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河川・湖の医薬品汚染:健康被害が現われるのは時間の問題か? (BBC-News, January 9, 2020)

Medicine bottle

 病気の治療に薬は欠かせない。それは分かる。しかし、日本全国の病院で処方される薬だけに限っても、年間に消費される薬の量は11兆円相当分(その額は、全国のコンビニ店総売上高とほぼ同じだ)。抗ガン剤、抗うつ剤、降圧剤に腰痛・膝痛の鎮痛剤、各種抗生物質などが売れ筋だが、薬の種類は数え切れないほど多い。

 なお、処方される薬は、使用されずに捨てられているものも少なくないという。お陰で薬局、製薬業界は大儲け。逆に、国の医療負担が増加する一方だ。

 人の体に入った薬は、その後どうなるか。医者・薬剤師はじめ医療関係者は考えたこともないのに違いない。病院から、そして一般家庭から大量の医薬品が下水道に流され、そこで、処理できずに、ほとんどが自然環境に流されているというのに。

 そもそも薬が、患者の体内に全て吸収されることなど、ありえない。それは排出物に混じって下水管を通り下水処理場に到達する。ここでは、主として微生物を使った汚水処理と塩素殺菌が行なわれ、その後、上澄み液が川に放流される。この一連の処理過程で、ごく一部の医薬品(薬剤)が分解されることもあるという。

 けれども、薬剤はあくまで医療目的で開発されたものだ。河川・湖、海に流出した薬剤が、自然界の生態系にどのような影響を与えるのかについては、まったく考慮されていない。また、下水処理施設で、下水中の医薬品を分解、浄化する工程は存在しない。

 このため、日本で1級河川として指定されている37の河川から、合成抗菌剤、抗生物質など各種の医薬成分が検出されている。『それは、とるに足らない微量だ』と一笑に付す行政・医療関係者がいたとすれば、レイチェル・カーソン (Rachel Carson)の著書を読み直した方が良い。たとえ、農薬 DDTなどの汚染物質が低濃度であっても、食物連鎖と生物濃縮によって生物の体内には数千万倍 (×10の7乗)に濃縮されることは、立証済みだ。

 さて、Scotland (人口約542万人)の病院で、治療を受ける患者数は、年間延べ約1億人。病院で処方される薬剤総額は、年間£18億 (約2,570億円)。薬剤には鎮痛剤からガンの治療薬まで含まれるという。

 そして、Scotlandでも日本と同じように、河川・湖から医薬成分が検出されるようになった。

 そこで「The One Breakthrough Partnership」は「greeer phermaceuticals (より環境に優しい薬剤)」を特定し、薬剤の環境汚染を抑えるためのプロジェクトを開始した。下水を、ウイスキーの蒸留過程で発生する副産物やバークに通して、下水に含まれる医薬成分を吸収させる研究にも取り組んでいる。

 現在のところ、河川・湖、海の薬剤汚染が人の健康被害のリスクにつながるとする確かな証拠は得られていない。しかし、北米の研究によると、薬剤汚染でオスの魚の生殖器官が異常を来したことが報告されている。 

 医薬品の種類が多いだけに、水生生物に与える、その複合的な影響は極めて複雑なものと推測される。さらに、自然界に流出した医薬成分が、果たして自然の力で分解、浄化できるものなのか、科学的な研究は始まったばかりだ。

おわりに:環境汚染、農薬汚染、公害は当局がもっとも嫌がる問題だ。長年にわたって玄米の重金属汚染データが公表されていないことが、それを裏付ける。河川の医薬品汚染データもしかりだ。また、新薬の開発に当たっては、環境に与える薬剤の環境評価が義務化されていない。もちろん、病院からは、大量の薬物がほとんど垂れ流し状態だ。

 ①当局の汚染データの隠蔽、②医薬品汚染に関する水質基準の不備、③医療関係者の環境汚染に対する無関心さが、河川・湖、海に生息する生物を脅かし、延いては、遠からず、人の健康被害に跳ね返ることは、目に見えている。

             (写真は添付のBBC Newsから引用)



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