この世に、優しいオオカミ (wolf)など存在しない。オオカミは、弱者・善人を見ると吠えて咬み付く獣だ。
さて、「wolf」の語源は、ラテン語「lupus」、ギリシャ語「lukos」に遡(さかのぼ)り、最終的にサンスクリット語の「vrka」にたどり着く。その原義は「(獲物の肉を)引き裂く獣)」の意。
人類(human)にとって狼は手強い相手だ。しかし、現在の「狼 (grey wolf [学術名: Canis lupus])、ハイイロオオカミ」よりも大型で、はるかに凶暴な狼が地球上に存在し、食物連鎖 (food chain)の頂点に立って、動物界に君臨したことがあった。
その名は「dire wolf (ダイアウルフ [学術名: Canis dirus])」。「dire」とは、「凶暴 (dreadful)」の意味だ。ただし、生息域はアメリカ大陸に限られ、生息期間は今から125,000- 12,000年前とされる。地球の最終氷期の末期に突如として絶滅した種(しゅ)だ。
Ludwig Maximilian大学の Dr Laurent Frantzらの研究チームは、「dire wolf」の化石サンプル (50,000- 12,900年前)の DNAを解析し、その絶滅のなぞに迫った。(研究結果の詳細は、科学雑誌「Nature」に発表。)
すると、驚くべき事実が明らかになった。「dire wolf」は解剖学上(anatomically)、「grey wolf」に類似しているが、遺伝子の違いは、人類とチンパンジーの違いに匹敵するほど、大きかった。
このことは、約20,000年前の一時期、「dire wolf」と「grey wolf」は、生息域を共有していたと考えられるが、両種の間では、まったく「interbreeding (交雑)」が起こらなかったことを意味する。
さらに、この超ヘビー級の狼「dire wolf」が、狩りの標的を、もっぱら「giant bison (ジャイアント・バイソン)」などの「large mammals (大型哺乳類)」に絞り込んだことが裏目に出たことも確かだ。
「giant bison」は「dire wolf」によって食い尽くされて絶滅した。しかし、やがて、主たる獲物を失った「dire wolf」もまた、絶滅の道を進まざるを得なくなったのだ。
おわりに:凶悪きわまるオオカミの末期は、こんなものだ。いくら吠え立てたところで、自然の理に反しては生存できない。歴史から学ぶべきことは多い。
(写真は添付のRTE Newsから引用)