ファースト(fast)は危険:地球を脅かす「ファースト・ファッション」 (BBC-Science & Environment, October 5, 2018)
高速道で車のスピードを「fast(ファースト)」にすると、事故のリスクが高まる。では、「安くて、早く」空腹を満たしてくれる「fast food (ファースト・フード)」のドーナッツやピザ、ハンバーグを食べ過ぎると、どうなるか。やはり、健康上のリスクが上がる。
それでは、「fast fashion (ファースト・ファッション)」には、どんなリスクがあるのだろうか。
誰かが、食の「fast food」にヒントを得たのか、最新のファッションをすばやく、低価格で、短期間だけ限定して販売するという「衣」の戦略を立てた。当初は若ものをターゲットにしたその「fast fashion」は、またたく間に衣料品業界・小売業界を席巻し、世界中の有名デパートの高級衣料品売場を窮地に追いやった。
今ではUNICLO、GAPなどの看板を掲げた「fast fashion」店舗は、Tokyo, London, Parisの一等地でも見られるようになった。
しかし、「衣料品 (clothes)」をつくって販売するのも「quick (迅速)」ながら、商品の「回転 (transition)」も迅速だ。生産コストを抑えるために中国、ベトナム、インド、台湾などで作り上げた衣料品は「cheap」、「fashionable」の謳い文句と大々的なコマーシャルで「one season」だけ販売され、同じ色・デザインの商品が二度と店頭に並ぶことはない。
ところが、「fast food」の食べ残し、売れ残りの量が半端でないのと同様、「fast fashion」が埋立地 (landfill)や焼却施設 (incinerators)で廃棄処分される量も膨大だ。UKでは購入から1年以内に廃棄処分に回される衣料品は5着の内の3着。昨年、埋立処分された衣料品は2億3,500万着。
さらに悪いことに、これを洗濯すると、その素材「microfibres (マイクロ・ファイバー)」が海に流れ込み、その量は年間約50万トン。加えて、業界全体がその製造過程で放出するCO2排出量は年間12億トン(2015年度)にのぼる。
「fast fashion」の市場の伸びがこのまま続くと、この産業が地球の「climate change (気候変動)」に与える影響の割合は、全体の1/4を越える恐れが出て来た。
とくにイギリス人はファッション好き。
・ヨーロッパのどの国よりも衣料品を購入 (1人当たり年間26.7kg)。
・10年前に比べて、衣料品の購入量も2倍に。
・しかし、洗濯時に廃水とともに環境に放出された合成繊維 (synthetic fibres)は、やがてBritain島周辺の海域に生息する魚の体内に取り込まれる。
・Levi 501ジーンズ1本をはき潰すまでに洗濯で使用される水の量は3, 781 L
環境を破壊し、CO2排出量を急激に増加させた「fast fashion」。危機感を抱いた「The House of Commons (庶民院)」の「Environmental Audit Committee (環境監査委員会EAC)」[委員長:Ms Mary Creagh (労働党議員メアリィ・クレイ)]は、ついに 対策に乗り出した。委員会は、今後、業界に対して次のような改善策をとってもらうように、政府に答申する予定だ。
・Less pollution;環境汚染の少ない商品の開発
・Longer life:もっと長く着用できる(ファッションに振り回されない)商品の開発
・A ban on dumping clothes in landfill:衣類の埋立処分禁止
結論:いくら金回りの良い「fast fashion (ファースト・ファッション)」業界といえども、越えてはならない限界 (threshold)がある。それに、現代人は、衣類に関して少し贅沢になり過ぎたようだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)