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初代 神武天皇の即位(BC660):太陽表面で最大級のEventがあった! (BBC-Science & Environment, Mar 12, 2019)

X-class flare

 ほとんど神話(legend)の世界だが、初代天皇神武天皇が即位したのはBC660年とされる。その頃と言えば、ヨーロッパ・中東は鉄器時代に当たり、古代ローマも、建国(BC753 )から90年以上が過ぎていた。

 そのBC660年に、太陽は、その表面で、近年観測されたことのない、とてつもない規模の大爆発(太陽フレア)を起こしていたことが分かった。

 Lund大学(Sweden)のRainmund Musheler教授らの研究グループが、グリーランドから採取した「厚い氷のサンプル (ice cores)」を調べた結果、この年に「beryllium-10 (ベリリウム10)」、「chlorine-36 (クロリン36)」がグリーンランドの氷に閉じ込めていた。いずれも、「cosmic origin  (宇宙起源)」の「radioactive isotopes (放射線同位体)」だ。

 幸い、地球がどんなに猛烈な太陽風 (solar storms)に襲われようと、2,000年以上も昔のことでは、ほとんど被害がなかったに違いない。
 ところが、今は、全く違う。BC660年当時と同じ規模の「solar proton event (太陽プロトン放射現象SPE」が地球を襲ったら、地球は大混乱に陥ること間違いなしだ。

 通信衛星GPS衛星などの電子回路は軒並み破壊され、「electric grids (配電網)」も、そのほとんどがズタズタに壊れる。さらに、桁外れに強い放射線は、宇宙飛行士に限らず、極地付近の高緯度上空を飛行する民間航空機の乗客・乗員の健康にも深刻な被害を及ぼしかねない。

 太陽フレア (solar flare)は、周期的に発生している。グリーンランドの「ice cores」と年輪 (tree rings)には、BC660年から1,435年経過したAC774 -775にも、BC660年と同規模の太陽風が襲来したことを証明する痕跡も発見された。

 さて、太陽が憤怒(ふんぬ)の形(ぎょう)も荒々しく、3度目の高エネルギー荷電粒子 (プラズマ)を大量に放つときはいつか。いずれにしても、その日はそれほど遠くない近未来のことに違いない。そのとき、人類はその危機を乗り越えるだけの科学力とチームワーク力を持っているだろうか。
 ただただ、なすすべもなく、夜空に妖しげに揺らめく「aurorae (オーロラ)」を見つめているだけだろうか。
                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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健康のバロメータ血圧:高いのは、それなりの理由が! (BBC-Health, Mar 8, 2019)

Blood pressure monitor

    ブレーキとアクセルを一緒に踏んでいませんか。体のエンジンの心臓のことだ。
 ブレーキを踏みながら、アクセルペダルを踏んでいては、どんなに性能のいい高級車でも、エンジンが音を上げてしまう。血圧を下げる薬を飲みながら、お酒を飲んで、タバコを吸っていては、まさにブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるようなもの。

 血圧は健康状態を端的に表わすバロメータ。この値が高すぎるということは、何らかの問題があって、心臓に無理が掛かっている証拠に他ならない。

 「The American Heart Association (米国心臓協会)」によると、心臓が悲鳴を上げて、「高血圧信号」が点滅している人は、世界の成人人口の約1/3。USに至っては成人人口の約50%に当たる推定1億300万人が高血圧。UKでも高血圧者は数百万人に上ると推定される一方で、治療のため薬を飲んでいる患者は72万人に留まる。

 ただし、「高血圧 (high blood pressure)」とは、上「systolic pressure (収縮期圧)」が130-139 mmHgで、下「diastolic pressure (拡張期圧)」が80-89 mmHg。血圧値がこの領域に入る人は「Stage-1 hypertension」とも呼ばれる。

 血圧値が高いと、なぜ体に悪いか。それは、以下の病気の発症リスクがドンと上がるからだ。

・strokes:脳卒中
・heart attacks:心臓発作
・heart failure:心不全
・Kidney diseases:腎臓疾患

 いずれも発症すると、「death (死)」、「disability (体が不自由)」につながりかねない恐ろしい病気だ。
 なお、血圧値が140/90mmHg以上の「Stage-2 hypertension」になると、10年後に「cardiovascular diseases (心臓循環器疾患)」を発症するリスクは20%に跳ね上がる。

