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サイロシビン:脳をがんじがらめにしていたうつ病の糸を溶かす! (BBC-Health, Apr 12, 2022)

Magic Mushroom

Brain connectivity

 漢字の「鬱(うつ)」は、ジメジメとした湿気のこもる暗い林の中に、ひとり閉じ込められ、常に死の恐怖に脅かされている心理状態を表わす。英語の「depression (うつ)」とて、押しつぶされ (press down)そうになっている心の状態を文字にしたものだ。

 

 この「うつ病」に陥ると、脳神経回路 (思考回路)が麻痺し、ネガティブな考えにとらわれ、頭の中は、これでがんじがらめに縛られる。症状が重くなると、不眠症を併発し、自傷・自殺に走ることもあるので厄介だ。うつ病は危険な心の病気と言える。

 

 WHOの2021年報告によると、世界の成人人口の約 5.0%が、このうつ病に苦しんでいるという。日本の成人人口は約8,000万人。したがって、WHOのうつ病発症率を適用すると、日本のうつ病患者数は約200万人と推定される。

 

 うつ病の治療は極めて難しい。第一に、うつ病の発症メカニズムが十分に解明されていない。それに加えて、患者に適した抗うつ薬 (antidepressants)を探し出すのが難しい。さらに、患者は、抗うつ薬を毎日服用するようにと強要される。

 しかも、うつ病によっては、どんな抗うつ薬も全く効かないものもあるのだ。

 

 さて、この数年の間にうつ病治療に関する研究開発が進み、一般の抗うつ薬では手の施しようのないうつ病に対し、マジック・マッシュルームに含まれる幻覚成分「psilocybin (サイロシビン)」が有効であることも明らかになって来た。しかし、幻覚剤のサイロシビンが、なぜ、どのように脳に働くのかについては不明だった。

 

 「The Imperial College London」幻覚研究センターの David Nutt教授らの研究チームは、うつ病重篤患者 60人を被験者の対象としたサイロシビン臨床試験を実施した。サイロシビン (合成剤)を投与する前に被験者全員の「brain scans (脳スキャン)」を撮り、投与後の脳スキャン画像に比較し、サイロシビンの効果を確かめた。

 

 その結果、サイロシビンを1,2回服用しただけで、3週間後には、患者の脳は、まるで、がんじからめに縛りつけられていた糸から解きほぐされるように開放され、脳神経伝達物質の流れもスムーズになったという。(研究結果の詳細は医学雑誌「Nature Medicine」に発表。)

 

 ただし、今のところ、サイロシビンの効果がどれだけの間続くのかは不明。また、この治療の後で、うつ病を再発した被験者も認められた。したがって、今後の更なる研究が必要とされる。

 

 Netts教授らは、サイロシビンの効果を拒食症 (anorexia)などのメンタルヘルス障害でも確認したい意向とか。

 

おわりに:幻覚剤サイロシビンは麻薬取締法が適用される禁止薬物。決して自己診断・治療に走らないこと。それにしても、(日本の)マジック・マッシュルームに関する医学的な研究開発とその治療に向けた法整備は、遅れに遅れている。さらに遅れているのは、うつ病の予防とその啓蒙活動だ。

    (写真は添付のBBC-Newから引用)

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