北のフェロー諸島：ヴァイキングが島を襲い､それ以降 占拠した！ (BBC-Science, Dec 16, 2021)
スコットランドの遥か北の海にあって、IcelandとNorwayとのほぼ中間に位置するのが「Faroe Islands (フェロー諸島)」。
一部の人の主張によれば、この群島 (archipelago)は、850AD頃、Vikingsが発見し、874ADに入植した土地だという。それまでは無人の島々だったと。その主張がまかりとおって、現在、フェロー諸島はデンマークの自治領。
しかし、これは嘘あるいは間違いだった。
中世の古文書によると、512- 530ADにかけて、Irelandの聖ブレンダン (St Brendan)が、仲間とともに大西洋を北上して島を発見し､「The Isles of the Blessed (神に祝福された島)」と命名した、とある。
さらに、825AD、僧Dicuil (ディクイル)が記述した文書には、隠者 (hermits)が北の ある島々に約100年間住み着いていた、とある。
それらの古文書に登場する島々が必ずしもフェロー諸島であるとは限らないし、フェロー諸島であるとの確たる証拠があるわけでなく、議論が続いてきた。
ところが、Columbia大学「The Lamont-Dohertt Earth Observatory (LDEO)」の Dr William D'Andreaらの研究グループは、Vikingおよびその子孫の主張をくつがえす決定的かつ科学的証拠を発見した。
１．島でヒツジを飼っていたケルト人
フェロー諸島の中の一つ「Eysturoy (エストゥロイ島)」の湖底に積もった堆積物から､「sheep faeces (ヒツジの糞)」が見つかった。これを放射年代測定法によって調べた結果、その年代は 492- 512AD (それ以前の370ADの可能性もあり)。
海賊ヴァイキングが船団を組んで北の海に進出するようになったのは、750- 820AD。したがって、ヴァイキングがフェロー諸島を占拠するおよそ350年も前に、この地では、ヒツジを飼って人が住んでいたことになる。
２．火山灰で覆われていたヒツジの生存痕跡
放射年代測定の正確さを裏付けるものがある。それは、877ADに島の火山が噴火し、ヒツジの糞は、そのときの火山灰の下に埋もれていたことだ。
なお、Aberdeen大学の Kevin Edwards教授らの研究チームは、フェロー諸島の「Sandoy (サンドイ島)」から「barley grains (大麦粒)」を発見し、それは、ヴァイキング占領に先立つ300- 500年前の作物であることを確かめている。
３．DNA解析で明らかになったヴァイキングの殺戮の歴史
フェロー諸島の住民の DNA解析を実施したところ､「paternal ancestry (父方の家系)」はヴァイキング (Scandinavians)で､「maternal ancestry (母方の家系)」はケルト系(British or Irish)であることが判明。つまり、かって、この島々をヴァイキングが占拠し、それまで住んでいたケルト系の女性に子どもを産ませたことは明白。これは、ヴァイキングが他の占領地でも繰り返した、おきまりの所業だった。(ケルトの男たちは、皆殺しにあったに違いない。）
フェロー諸島には、古い年代不詳の「Celtic grave markers (ケルトの墓標)」が点在し、ケルト系の地名が各地に残る。
以上の結果を踏まえて、Dr D'AndreaはBBC Newsの記者に次のように語ったという。
” We still really don’t know who the people were and why they chose to go to the Faroe Islands. But there are lots of pieces of information that lead us to believe it is very likely there was a population of people from the British isles.”
[ それでも、今もって、どんな人たちが、なぜ フェロー諸島にわざわざ向かったのかは不明。しかしながら、ブリテン島から多くのケルト人が(その北の島々に)渡って定住した可能性は極めて高い。それを裏付ける多くの情報(証拠)があるのだ。
おわりに：ヴァイキングが無人島を発見し、そこに住んだ。だから、ヴァイキングあるいはその子孫 (descendant)のものだとする理屈があやしくなってきた。
凶悪で残虐非道 (atrocious and cruel)のヴァイキングが島々を襲っては、住民の男たちを殺し、女･子ども、財産、土地を奪って、そこに住み着いたにすぎない。なんという残忍なヒト属 (Homo)か。
(写真は添付のBBC Newsから引用)