 心臓に余計な負担を掛けて、血圧の上昇を招く主な要因は次の7項目。

・不健全な食生活
・太り過ぎ
・塩分の摂り過ぎ
・お酒の飲み過ぎ
・タバコ
・運動不足
・ストレス

 ところが、一口で血圧値が高いと言っても、その危険度は人によって違う。

・すでに血圧を下げる薬を服用しているか
・他の病気(慢性腎臓疾患など)に罹患しているか 
・年齢は
・生理学的要因(食生活の栄養バランス、アルコール摂取量など)
・社会的要因(仕事内容、労働環境など)
・運動習慣

これらの点を考慮した上で、専門医は「evidence-based (根拠に基づいた)」治療に当たるべきだと、「The Royal College of General Practitioners (王立一般開業医大学)」の Helen Stokes-Lampard 教授は述べる。決して、軽々に診断してはならないし、「over-diagnosis (過剰診断)」になってはならないと。もっともなことだ。

 しかし、そのように、丁寧に診察してくれる病院など、どこにあるのだろう。ほとんどは、血圧値だけの判断で、これを下げる薬を一律に処方しているのが現実ではないか。

 血圧値は、大事な体の「声」だ。その声をよく聴いて、他人だけに頼ってはならない。すぐに、医者だ、薬だと騒がず、どのようなときに、なぜ高くなるのか、どのように測定すれば正確な値が得られるのか、自分自身で確かめることが大切だ。
 ただし、決して、ブレーキとアクセルを同時に踏むようなことがあってはならない。
 
                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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糖尿病の「切り札」は減量:ただし、人によりけり! (BBC-Health, Mar 6, 2019)

picture of Joe who took part in the trial.

 好き嫌いを先に言って、大人げないが、「三年寝太郎」は大嫌い。母親を騙し、長者とその娘をだまし、鎮守の神様をもだまして巨万の富を自分のものにするなどとは、神も仏もないとんでもない昔話だ。誰もこれをまねるようなことがあっては、ならない。
 しかし、それはあくまで、たわいのない、作り話の上のことだ。現実は、仕事をしないで、体を動かさず、ダラダラして太り過ぎると、体力も気力も劣化し、十中八九、糖尿病の落とし穴にはまり込む。

 「2型糖尿病 (type-2 diabetes)」は、膵臓から分泌されるインスリンが不足し、「血糖値(blood glucose levels)」の上昇をコントロールできなくなる病気。
 一般に、血糖値が200mg/dLになると、糖尿病と診断される。「体がだるい」、「疲れやすい」、「のどが乾く」などの症状を伴うが、この病気の治療を怠ると、次のような「合併症 (complications)」の発症リスクが高くなる。

・visual problems:視力障害
・heart failure:心不全
・kidney failure:腎不全
・stroke:脳卒中
・amputations:足の切断

 「The American Diabetes Association (米国糖尿病学会)」によると、USの糖尿病患者は3,000万人以上、世界全体では4億2,200万人以上と推定される。UKでは成人の2/3が太り過ぎで、16人のうち1人が糖尿病に罹患している。
 なお、USだけでも、この病気の治療費は、$245billion (約27兆2千億円)を超える。

 多くの場合、糖尿病は「inevitably progressive disease (進行が避けられない病気)」。このため、患者は、一生、薬を手放せない闘病生活を余儀なくされる。

 薬を飲まずに、元の健康な体に戻れない方法はないものか。
 Newcastle大学のRoy Taylor教授らの研究グループは、プロジェクト「Direct」の一環として、ScotlandとTyneside (タインサイド)に住み、2型糖尿病に苦しむ約3,000人を対象にした臨床試験を実施した。被験者のBMI値は27-45であった。
 臨床試験に当たっては、被験者を「standard care (標準的な治療)」のAグループと、カロリー摂取制限治療(low-calorie diet)のBグループに分けて、両グループの治療効果を比較した。

 Bグループの患者のカロリー摂取量は1日850カロリーに制限。毎日の食事は、「shakes and drinks (ミルク・セーキとドリンク類)」だけ。もちろん、A,Bどちらのグループにも、専門医と看護士の指導・経過観察が入る。

