に移り変わる頃になると、クモが大きな巣をつくるようになるのは事実のようだ。

 

 クモに限らず、一般に、昆虫 (insects)は季節変化、とりわけ太陽の光の変化に敏感だ。秋が深まるにつれて、いそいそと冬に備えた準備に入る。

 

 多くの昆虫は、人げと同じく 2つの眼 (compound eyes [複眼])を持っているが、その他にも、頭のてっぺんに 3つの単眼 (ocelli)と呼ばれる小さな眼があり、視覚情報は、直接、脳に伝達される仕組みだ。その視覚情報は「internal clock (体内時計)」によって解析されて、季節変化の感知に役立てられる。

Insect Extinction

 なお、節足動物 (arthropods)の昆虫は、「cold blooded animal (冷血(変温)動物)」で、体温調整ができない。だから、昆虫が生き延びるためには、季節変化を正確に感知する必要があるのだ。

 さらに、昆虫が、厳しい冬を乗り越えるために進化させた方法は驚くべきものだった。代表的なものは次の 3通り。

 

・migration;季節移動 (ヒメアカタテハ、オオカバマダラ)

・antifreeze proteins:不凍タンパク質の生成 (オオクワガタ、カミキリムシ)

・diapause:休眠 (モンシロチョウ、カイコ、スズメバチ、クモ、カメムシ

 

 夏が終わると、昆虫によっては、その一生を終えるものもあるが、卵や蛹の状態で、あるいは成虫のまま物陰に隠れることもあれば、家の中に侵入して冬ごもりに入るものもある。これが、秋になると昆虫の数がめっきり減って、家屋にクモやカメムシテントウムシたちが押し寄せてくる理由だ。

Spiders in the house with Collie Ennis

 ただし、秋になると、その年最後の甘い花蜜を求めて忙しく飛び回る昆虫もいる。それが

 

・ivy bees (collectes hederae (コレテス・ヘデラエ [ハナバチの仲間] )

・wasps:スズメバチ

・bumblebees:マルハナバチ

 

 なお、雨が近づくと、羽アリが地中から飛び出すことをよく目にする。また、他の昆虫にも、雨の中で交尾 (mating)するものが多い。このようなことが、昆虫は天気の変化を知っているものと、人々に思い込ませている生物の生態だ。ただし、昆虫がお天気次第で、その行動を変えるといっても、それは昆虫によりけりだ。

 

“ I, for one, will be sticking to the Met Office for my weather forecasts.”

[ 私だったら、お天気の予報は、気象庁の情報にこだわるわ。]

 

おわりに:蜘蛛の巣を観察して天気の変化を予測することなど、めったにないが、カエルの鳴き声だったら、だれもが知っている。カエルが鳴いたら、雨が近いことはほぼ間違いない。

     (写真は添付のRTE-Newsから引用)

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