UKの川で死んだカワウソに:高濃度の有害物質PFAS! (BBC-Science, Jan 25, 2022)
イギリスの作家「Kenneth Grahame (ケネス・グラーハム [1859-1932])」は、テムズ川周辺に住む動物たちが大好きだった。そして有名な「The Wind in the Willow (たのしい川べ)」を書き上げ、これを1908年に出版する。
しかし、その後、UKの河川は汚れに汚れた。川辺に生息する生き物は、食物連鎖で生物濃縮された「persitant chemicals (残留性化学物質)」に苦しめられ、命を落としている。
Cardiff大学の Ms Emily O'Rourkeらの研究グループが「Environmental Science & Tehnology」に発表した調査結果によると、UKの河川は「環境基準 (Enviromental Quality Standars)を超える PFAS (フッ素有機化合物)で汚染されて、2007- 09年に限っても、50頭のカワウソ (otters)の死体が確認され、いずれのカワウソの体内からも毒性の強いPFASが検出されているという。
化学物質PFASの「per- and polyfluoroalkyl substances (ペルフルオロアルキル化合物、ポリフルオロアルキル化合物)」は1940年代後半から
・waterproof clothing:防水加工の布地
・stain resistant products:焦げ付き、汚れのつかない台所製品
・fere resistants:難燃剤
・food packaging paper:食品(ジャンク・フード)の包み紙
などに使われ、近年は、いわゆる、防水・撥水スプレーや焦げ付かないフライ・ソースパンの製造に大量に使用されたのだ。
この毒性の強い化学物質PFASは「forever chemicals (自然界に 永遠に残る化学物質)」とも呼ばれ、Rachel L. Carson (レイチェル・カーソン)が告発した DDTと同じく、食物連鎖を通して、生物の体に数千万倍 (×10の 7乗)に濃縮されることもありえる。
その主な発生源は
・farmland sludge:農地の汚泥
・factory wastewater:工場排水
・landfill sites:埋立て処分場
であり、一般家庭の洗濯機、台所から排水溝を通って下水処理場 (sewage works)に流れるPFASも無視できない量だ。
しかし、下水処理場の「sewage sludge (下水汚泥)」に PFASが含まれていても、現在の設備と技術で、この毒性化学物質を除去することは不可能。当然のことながら、河川や海に流出して、これを汚染し続けることになる。
この毒性の強い PAFSが体内にとり込まれると、
・pregnancy complications:妊娠合併症
・liver disease:肝疾患
・cancer:ガン
・asthma:ぜん息
・thyroid disease:甲状腺疾患
などの発症リスクが高くなる。
このため、最近になって、Denmark政府はファースト・フード (ポテトチップスやハンバーガー)など」の包み紙 (food-packaging food)の使用を禁止した。
また、昨年20121年6月、Germany, Denmark, the Netherlands, Norwary, Swedenの各政府は、「The European Chemical Agency (欧州化学物質庁ECAH)」に対し、今後、化学物質PFASの使用を制限すると伝えた。
UKの河川に生息するカワウソ (otters)が死んでいく状況は、有害な化学物質の「environmental contamination (環境汚染)」が深刻なレベルに達していることを意味する。かわいそうなことに、カワウソが、そのリスクを人間に知らせる「sentinel species (センチネル種)」になっているというのだ。
おわりに:たとえ、ほんの一吹きの防水スプレーであっても、その中に含まれる PFASは決して分解されることなく、植物、プランクトン、魚、動物に濃縮され、やがては人間の体の中に蓄積される。全ての生物にとって「sub-lethal effect (死をまねきかねない影響)」を与える毒物は、たとえ、どんなに便利なものであっても、使わないことだ。
(写真は添付のRTE Newsから引用)