夢のお告げ!:本当は、何を知らせようとしているのだろう? (RTE-News, Apr 28, 2021)
1.夢 (dream)とは何か
どんな夢も、夢は夢だが、「Morning dreams come true.(明け方の夢は正夢)」と聞くと、誰でも、少々不安になる。
古代ギリシア人は、『夢は西方の地の果て、オケアノスの流れの近くにある死と再生の国「至福の島 (The Island of Bliss)」からやってくる』と信じた。
現に、その昔、英語の「dream (夢)」には「喜び (bliss)」と「夢」の 2つの意味があった。
また、「夢」と「眠り」は、Spanishで「sueño」, Russianで「son」と、同じ語で表わされて切っても切れない関係にあり、ラテン語の「somnium (夢)と「somnus (眠り)」のように、同系の語が使用される言語もある。
つまり、心理学者 Dr Ian Wallaceが指摘するように、人は誰でも眠ると夢を見るのだ。『夢を見ることなどない』と突っぱねる人は、単に、夢を覚えていないだけだという。
2.なぜ夢を見るのか
人が眠りにつくと、90分サイクルの「ultradian rhythms (超日リズム)」に入る。1日の睡眠時間が 7.5時間とすれば、1晩で夢は 5回見る。しかも、睡眠直後に見る夢の長さは 10− 15分と短く、明け方の夢は 40− 45分と、幾分長めのドラマとなる。 つまり、その内容は支離滅裂ではあるが、1晩でみる夢の長さは全体としての約 2時間、まさに、人生の約1/12は、夢の中にあると言える。
なお、「UCSF California medical school」が1970年代に実施した実験によると、 日常生活上の出来事で、意識に残るのは約2%。残る約98%は「unconscious awareness (無意識の意識)」の範疇に入り、そのほとんどは「emotional (感情・気分)」に関すること。
一日が終わると、脳は早速、記憶データの整理・統合作業に取り掛かる。当然ながら、その作業の中心を占めるのは、目が覚めていたときに経験した「emotions」の分析となる。このとき、膨大な画像が早送りで再生される。この「flows of emotions (怒り、恐怖、喜びなどの流れ)」が夢なのだ。
3.何度も同じ悪夢でうなされるとき
何度もなんども繰り返して同じ悪夢でうなされるとき、それは「Subconscious (潜在意識)」が働いて、何か重要なメッセージを伝えようとしているのだ。
脳の中に記憶された情報データが、追い込まれて窮地に立たされている感情で一杯の可能性がある。悪夢を見て目が覚めるのは、本能的にこれを避けようとする現象だ。
4.注意すべき夢とは
不安、ストレス、うつ(鬱)が原因となった悪夢には要注意。夢のなかで突然、雷雨、津波、旋風に襲われ、そのほとんどは「dark and shadowy (暗く、不可解な)」影に閉ざされた)」内容だ。
また、夢の中でも最も多いのは、自宅に帰る道がなかなか見つからない夢。これは自分を見失い、長い間に積もり積もった「隠れストレス (hidden stress)」が原因。
5.他にどんな夢が多いか
「現在の自分に満足していない」、「他人から適切に評価されていない」、「望み通りの自分ではない」と感じている人は、「identity」に関する夢を見る。自分は何者で、いったい何を望んでいるのか定まらず、気になっているからだ。
また、人生で成功した「real perfectionists (完璧主義者)」は、「準備をしないで受けた試験」の夢を見ることが多い。常々、試験が、ものごとを決める唯一の手段であると決めつけ、自分の能力が気になっってしかたがないのだ。
ところで、どんなに悪夢にうなされても、その夢は実際のストレス、不安、うつ病の緩和に役立っているという。夜中に悪夢で目が覚め、「Oh it's a bad dream.(ああ、悪い夢を見た)」。「でも、夢でよかった。気をつけよう」となるからだ。
6.夢を活かす
夢を単なる夢と片付けないで、朝、目を覚ましたら、覚えている間に、その要点をメモにする。あるいはレコーダーに記録する。
夢は、心の中の重要なメッセージであることが多いためだ。とくに、何度も同じ夢を見るとき、そこには、それなりの理由があるはず。
なんらかの「action (行動)」を起こさない限り、今後、同じ悪夢あるいは不愉快な夢が繰り返されると考えられる。
7.夢を分析する
夢が何を伝えようとしているのか。この分析には、以下の Dr Wallaceの夢辞典が役立つ。
・The Complete A To Z Dictionary of Dreams: Be Your Own Dream Expert, Health Communications, Inc, 2015
また、うなされる夢を見たときの、とっておきの対処法がある。それは、その瞬間に、目を覚ますように心掛けることだ。そして、「half-woken sate (半分寝ぼけた状態で)」意識的に夢を変えるように努力する。「なんだ、お化けか。」「そんなものは、いないはずだ」、「だれかが悪ふざけしているのだろう」と、してしまう。どうせ、夢の中のことだ。
おわりに:夢には楽しい夢も、不愉快極まるものもある。そんな夢に一喜一憂することはない。それに、夢の中で難解な方程式が解けたことは一度もない。しかし、夢の中で、懐かしい人に会って、その声を聴いたなら、それは「至福」のメッセージではないだろうか。
(写真は添付のRTE Newsから引用)