ど忘れ、もの忘れ:それはなぜ?健忘症? (BBC-Future, March 8, 2016)
人間の記憶 (human memory) は、当てにならないことが、間々にある。話そうと思ったことが、何かに気を取られたとたんに、忘れてしまい、恥をかく。
また、外出しようと思い、2 階の寝室に置いた車のキーを探しに、階段を登って、部屋のドアを開け、中に足を踏み入れた瞬間に、何をしようとしたのか、捜し物まで忘れてしまう。これを心理学では「Doorway Effect (戸口効果)」と呼ぶ。
さらに、人間が行動する際の「注意力 (attention)」は、その行動の慣れや状況に応じて変わるもの。例えば、車の運転歴が 10 年以上の人なら、ウィンカー、ワイパーなどの操作は、ほとんど反射的あるいは無意識に行なっているはず。運転中にラジオを聴けるし、助手席に座った人との会話も楽しめる。ところが、高速道のジャンクションでは、そうはいかない。注意力は運転に向けられ、会話はしばらくお預けとなる。
さて、「Doorway Effect」によって「もの忘れ (foregetfulness) 」は、なぜ発生してしまうのか。車のキーを探しに行った例は、次のように分析される。
「キーを探すこと」[plan] は、そのために「寝室に行く」という行動戦略[strategy] の実行中に、忘れられた。その原因は、おそらく、初めの [plan] よりも、もっと大きな [a larger plan]「外出しなければ」が頭をよぎって、さらに、それよりも「もっと包括的でスケールが大きく重要な」[plans on a wider and wider scale ] に思い当たったからかも知れない。気がかりとなっている、これから外出する先の大事な交渉の件などだ。
人間は、[plan]、 [strategy]、[larger plan] のそれぞれの行動の段階で、その都度、記憶を頼りに注意力を働かせている。しかし、「より優先度の高い行動(hierarchy of action)」が頭の隅をかすめて、注意力が逸 (そ) れると、またたく間に、優先度の低い記憶は、頭の中から飛んで、消えてしまうのだ。つまり、ある瞬間の記憶は、その行動の注意力が切れると、優先レベルの高い記憶に置き換えられてしまうと言える。
「Doorway Effect」は「健忘症 (amnesia)」とはまったく違うのだ。
では、どうすれば良いか。著者が実践している技は2つ。1つは、行動の振り出しに戻ってみること。また、スピーチや会議の発言では、必ずメモを用意すること。
(写真は添付のBBC Newsから引用)