更年期障害のHRT(ホルモン補充療法):アルツハイマー病のリスク増 (BBC-Health, Mar 7, 2019)
赤ちゃんが誕生した瞬間に、細胞内の神秘な時計がコチコチと動き始める。
遺伝子に刻み込まれたスケジュールに従って細胞分裂が繰り返えされ、神経組織や臓器を完成せて行く。さらに子どもが成長して思春期・青年期を迎えると、遺伝子はホルモンを分泌するように命令を発っし、子孫を残すための生殖器官が完成する。
しかし、その後、壮年期に入ると、ホルモンの分泌はがらりと変わる。それは、とくに女性の体に大きな影響を与える。これは「menopause symptoms (更年期障害)」と呼ばれ、次のような症状が現われる。
・hot flushes:顔面紅潮
・night sweats:寝汗
・mood swings:気分変動
・reduced sex drive:性欲減退
・dry or burning mouth:口内乾燥症・口内灼熱症候群
・loosened teeth:歯のぐらつき
・weakening of the bones:骨の劣化
ほとんどの女性が更年期障害を経験し、その期間はおよそ4年。しかし10人に1人の割合で12年間も続く人もいる。イギリス人の女性は平均51歳で更年期障害を発症し、患者には,、「Hormone Replacement Therapy (ホルモン補充療法 HRT)」が勧められて来た。
ところが、Helsinki大学の Dr Tomi MIkkolaらの研究グループが Finlandの女性17万人に関する14年間にわたる医療データを分析した結果、『HRTの治療が10年以上に及ぶようになると、アルツハイマー病の発症リスクが 9 -17%も高くなった』と、医学雑誌「BMJ」に発表した。
これは、長期間HRTを受けた70-80歳の女性の場合、1万人当たり9-18人が、アルツハイマー病を発症することに相当する。
ただし、アルツハイマー病の主要な「modifiable risk factors (修正可能な危険因子)」は次の 7項目とされる。
・diabetes:糖尿病
・high blood pressure:高血圧
・obesity:肥満
・smoking;喫煙
・depression:うつ病
・physical inactivity:運動不足
・cognitive inactivity:認知活動不足
UKの「dementia (認知症)」患者は約85万人。その 2/3がアルツハイマー病罹患者だ。
なお、HRTにはアルツハイマー病以外にも乳ガン、脳卒中のリスクもあることが知られている。
The Royal College of General Practitioners (王立一般医大学)」のHelen Stokes-Lampard教授は、HRTに関しては「effective and safer treatment (有効かつ安全な治療法)」と言いつつも、『どんな治療法にもリスクはあるもの』とし、そのリスクを最小にするためには、症状に見合った最小限のホルモン錠剤を、できるだけ短期間服用することを勧める。
謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Sun」の記事ならびにDr Marianne J. Legatoの著書を参照した。記して謝意を表したい。
1. The Sun, March 7, 2019
・Taking HRT 'increase your risk of Alzheimer's disease', experts warn
1. Marianne J. Legato: Eve's rib, Harmony Books, 20012
(写真は添付のBBC Newsから引用)