 すると、1年後、Bグループ(149名)のうち69名(46%)に、糖尿病の緩和症状「remission (覚解)」が認められた。これに対してAグループに覚解が確認できた患者はわずか4%であった。
 さらに食事療法開始から2年後、Bグループの患者の36%が、血糖値140mg/dL以下に下がり、治療薬の必要性がなくなるまで回復した。
 なお、減量10kg以上に成功した患者の64%は、2年後に糖尿病から解放されたという。(研究結果の詳細は、医学雑誌「The Lancet Diabetes and Endocrinology」に発表された。)

 この結果から、2型糖尿病の治療には、減量(weight loss)が極めて効果的であると言える。ただし、15kg以上も体重を減らしたのに、病気が回復しなかった患者(17%)について、King's College LondonのDr Nicola Guessは、この原因をさらに探求する必要があるとし、2年間の食事療法で症状が改善しなかった患者は、恐らく、臨床試験のずっと前から糖尿病を悪化させていた、あるいは食生活に問題があったか、それとも遺伝的な要素が働いた影響ではないかと見ている。

 残念ながら、摂取カロリーを制限した食事療法は、誰にも有効とはいかないようだ。また、食事療法は、「専門医の指導に従う (under medical supervision)」ことが必須の条件。

謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事を参照した。記して謝意を表したい。

The Guardian: March 5, 2019
・Weight loss can reverse type 2 diabetes, study suggests

                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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「薬物耐性菌」、「大腸菌」もイチコロのガラス:Aston大学が開発! (BBC-News, Mar 6, 2019)

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 人類が、今、最も必要としているものは、何か。
 それは、敵を殺戮する武器でもなければ、暇つぶしのためのゲームの開発でもないし、スポーツ人材育成と称して膨大な額の国税を強化合宿などにつぎ込むことでもない。。

 病気で苦しむ数十億人の人を救うことが大事だ。まだ、原因も治療法も確立されていない病気も少なくない。少なくとも病気の原因の究明に務め、発症メカニズムを明らかにし、その予防に力を入れないことには、この世から病人が消えることはない。

 どの国も、また、どんなに小さな町・村でさえ、病人が溢れかえり、ガン、心臓病、呼吸器系疾患、うつ病精神疾患、糖尿病、腰痛・関節痛など何らかの病気で人類のほとんどが悩まされ、膨大な医療費が家庭・国家財政に大きな負担となってのしかかる。
 人間が人間として、この世に生を受けたからには、世の中あるいは仲間 (fellows)が最も必要としていることに全力を尽くす。その仕事は、どんなに生き甲斐を感じることだろう。

 現在、世界中の病院・医療関係者を震撼させているのは、抗生物質の効かない「黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)」などの「薬物耐性菌 (drug-resistant bacteria)」。それに、手術中の「真菌感染 (fungal infections)」も怖い。
 「The European Cntre for Disease Prevention and Control (欧州疾病予防管理センター)」によると、現代は医療が発達しているとは言え、ヨーロッパだけで「healthcare -associated infections (医療関連感染症HAI)」に罹患している患者は400万人を越え、毎年、HAIが原因で死亡する患者は約37,000人。
 病気を治療するはずの病院で、病原菌 (germs)が蔓延し、ほとんどコントロール不能の状態に陥っているのだ。

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 この問題に、立ち向かう研究者が現われた。ScotlandはEdinburghの中心にキャンパスが広がる Aston大学で「Engineering and Applied Science (工学・応用科学)」を専門とする Dr Richard Martinらの研究グループだ。

  リン酸塩ガラスに微量のコバルトCoを混ぜた「bioactive phosphate glass (生体活性リン酸塩ガラス)」の開発に成功し、このガラスには強い殺菌作用があることを突き止めた。
 Dr Martinらの生体活性ガラスは、コバルトの「耐性菌金属イオン (antimicrobial metal ions)」を放出する。「E.coil(大腸菌)」なら6時間以内で、真菌感染症の病原菌「Candida albicans (カンジダ・アルビカンス)」なら24時間で完全に死滅させることができ、薬物耐性菌の「Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)」でさえ、24時間後には99%が死滅する。
 Dr Martinらは、この殺菌作用の強い「bioactive glass」を、ガーゼに織り込んだり、手術台・手術器具あるいはカテーテルなどに利用することで、薬剤耐性菌などの院内拡散を大幅に減らせるものと見る。
 医学的な貢献度は極めて高い研究だ。

謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「Phys.org」の記事を参照した。記して謝意を表したい。

Phys.org: March 5, 2019
・Bacteria -killing glass offers hope in fight against hospital infections

                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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更年期障害のHRT(ホルモン補充療法):アルツハイマー病のリスク増 (BBC-Health, Mar 7, 2019)

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 赤ちゃんが誕生した瞬間に、細胞内の神秘な時計がコチコチと動き始める。
 遺伝子に刻み込まれたスケジュールに従って細胞分裂が繰り返えされ、神経組織や臓器を完成せて行く。さらに子どもが成長して思春期・青年期を迎えると、遺伝子はホルモンを分泌するように命令を発っし、子孫を残すための生殖器官が完成する。

 しかし、その後、壮年期に入ると、ホルモンの分泌はがらりと変わる。それは、とくに女性の体に大きな影響を与える。これは「menopause symptoms (更年期障害)」と呼ばれ、次のような症状が現われる。

・hot flushes:顔面紅潮
・night sweats:寝汗
・mood swings:気分変動
・reduced sex drive:性欲減退
・dry or burning mouth:口内乾燥症・口内灼熱症候群
・loosened teeth:歯のぐらつき
・weakening of the bones:骨の劣化

 ほとんどの女性が更年期障害を経験し、その期間はおよそ4年。しかし10人に1人の割合で12年間も続く人もいる。イギリス人の女性は平均51歳で更年期障害を発症し、患者には,、「Hormone Replacement Therapy (ホルモン補充療法 HRT)」が勧められて来た。

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 ところが、Helsinki大学の Dr Tomi MIkkolaらの研究グループが Finlandの女性17万人に関する14年間にわたる医療データを分析した結果、『HRTの治療が10年以上に及ぶようになると、アルツハイマー病の発症リスクが 9 -17%も高くなった』と、医学雑誌「BMJ」に発表した。
 これは、長期間HRTを受けた70-80歳の女性の場合、1万人当たり9-18人が、アルツハイマー病を発症することに相当する。

 ただし、アルツハイマー病の主要な「modifiable risk factors (修正可能な危険因子)」は次の 7項目とされる。

・diabetes:糖尿病
・high blood pressure:高血圧
・obesity:肥満
・smoking;喫煙
・depression:うつ病
・physical inactivity:運動不足
・cognitive inactivity:認知活動不足

 UKの「dementia (認知症)」患者は約85万人。その 2/3がアルツハイマー病罹患者だ。
 なお、HRTにはアルツハイマー病以外にも乳ガン、脳卒中のリスクもあることが知られている。
 The Royal College of General Practitioners (王立一般医大学)」のHelen Stokes-Lampard教授は、HRTに関しては「effective and safer treatment (有効かつ安全な治療法)」と言いつつも、『どんな治療法にもリスクはあるもの』とし、そのリスクを最小にするためには、症状に見合った最小限のホルモン錠剤を、できるだけ短期間服用することを勧める。
 
謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Sun」の記事ならびにDr Marianne J. Legatoの著書を参照した。記して謝意を表したい。

1. The Sun, March 7, 2019
・Taking HRT 'increase your risk of Alzheimer's disease', experts warn

1. Marianne J. Legato: Eve's rib, Harmony Books, 20012

                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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眠れる巨人:海面上昇で育ち、大気中の CO2をたらふく吸い込む! (BBC-Science & Environment, Mar 6, 2019)

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 沼地・葦原(あしわら)は耕作に向かない荒れ地。しかし、沼には蓮の花が咲き、ヒツジグサ、コオウボネなどの水生植物が彩(いろど)りを添え、マガモカルガモカイツブリなどの水鳥がエサを求めて、仲間と憩う。そこは、多くの動植物にとって、なくてはならない繁殖の地であり、生態系を支える重要な自然環境だ。
 その昔、古事記日本書紀の時代に、「葦原の国」あるいは「葦原の中つ国」と言えば、日本の国を指した。

 さて、地球温暖化によって南極・北極の氷が溶け、高山の氷河が溶けて海水面は上がりっぱなし。海岸線が刻々と内陸部に押し寄せ、世界中の堤防・防波堤が波に呑み込まれて行く。時間のスケールを100年、1,000年の単位で見れば、海辺に隣接した陸地は湿地に変わり、どんどん陸地面積が狭くなって行くに違いない。このまま地球温暖化が進むと、地球上の陸地のほとんどが海の底に沈んでしまうのだろうか。
 
