ヒロシのWorld NEWS

世界のニュースを日本語でお届け!

野草、雑草、薬草にハーブ:さて、その違いはどこに! (RTE-News, May 26, 2023)

 地球上のあらゆる生物は、この世で必要とされるものばかり。創造主によって生きる価値があると認められたからこそ、そこに存在するのでって、万が一、そのどれかが地球上から永遠に失われたなら、それまでの生態の一部として機能していた自然の歯車の一つが壊れることになり、生態系全体の崩壊を招きかねない。また、自然もずいぶんと寂しいものになる。

 雑草だってそうだ。

 

” To many people so-called weeds are unwanted, unwelcomed and untidy. They are relentless, prolific and bald. And they are unstoppable when it comes to invading our s;paces.”

[ 多くの人にとって、俗に雑草と呼ばれるものは、望まれず、喜ばれず、ただ雑然と生えている植物のこと。かれらは情け容赦なく、あっと言う間に数を増やし、かつ、したたかである。]

 

 少しでも日当たりの良い場所を空き地にしておくものなら、すぐに侵入し、その空き地を仲間で埋め尽くしてしまう。園芸家、農家にとっては、手ごわい敵以外の何ものでもない。

 しかし、Irelandの「The Minister for Heritage and Electoral Reform (文化遺産・選挙改革相)」Mr Malcolm Noonan (マルコム・ヌーナン) によると、

 

・All plants have value and some of the ones we call weeds are really important for nature.

・Yet many of the wildflowers we call weeds have incredible properties and they are the cornerstone of the biodiversity on which we all depend.

 

[ 全ての植物に価値があり、その中には、自然界にとって欠かせないものもある。]

[  さらに、雑草と呼ばれていても、野草の多くには信じがたいほど優れた効能があり、人間社会が頼りとする自然界の多様性の要(かなめ)となっている。]

 

そもそも、英語の「herb」の語源はラテン語「herba」。その意味は

・grass, green crops, herb

[ 草、野菜、薬草]

 

であり、1300年頃までは、野草と薬草のどちらも「herb (ハーブ)」と言っていたのだ。なお、現在、USでは、フランス語風に、単語のはじめの「h」を無音とし、ハーブを「アーブ」と発音する。

 

 さて、古くから有益な植物とされ、利用され、親しまれてきた雑草は次の 3種だ。

1.Nettle:イラクサ

 春先の山菜「アイコ」はイラクサ (ミヤマイラクサ)のこと。それが梅雨時になると葉っぱもそのトゲも固くなり、食用には適さなくなる。湿り気があって、肥沃な場所(とくに、リンと窒素に富む土壌)を好み、条件がよければ、草丈が 1mを超えるほど成長する。

 

1-1. Food

 洋の東西を問わず、古来より、春先の重要な食料源の一つだった。鉄分 Fe、カリウムKなどのミネラルに富み、ビタミン Cの含有量はほうれん草の約 4倍とも言われる。

 1845年、Irelandで起きた悲劇「The Famine (ジャガイモ飢饉)」の際、人々は、こぞって「Nettle (イラクサ)」に救いを求めた。余りにもこれを食べすぎたため、当時のIrishの肌が緑色に変わるほどだったと伝えられる。 

 

1-2. Fablic & dye

 数千年前から、イラクサから繊維を取り出しては、これを編んでシーツやテーブルクロスの布地として利用した。また、第二次大戦中、イラクサから「 a dark green dye (暗緑色の染料)」をつくり、カモフラージュ用のテントを染め上げたとされる。

 

1-3. Medicine

 イラクサから抽出される「chlorophyll (天然クロロフィル)」には抗酸化作用が期待される他、「anemie (貧血)」にも効くという。England南西部の Devonでは、リウマチ(rhyeumatism)の治療に使われたとの記録も残っている。

 なお、古代ローマ軍の戦士たちは、イラクサで手足を叩いて血のめぐりを良くし、体を温めて戦ったとか。

 

1-4. Habitat & Food for insects

 イラクサの花は目立たない、ごく小さな「catkin-like tendrils (花穂状の巻花)」だ。このイラクサをねぐらとし、これを餌にして命をつなぎとめている昆虫は 40種以上。

