不滅のPFASを攻略せよ:アキレス腱を攻めて、頭を切り落とせ! (BBC-Science, Aug 22, 2022)
人類が作りだしたPFAS (有機フッ素化合物)とは「poly-and perfluoralkyl substances (ポリフルオロアルキル物質)の略称。その種類は約12,000種以上とされる。いずれも、「forever chemiclas (永遠に不滅の化学物質)」と呼ばれるほど したたかで、自然界では分解されて消滅することはない。
しかも、
・make-up:化粧品
・pharmaceutical products :医薬品
・food packaging:食品包装
・non-stick cookware:フッ素加工なべ
・rain gear:雨具(レインコート)
・adhesives:接着剤
・paper:製紙
・paints:塗料
などに ふんだんに使用され、どの家庭にもPFASが入り込むようになった。
その結果、一部の河川に生息する魚や野生動物はもちろんのこと、地上に降る雨からも、微量ながらPFASが検出されるほど、自然界のPFAS汚染は深刻になった。
なお、PFASが人間の体内に吸収、蓄積されると、
・cancer:ガン
・birth defects:先天性欠損症
をはじめ、さまざまな重篤な健康障害を引き起こすことが知られている。
さて、では、これまで、PFASを含む日用品の廃棄処理は、どうなっていたのか。
唯一の処理法は「incineration (焼却)」だった。しかし、PFASが混入した日用品(everyday objects)を焼却処分するには「prohibitively expensive (途方もないほどの経費)」がかかる。それに、焼却施設の煙突から排出される煙に混じってPFASが大気に放出、拡散され、地域にとって 2次公害になりかねない。
そこで、Northwestern大学の Ms Brittany Trangらの研究チームが開発したPFAS破壊法は、驚くべきものだった。
その方法のカギは、石鹸や鎮痛剤の製造にも使われている、ごく一般的な水酸化ナトリウム (sodium hydroxide)」にあった。PFASは、カーボンとフッ素の原子が長い鎖状に結合し、その末端にカルボキシル基が結合した化学構造をとる。この末端部は「a group ofweaker charged oxygen atoms (比較的弱い電荷を帯びた官能基)」。ここがPFASのアキレス腱 (Achilles' heel)だった。水酸化ナトリウムの低温処理によってPFASを攻撃すると、さすがの不滅のPFASも頭をはねられて、無害な化学物質に変わる。ただし、現在のところ、この攻撃が可能なPFASは 10種に限定されるとか。
それでも、研究チームはあきらめない。『どんな強敵といえども、どこかに弱点(weakness)があるはずだ。』
なお、今後は、PFASで汚染された水道水をフィルター処理して、そのPFASを除去するとともに、これを破壊する方法を探る予定とか。
この研究結果について、「The Royal Society of Chemistry (英国王立化学会)」フェローの Dr Camilla Alexander-Whiteが、BBCに語ったところによると、
”This could be a breakthrough if it is low cost.”
[(本当に)この処理法が低コストなら、画期的な研究と言えるだろう。]
おわりに:だからと言って安心しては、ならない。かっての DDT汚染のように、PFASが全世界に拡散し、野生生物に取り込まれて、生物濃縮が始まっている。
(写真は添付のBBC-Newから引用)