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エヴェレスト「死のゾーン」で登山者の命を救う:仏教徒のシェルパ (RTE-News, Jun 2, 2023)

Nepal issued a record 478 permits for Everest during this year's March to May climbing season (stock image)

 なぜ、こうも人間は Everestに魅了されるのか。今年に入って、世界中から登山者が、この世界最高峰 (標高8,849m)に押しかけ、頂上付近は押すな押すなの行列ができるほどだ。(3月- 5月だけで、チベット政府が発行した登山許可証は478枚。)

 大金を支払って、どうにかベースキャンプにたどり着いた男女は、少々無理をしてでも頂上をきわめたいと願う。

 

 そんな中で事故は起きた。

 それまで、中国の登山家のシェルパを務めていた Gelje (ゲルジェ)は、Everest頂上付近で、ほとんど死にかけたマレーシアの登山家を発見する。その場所は、「death zone (死のゾーン)」に入った標高約 8,400mの「Balcony (バルコニー)」地点。酸素濃度は地上の約 1/3しかなく、氷点下30℃以下の厳しい稜線上の雪棚だ。男は、ロープにしがみつき、寒さで震えていたという。

 

 シェルパの Gelje (ゲルジェ)は、すぐに、ガイドを頼まれていた中国登山家に登頂を断念させ、仲間のシェルパの助けを借りて、その瀕死のマレーシア人の体を「sleeping mat」でくるんで、硬い氷で覆わた危険な岩場をロープで引きずったり、背負ったりしながら、約6時間掛けて標高差約 600mを下り、Camp Ⅲ (標高7,162m)地の「South Col (サウスコル)まで運んだ。

 

 その後、そのマレーシアの登山家は、ヘリコプターの「Rescue Long Line (救助ロングライン)」で吊り上げられて、ふもとのベースキャンプまで輸送され、無事、帰国したという。

 

 ネパール観光局の係官Bigyan Koiralaによると

 

・It is almost impossible to rescue climbers at that altitude. It is a very rare operation.

[ あのように高い稜線上で、遭難した登山者を救助するのは、ほとんど不可能。今回は、極めてまれなケースだ。]

 

 しかし、シェルパの Gelje (ゲルジェ)は、「a devout Buddhist( 敬虔な仏教徒)」だった。Gelje (ゲルジェ)は語る。

 

・Saving one life is more important than praying at the monastery.

[人の命を救うことは、僧院で念仏を唱えるよりも重要なことだ。]

 

 この春、Everestで命を落とした登山者は、すでに10人を数える ( 5月21日現在で)。原因は、滑落、雪崩、登山病などだ。その中には、経験豊かなシェルパの助言を無視して、強引に単独登頂を目指したオーストラリア人も含まれる。

 

おわりに:「なぜ、山に登るか」。決して「自慢するため」ではないと、言い切れる勇敢で聡明かつ純粋な心の山男が、今どき、いるだろうか。なによりも、キャンプ地に捨てられたゴミの山が「不純な登山者の心」を物語る。たとえ、山に登る体力と金銭と暇があっても、その心が地に落ちていては、多くの人々から崇められて来た「霊山」に登って、これを汚する資格などあるはずがない。

    (写真は添付のRTE Newsから引用)

www.rte.ie