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眠れる巨人:海面上昇で育ち、大気中の CO2をたらふく吸い込む! (BBC-Science & Environment, Mar 6, 2019)

https://ichef.bbci.co.uk/news/834/cpsprodpb/1B27/production/_105915960_mediaitem105915959.jpg

 沼地・葦原(あしわら)は耕作に向かない荒れ地。しかし、沼には蓮の花が咲き、ヒツジグサ、コオウボネなどの水生植物が彩(いろど)りを添え、マガモカルガモカイツブリなどの水鳥がエサを求めて、仲間と憩う。そこは、多くの動植物にとって、なくてはならない繁殖の地であり、生態系を支える重要な自然環境だ。
 その昔、古事記日本書紀の時代に、「葦原の国」あるいは「葦原の中つ国」と言えば、日本の国を指した。

 さて、地球温暖化によって南極・北極の氷が溶け、高山の氷河が溶けて海水面は上がりっぱなし。海岸線が刻々と内陸部に押し寄せ、世界中の堤防・防波堤が波に呑み込まれて行く。時間のスケールを100年、1,000年の単位で見れば、海辺に隣接した陸地は湿地に変わり、どんどん陸地面積が狭くなって行くに違いない。このまま地球温暖化が進むと、地球上の陸地のほとんどが海の底に沈んでしまうのだろうか。
 
 Wollongong大学の Kerrylee Rogersらの研究グループが、世界6大陸で過去6,000年にわたって「海性沼沢 (salt marshes」の土壌に取り込まれたCO2量を分析した。その分析箇所は300以上に及ぶ。
 その結果、海面上昇には「potential benefits (潜在的なプラス面)」があることも分かってきた。地球温暖化にブレーキを掛けるように働くというのだ。
 その理由はこうだ。

 海水面が上がると、「海に面した湿地地帯 (coastal marshes)」の面積が拡大する。すると、「marshland plants (水生植物)」などの有機物は分解されることなく、泥・土壌に埋もれて有機質の堆積層を形成する。海面がさらに上昇すると、その上に湿地帯が嵩上げされる形で積み上げられ、これが繰り替えされて堆積層の厚みは増大し、湿地帯が包蔵するCO2量は膨大になる。つまり、湿地帯は、「大気中のCO2をたらふく吸い込んだ眠れる巨人 (sleeping giants of carbon sequestration)」となっていた。
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 このまま海面上昇が続くと、とくに、オーストラリア、中国、南アメリカの海岸線で「salt marshes (海性沼沢)」が拡大すると考えられ、この3地域でCO2吸収量が2倍になると、大気中のCO2が湿地帯に閉じ込められる量は年間500万トン。自家用車100万台から排出されるCO2排ガス量に匹敵するという。
 
謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、Wollongong 大学の優れた「Media Releases」記事を参照した。記して謝意を表したい。

University of Wallongong, Australia, 「Media Releases] March 7, 2019
・Coastal wetlands capture more carbon as seas rise

                 (写真は添付のBBC Newsから引用)