「レスボス島民」か「レズビアン」か:ややっこしいのが「Lesbian」 (RTE-News, June 21, 2021)
オーストラリア人を指すなら、Australia」の語尾を変化させて「Australian」とする。同じように、「Lesbos(レスボス島)」の語尾を変化させると「Lesbian(レスボス島民)」となる。
この「Lesbos(レスボス島)」は、「Aegean Sea(エーゲ海)」の北東の、トルコ沿岸に近い、人口約10万人のギリシア領の島だ。
ホメロスの叙事詩「The Iliad and the Odessey (イーリアスとオデュッセイア)」に登場する歴史ある島。
その島にBC600年頃、一人の「great lyric poest (偉大な抒情詩人)」が誕生する。名を「Sappho(サッフォー)」と言った。
しかし、「Sappho」のことは、よく分かっていない。死後、その作品の多くが紛失・破壊にあったためだ。
「Sappho」が生きた古代ギリシャ時代には「homosexuality」は「immoral or wrong(モラルに反することでも悪いことでも)」なかった。けれども、その後、ずいぶんと偏見の目で見られ、批判の対象になったことも事実だ。
19世紀に入ると、「Sappho」の生き方が「formal discipline(形式陶冶)」として、ようやく見直されることになる。
そもそも「Love」が「warm affection(温かい思いやりの心)」ならば、「Sappho」が抱いた「Love」は
・innocent:無邪気で
・in no way “objectionable”:決していかがわしいものでも
・vulgarly sensual:下品な猥褻性のあるものでも
・illegal:非合法な
ものでもなかった。
時代が変わると、それまでの「Lesbian」の意味が変化するようになる。
「female homosexuality」を「sapphic」と呼んだり、その詩人の故郷の島を引き合いに出して「lesbian(レズビアン)」と呼ぶようになったのだ。
「Lesbian(レスボス島民)」にとって、この呼び方は、心穏やとはいかない。そこで、今では、「Lesbos(レスボス島)」を、その島の都市「Mystilene(ミティリニ)」の名で呼ぶ人が多いという。
なお、2008年5月、レスボス島の住民を代表した3人が、「Lesbian」を「gay women」の意味で使わないようにと、裁判所に提訴した。この言葉は島の住民の正当な権利を侵害しているというのだ。
しかし、アテネの裁判所は同年7月、この訴えを退け、原告側(plaintiffs)に裁判費用€230の支払いを求める判決が言い渡された。
おわりに:Sapphoの詩の一節
Love shook my heart
like the wind on the mountain
rushing over the oak trees.
山に吹く風
オークをふるわせ
わが心
愛に わななく
この詩のどこが淫らなのか、私には皆目見当もつかない。
(写真は添付のRTE Newsからも引用)