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医者が病気の原因と治療薬を間違えては:治るものも治らない! (BBC-Health, April 30, 2019)

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 医者に「痛くもない腹を探られる」のは、かなわない。しかし、もっと悪質で我慢がならないのは、頭が痛いというのに、腹痛の薬を処方する医者だ。これは大袈裟な喩(たと)えと、関係者は苦言を述べるだろう。ところが、誰でも、大なり小なり、似たような経験はあるはず。実際のところ、少なくとも認知症の治療では、これとほとんど同じようなことが行なわれて来た。

 それはなぜか。認知症 (dementia)と一口で言っても、アルツハイマー型、ルビー小体型、パーキンソン病型、ハンチンソン病型などと種々のタイプがあり、それぞれの認知症の原因が違っていることが第1の理由。さらに問題をやっかいにしている理由は、病院の診察で、どのタイプの認知症かを識別するために欠かせない、単独の検査法が存在しないことだ。
 認知症の原因を正確に特定するためには、死後の脳解剖が必要なのだ。患者が亡くなった後で、病気の原因が分かったところで、患者には何の救いになるのだろう。

 認知症の中でも、およそ2/3を占めて、最も多いとされるタイプはアルツハイマー認知症。この神経疾患は脳神経細胞に「amyloid beta (アミロイドβ)」, tau(τ)」タンパク質が蓄積することと深く関わっていると考えられている。
 そこで、これまでの認知症治療の臨床試験では、その2種類のタンパク質を軽減する薬が処方されたが、ことごとく失敗して来た。

 こうして臨床試験に、あるいはアルツハイマー認知症の治療に、膨大な医療費・医薬品開発費が投入された。世界における認知症治療薬の需要は高く、その開発に成功すれば巨額の利益につながることは間違いない。けれども、余りの過酷な開発レースに、脱落を余儀なくされた製薬メーカーも出て来た。

 なぜ、アルツハイマー認知症に対して、まったく薬が効かないケースもあるのか。その答えを探して、Kentucky大学の Dr Pete Nelsonらの研究グループは、数千に上る認知症患者の脳の解剖データを精査、分析し、ついに、「謎の解明」に成功した。(研究結果の詳細は医学雑誌「Brain Reports」に発表。)

 なんと、アルツハイマー認知症と診断して、治療薬を投与して来た患者の、およそ1/3は、全く別のタイプの認知症「Limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy (大脳辺縁系侵勢型老齢 TDP-43脳障害 Late)」だった。この認知症「Late」は、脳神経細胞にタンパク質「TDP-43」が蓄積することと深く関わっていると考えられている。

 その症状は、アルツハイマー認知症によく似ていて、「memory (記憶力)」,「thinking (思考力)」を失う。しかし、「Late」は、とくに80歳以上の後期高齢者に発症する傾向があり(発症率は、およそ5人に1人の割合)、記憶が喪失するスピードも緩やかだ。

 Dr Nelsonらの研究グループは、すでに精神科医に向けた「認知症 Lateの診断ガイドライン」を発表している。今後は、今回の研究結果を新たな認知症治療薬の開発に結びつけたい考えとか。

                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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