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都会に棲み着く「都会キツネ」:ウサギなんか捕まえられるか! (RTE-News, May 7, 2020)

It's my garden now, bud. Photo: Tim Graham/Getty Images

 いかに「尾ひれが付く」とは言え、古代中国人が考えた、尾が9本の化け狐「九尾狐」は、人を煙に巻く話だ。その古い逸話が、朝鮮半島百済を経て日本に伝わり、狐の妖怪や、狐の化けた女の話が民衆に知れ渡った。その際、日本に帰化した百済人(移民)が、「狐を神」と崇めて「稲荷信仰」を広めた。

 しかし、この数千年の間に、狐が女に化ける様子を目撃した人はいない。狐が人間に幸運をもたらしたとする事実も耳にしたことはない。

 さて、Aesop (イソップ)は、その寓話の中で、キツネ(fox)を狡猾(cunning)な動物として描いた。また、ヨーロッパの古い民間伝承によると、キツネが群がっているのは、不吉と言った。

 ところが、20世紀になると、その民間伝承も色褪(あ)せることになる。なんと、London、Dublin、Geneva (ジュネーブ)などの都市で、キツネが四六時中、群れるようになってしまい、誰にとっても不吉な光景が当たり前になったからだ。もちろん、「祟(たた)り」など起こらなかった。

 キツネにとって、田舎の森や林の中に棲むよりも、都会に出て、運河沿い、線路ばたに穴ぐらを掘って生きる方が、気楽で快適だった。なにしろ、野山で必死にウサギを追いかけずとも、生ゴミ、ネズミは、都会のどこにでも見つかり、大邸宅の芝生はミミズでいっぱいだ。それに、住処(すみか)探しにも、ほとんど困らない。都会には、空き家に空きスペースがいくらでもある。

 こうして、今日、郊外で、のんびりと寝そべっているキツネの姿が、ごく普通に見られるようになった。

 キツネは、ぶどう畑のぶどうに、ブラックベリーなどのフルーツも大好物。しかし、元々は、主たる獲物をウサギ、リスとし、これムシャムシャ食べる肉食動物だ。さらに、地上に巣作りするライチョウ(grouse)、タゲリ (lapwings)、カモ (ducks)などの鳥類をも襲って食べる。 

 1970年代、キツネの毛皮が珍重されると、キツネが大量に捕獲されて、その数を減らした。すると、外来種の「grey squirrels (東部灰色ロリス)」の個体数が急増した。増え過ぎた「grey squirrels」は、在来種で小型の「red squirrels (赤リス)」を絶滅の危機に追い込み、自然植生を破壊する。

 実は、この「grey squirrels」の天敵がキツネだったのだ。それに、「pine martens (マツテン)」も、野生の生態系のバランスを保つのに一役買っている。この俊敏で木登りが得意な動物は、獰猛さと狡猾さでは、キツネに引けをとらない。

 さて、仔ギツネ (fox cubs)がかわいいと、これを抱いてはいけない。キツネは「寄生蠕虫 (parasitic worms)」の宿主になっていることが多く、皮膚病、伝染病などの病気に罹っていることも少なくないからだ。

 

おわりに:狐狩りは、17世紀、UKで鹿狩りの副産物としてして始まり、徐々に儀式化して行った。これをUKでは、なぜか伝統的なスポーツと称する。野山のキツネを猟犬と馬で追い立てて、猟銃で撃ち殺すだけの、狩りの一種だった。その狐狩りが禁止され、都会の野良犬も駆除された。おまけに動物愛護団体の手厚いサポートを受けて、キツネは怖いもの知らずになり、街中をのし歩く。

 しかし、「都会の狐 (urban foxes)」は、しょせん、キツネ。人間がクマと一緒に住めないのと同じ。互いに住み分けが必要なことは明らかだ。このままでは、いつか、コロナ感染のような「人獣共通感染症」に悩まされることになりかねない。

     (写真は添付のRTE Newsから引用)

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