 Wollongong大学の Kerrylee Rogersらの研究グループが、世界6大陸で過去6,000年にわたって「海性沼沢 (salt marshes」の土壌に取り込まれたCO2量を分析した。その分析箇所は300以上に及ぶ。
 その結果、海面上昇には「potential benefits (潜在的なプラス面)」があることも分かってきた。地球温暖化にブレーキを掛けるように働くというのだ。
 その理由はこうだ。

 海水面が上がると、「海に面した湿地地帯 (coastal marshes)」の面積が拡大する。すると、「marshland plants (水生植物)」などの有機物は分解されることなく、泥・土壌に埋もれて有機質の堆積層を形成する。海面がさらに上昇すると、その上に湿地帯が嵩上げされる形で積み上げられ、これが繰り替えされて堆積層の厚みは増大し、湿地帯が包蔵するCO2量は膨大になる。つまり、湿地帯は、「大気中のCO2をたらふく吸い込んだ眠れる巨人 (sleeping giants of carbon sequestration)」となっていた。
。 
 このまま海面上昇が続くと、とくに、オーストラリア、中国、南アメリカの海岸線で「salt marshes (海性沼沢)」が拡大すると考えられ、この3地域でCO2吸収量が2倍になると、大気中のCO2が湿地帯に閉じ込められる量は年間500万トン。自家用車100万台から排出されるCO2排ガス量に匹敵するという。
 
謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、Wollongong 大学の優れた「Media Releases」記事を参照した。記して謝意を表したい。

University of Wallongong, Australia, 「Media Releases] March 7, 2019
・Coastal wetlands capture more carbon as seas rise

                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

 

エイズの遺伝子治療:幹細胞移植でHIVウイルスの撲滅に成功! (BBC-Health, Mar 5, 2019)

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 HIV/Aids (エイズ)が、一頃ほど、マスコミで騒がれなくなったとは言え、世界中の患者数は約3,700万人。日本でも27,000人がこのウイルス性難病に罹患している。
 ヒト免役不全ウイルスHIV-1は、主として受容体CCR5と結合して感染し、体の細胞に侵入する。
 これまで、エイズ治療薬が、幾種類か開発され、これを服用すると、症状が安定し、普通の生活を送ることも可能になった。しかし、このウイルスを死滅させ、体から完全に排除することは困難であった。

 幸いにして、まれに、変異した受容体を遺伝学的に有し、HIVに対して抵抗力のある人が見つかることもある。このような人には、HIVは感染できず、したがって、体の細胞内に侵入することもできない。

 University College London, Imperial College London, Cambridge大学, Oxford大学の合同研究チームは、その受容体CCR5の特殊な「遺伝子変異体 (genetic mutation)」を有するドナーから「stem cells (幹細胞)」を抽出し、これをHIV患者に移植して患者の体内のHIVを撲滅することに成功した。(研究結果の詳細は科学雑誌「Nature」に発表。)

 この画期的な治療を受けた患者は、Londonに在住の男性。2003年、HIVに感染していると診断され、その後、「Hodgkins's lymphoma (ホジキン・リンパ腫)」を発症していた。
 これまで、その悪性リンパ腫を治療するため、「chemotherapy (化学療法)」を受けていた患者だ。今回の「幹細胞移植 (stem cell transplant)」は、あくまで悪性リンパ腫の治療が主たる目的だったという。

 実は、HIVを完全に体から排除することに成功した例は、10年前にもあった。このときには、HIVに対して「natural immunity (自然免疫)」を有するドナーの「bone-marrow (骨髄)」が使用された。これをBerlinのHIV患者に2度にわたって移植し、同時に、「白血病 (leukaemia)」の治療のために「total body irradiation (全身放射線治療)」が施された。

 研究者らは「HIV感染症を完治させた」とするには、時期尚早としながらも、HIVを患者の体内から締め出すことに成功した喜びを隠し切れない。この「幹細胞移植」治療の研究結果が、世界中でHIV/Aidsに苦しむ3,700万人を直ぐに救うことにはつながらないが、「遺伝子治療(gene therapy)」の有効性が証明されたことは確かだ。

                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

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