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ケルトの国「Ireland」:サンザシの樹の下に妖精が集まる! (RTE-News, May 7, 2020)

 A hawthorn tree at Kylemore Lough in Connemara. Photo: Getty Images

 遠野物語の「座敷わらし」、「かっぱ」を迷信 (superstition)の一言で片付けてしまっては、身も蓋もない。それは、紛れもなく、民衆の日々の苦しい生活から浮上した信仰であり、そこには人々の思いや願いが深く込められている。それは単なる迷信ではなく、名もない人々の文化・歴史、思想の流れを伝える民間伝承 (folklore)だ。

 その昔、人々は、山や川、湖や泉を敬(うやま)い、道ばたの岩にも、草原にそびえ立つ大樹にも神が宿ると信じた。不思議なことに、かって、遠野に限らず、日本のどんな田舎・集落でも見られた、「自然崇拝 (worship of nature)」あるいはその儀式は、今でも、ケルトの国「Ireland」の人々の間で深く根付いているという。

 もちろん、ケルトの国では「かっぱ」は出没しない。出没するのは「faery (妖精)」だ。「fairy」とも書く。妖精は「unseeing being from the other world (人間とは別の世界に住む、目に見えない生き物)」。

 太陽が沈むと、妖精たちは「hawthorn (サンザシ)」の樹の下に集まって、この世のものとは思えない、甘く美しい音楽を奏(かな)でる。美男・美女がこの歌声に魅了されると、妖精にかどわかされることもあるという。

 一方で、妖精を毛嫌ったり、妖精に悪さをしようものなら大変だ。その人の畑の作物、家畜ばかりか、家族の健康、運命までも台なしになりかねない。

 妖精が集まる「hawthorn (サンザシ)」の樹を切ったり、倒れたその樹を持ち出しても「たたり (curse)」があると信じられ、小枝を折って家の中に持ち込むのも不吉とされた。

 だから、人々は妖精のご機嫌を損ねないように「faery trees (妖精の樹)」である「hawthorn (サンザシ)」の樹を大事にし、妖精の怒りを鎮めるために特別な「儀式(rituals)」まで執り行なった。

 また、「hawthorn (サンザシ)」は「Christian holly wells (聖なる泉)」を清める樹でもあり、人々はその場所に生えたサンザシの枝に「捧げもの (offerings)」を結びつけて、願い事をした。

 ケルトにとって、一年は、夏の始まりを告げる「hawthorn (サンザシ)」の花の開花と、冬の始まりを告げる「hawthorn (サンザシ)」の真っ赤な結実で区切られていた。春の5月1日は「Bealtaine (べルテイン祭)」が開かれ、秋の終わり10月30日は「Oíche Shamhna (サウィンイ祭)」別名「Hollowe'en (ハロウイン)」が盛大に開催された。すなわち、ケルトは「hawthorn (サンザシ)」の樹の変化で季節を知ったのだ。

 なお、一般に「hawthorn (サンザシ)」の花の匂いについて触れるのはタブーとされる。その匂いは独特で、ミツバチや蝶は花に寄り付かず、花の受粉を担うのはもっぱらハエ。その匂い成分には「triethylamine (トリエチルアミン)」が含まれている。これは葬儀のときの匂いであり、女性の「sexual bodily fluids (性分泌液)」の匂いにも似る。このため、妖精の話のなかで、サンザシの花の匂いが取り上げられることは、ほとんどないという。

 

おわりに:5月に開花するサンザシ(hawthorn)は、別名「Mayflower(メイフラワー)」。1620年9月16日、Englandの Devon州の Plymouthを出航し、アメリカ大陸を目指した「清教徒」の船の名前が「Mayflower (メイフラワー号)」だった。

 また、キリストが十字架に架けられたとき、その頭上には、サンザシの冠が置かれていたとも言われている。

            (写真は添付のRTE Newsから引用)

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