・aphides:アブラムシ

・ladybirds;テントウ虫

・blue tits:アオガラ

・Red admiral:ヨーロッパ・アカタテハ

などにとって、大事な餌であり、かつ食物連鎖の役目を担っている。

2.Ribwort Plantain:ヘラオオバコ

 このヘラオオバコは頑固で強引、したたかだ。目を離すとすぐに庭に侵入し、頑丈な根を張って、次々に仲間を増やす。葉の形が「long lance-shaped green leaves (細長い槍状)」で、茎の先端に「bullet-shaped brown flower (弾丸状の茶色の花)」が咲くと、その周りを「stamens (雄しべ)」がまるで「hallo(光輪)」のように取り囲む。Irelandでは「Slánlusanna」すなわち「Health Plant (医者いらずの植物)と呼ばれ、5,000年以上にわたって生き抜いてきた植物だ。

 

 その葉には「antibacterial and antihistamine properties (抗菌、抗ヒスタミン作用)」があり、イラクサのトゲや虫に刺されたとき、あるいはすり傷を負ったときに、ヘラオオバコの葉を摘み取ってよく洗ってから、口に噛んでシロップを出しておいて、これを傷口に当てると治療効果があるという。

 また、ヘラオオバコの花の部分をバターで揚げるとマッシュルームに似た味が楽しめるとか。

 

 もちろん

・birds:小鳥

・bees;ハチ

・hoverflies:ハナアブ

・moths:ガ

にとっても、ヘラオオバコは大変なごちそうだ。

3.Dandilion:タンポポ

 タンポポの花を虫眼鏡で見ると、たくさんの小さな「florets (小花)」から構成され、その一つひとつの花に花粉がついて「nector (花蜜)」がつまっていることが分かる。このため、タンポポの花をめがけて集まる昆虫は 93種を超える。

 タンポポは、古くから薬草として利用された植物の代表格だ。

3-1. Roots

 その根を煎じて飲むと、「biliary systems (胆道系)」、「liver conditions (肝臓障害)」に効くとされた。また、強い「diuretic (利尿作用)」がある。このため、子どもたちがタンポポを摘むと、その夜に「bet-wetting (寝小便)」するという言い伝えが、今でもEngland各地で残っている。

3-2. Flowers

 花には「mild analgesic effect (適度の鎮痛作用)」があるため「soothing potion (鎮痛剤)」として用いられ、また、サラダにして食卓にもあがった。

3-3. Leaves

 葉っぱを噛むと苦い。これは鉄分が多いためだ。

3-4. stalk

 タンポポで、唯一食べられない部分が、この茎の部分。茎をカットすると滲み出る「milk-like sap (白い乳液)」は、「warts (イボ)」とりに使われた。

 

 そこかしこに、かってに生えて、嫌われものの雑草。しかし

 

” They provide us with food,with medicine, and with a high and vital support for diversity which is the nature on which we all depend.”

[ 雑草は人間の食となり、医薬品となり、我々人間の全てが頼らざるを得ない自然の多様性を維持する上で無くてはならないものでもある。]

 

おわりに:「make to space for weeds (雑草にも生きるスペースを)」との主張にも一理ある。しかし、

 

タネツケバナ

オオイヌフグリ

ヒメオドリコソウ

カタバミ

・オランダミミナグサ

スズメノエンドウ

・スズメノカタビラ

タンポポ

・オオバコ

ドクダミ

・ススキ

の侵入を一度でも黙認するなら、あっと言う間に庭は敵に占拠され、それ以降は大変な戦いを余儀なくされる。園芸家なら誰でも知っていることだ。

 

 なお、「植物と文化との関わり」の歴史について興味がある方には、次の 2冊をすすめる。

 

・ロイ・ヴィッカリー編著、奥本裕昭 訳:イギリス植物民俗事典、八坂書房、2001

・Jekka Mcvicar: Jekka’s Complete Herb Book, Kyle Cathie Limited, 2009

 

                           (写真は添付のRTE-Newsから引用) 

www.rte.ie