地球を守る磁気バリア:地下3,000kmの鉄のジェット流が生み出す (BBC-Science & Environment, December 19, 2016)
地球は、半径約 6,400km のほぼ球体で、大まかに 4 つの層から成り立つ。表面は平均 35kmの地殻 (crust) で覆われ、その下には「マントル (mantle)」[厚さ2,900km]、「外殻 (outer core)」[厚さ 2,300km] と続き、最後に「内核 (inner core)」[半径 1,200km] が存在するとされる。
そして、太陽が繰り出す強烈なプラズマ流から、その地球の生命体を守っているのが、「地球の磁場 (Earth's magnetic field)」だ。しかし、磁場の発生メカニズムについては、よく分かっていないことが多い。
このため、2013年11月、欧州宇宙機関 (The European Space Agency) は 3 基の地磁気観測衛星「Swarm」を打ち上げた。
この度、Leeds 大学の Dr Phil Livermore、デンマーク工科大学国立宇宙研究所 (The National Space Institute at the Technical University of Denmark) の Dr Chris Finlay らの国際研究グループが Swarm から発信された計測データを解析した結果、驚くべき地球の秘密が明らかになった。
地下 3,000kmの外核 (outer core) と呼ばれる層では、液状となった鉄が、大気上空のジェット気流 (atmospheric jet stream) のように対流 (convection) し、これによって強力な磁場が作られている可能性が高まった。その流れの速度はおよそ50 km/y (約 6m/h)。
ジェット気流 (時速 300km以上) に比べると、決して速いスピードではないが、流れは極端に密度の高い液状の鉄。したがって、その運動量は巨大だ。
対流を生み出している力は何か。おそらく、磁場の変化で発生した「buoyancy (浮力)」と考えられている。
この外核内の流れを説明するために「tangent cylinder (正接円筒)」モデルが提案されている。内核との境界面に内接し、地球の回転軸を中心にして、南極から北極を貫く仮想の円筒形。内核を挟んで、南極側と北極側の双方で液状の鉄の流れが起きているとするモデルだ。このモデルに従うと、北半球のアラスカ、シベリア深部で観測された液状の鉄の沸き出しが、よく説明できるという。
この数世紀、地球の磁場は弱り続けている。果たして、数十万年に一度の頻度で起こる、地球の「磁性の反転 (polarity reversal)」が迫っているのか。科学者たちは、Swarmの観測データに、その答えを見いだしたいと願っている。なお、一連の解析結果は、「Nature Geoscience」に発表される予定。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)