アルツハイマーの治療薬だって?:それは画期的な発見、それとも― (BBC-Health, October 22, 2019)
認知症 (dementia)とは、認知障害・学習障害などの症状 (symptoms)を示す疾患の総称だ。その認知症の60 - 70%を「Alzheimer's disease (アルツハイマー病AD)」が占める。高齢者にリスクの高い疾患だが、40代、50代の人にも発症する。
アルツハイマー病の主な原因として、脳内にタンパク質の1種「amyloid beta (アミロイドβ)」が蓄積し、これが毒素となって周りの神経細胞を死滅させるとする説「 (amyloid hypothesis (アミロイド仮説)」が有力だ。
残念ながら、この病気の進行を食い止めるか、遅らせる治療薬は存在しない。
現在、UKのAD患者数は約85万人(日本では、その数倍か)、世界全体では推定約5,000万人で、しかも、増加傾向にあり、2050年には罹患者数が1億3,100万人に達すると見込まれている。
それが、突然、USの医薬品メーカー「Biogen (バイオジェン)」が、アルツハイマー病ADの進行を遅らせる薬の開発に成功したと発表。薬の名は「aducanumab (アドカヌマム)」。この薬には、脳内に蓄積したアミロイドβを取り除いて、症状を緩和し、ADの進行を顕著に遅らせる効果があったと言い出し、専門家 (experts)を驚かせた。
実は、この 3月、Biogen社は「aducanumab」に関する大規模な臨床試験2件を、失敗したようだのと理由で、終了するとアナウンスしたばかりであった。
ところが、会社側の説明によると、膨大なデータを再解析した結果、「aducanumab (アドカヌマム)」の投与量を増やした患者、それもアルツハイマー病初期の症状に「significant benefit (顕著なプラス効果)」が認められたと言う。
どうにも、USの医薬品メーカーの、「aducanumab (アドカヌマム)」に関する一連の発表には、すっきりしない、きな臭いものを感じる。
しかし、この薬の効能が、会社側の主張するように本当なら、アルツハイマー病患者にとっては、この上ない喜びだ。ただし、当局に「aducanumab」の新薬申請をして、実用化されるまでには、少なくとも数年は掛かるとのこと。
おわりに:ADの治療は急を要する。しかし、利益供与のない第三者機関による臨床試験データの「精査 (scrutinisation)」と、臨床試験の追試が必要なことは言うまでもない。
謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。記して謝意を表したい。
The Guardian: October 25, 2019
・Biogen's secret campaign to bring its Alzheimer's drug back from the ashes
(写真は添付のBBC Newsから引用)