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まぼろしの野の花「grass-poly」:「ゴースト・ポンド」で発見! (BBC-Science, Nov. 28, 2020)

Grass-poly

 ダリア「dahlia」の花は、けばけばしい厚化粧をした女性のよう。大した魅力を感じない。それよりも、夏の盛りに、真っ白な花を咲かせる山百合は、野の花の中で突出している。清楚な姿ながら、切ないほど妖艶な香りを放ち、夜、月の光を浴びると、まるで灯りがともるように輝く。

 

 それに引き換え、人工的に花弁を大きくしたダリアは別だ。赤だの青だのと、あれこれ人の手を加えた、その園芸種は、野趣に欠ける。

 

 さて、England東部の「Norfolk (ノーフォーク)」。そこは、かつて数千の池 (ponds)が点在する地だった。しかし、それも数世紀前のことだ。

 池の周りや沼には「grass-poly (コメバミソハギ) [学名:Lythrum hyssopifolia (リスラム・ヒッソピフォリア] ) 」が群生していた。

 

 この植物はミソハギ科 (Loose strife family)に属し、背丈20cmになる1年草。夏には「pinkish-white flowers (薄っすらとピンクが入った白い花)」を咲かせる。いや、正確には、咲かせていた。

 

 やがて、家畜の水飲み場の必要性もなくなると、Norfolkの数多くの池は放棄され、木立の中に埋(うず)もれて「ghost pond (ゴースト・ポンド)」と化した。

Farmland pond in Norfolk being restored

Restored farmland pond, Norfolk.

 そして時代が変わり、自然復興の機運が高まった。「Norfolk Ponds Project (ノーフォーク・ポンド再生プロジェクト)がスタートする。かって、池のあった地の「willows (ヤナギの木)」を引き抜き、その地を掘り返した。すると、数世紀に渡って泥の中に埋もれていた「grass-poly」の種子が地表に現われて、芽を出したのだ。

 

 ある日のこと、College London大学の Carl Sayer教授が、Norfolkの小さな村「Heydon (ヘイドン)」を調査に訪れ、偶然に、「これまで見たこともない」まるで「botanical gems (植物の宝石)」のような花を見つける。すぐに写真を撮り、地元の植物学者 Dr Jo Parmenterにその写真を送って、鑑定を依頼した。

 それが Norfolkでは絶滅したと考えられていた「grass-poly」だった。

Grass-poly

 発見された「grass-poly」の群生地は、ほんの一握りにすぎない。研究者らは今後、他の場所でも増やしたい考えだ。

 

 それにしても、野生の草花の生命力には驚く。繁殖地も生態系も破壊されながら、何百年もの間、生命復活のチャンスを待ち続けるなんて、とても人間にできることではない。

 

おわりに:これまで、人類は多くの動植物を絶滅させて来た。今さら、「池」を再生し、水鳥や昆虫が集(つど)い、水生植物が花を咲かせるようにしたところで、その罪の償いにはならない。しかし、それは、錆びついた人の心を確実に変えるだろう。すでに、そこには、さわやかな風が吹いている。

       (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com