「繕(つくろ)い」:これが今、最新のアップサイクル (upcycle)だ! (RTE-News, Apr 19, 2023)
裾(すそ)がちょっと ほつれたジーンズ、わざとツギハギを当てたジーンズ、膝小僧が見えるほど破けたジーンズの値段が、無傷の新品よりも高いという不思議な時代だ。
ところで、「繕(つくろ)う (to mend)」とは、衣類の破れやほつれを、糸と針で補修することだが、この頃は、その手作業も、親から子へと代々伝えられて来た「繕(つくろ)いの技」も、人々からすっかり忘れ去られ、本来のことばの意味で使われることは、ほとんどなくなってしまった。
替わって、悪事をごまかす意味の「取り繕(つくろ)う」が優勢になった。ことばの変化は、時代あるいは文化の移り変わりの象徴とは、このことだ。
裕福な近代国家では、モノが溢れ (結果的にゴミが溢れ)、民主主義が停滞する国々では、政治家・権力者の悪事の「取り繕(つくろ)い」(マスコミではこれを釈明と称する)が溢れる。
さて、年配の人も若ものも、忘れかけた「mending」。しかし、ここに来て、古いもの(本物)に新たな命(生気)を与える「upcycle」が注目されている。
USの旧鉱山の坑内から見つけ出された古いジーンズなどは、ボロボロの代物だが、マニアの間では、プレミア付きの、目玉が飛び出るほどの高額な値段で取引される。
そもそも、世界中のどの国であれ、先代、先々代の一般家庭では、家族の衣類の破れ、ほつれは、繕(つくろ)って、長く使用するのが常だった。
それが、流行遅れになったとか、少々からだに合わなくなったとか、汚れ・シミが目立って、糸がほぐれた、破れたと言っては、これを捨てて、すぐに新しい商品を買うようになった。
けれども、「The Sunday Times」の「The Climate Supplement」編集長Ms Jo Linehanによると、この風潮はまちがい。(アパレル・メーカーのコマーシャルにまんまと乗せられて、店頭に走ってはいけない。)
また、「Rediscover Fashion」のプログラム・マネジャーの Ms Arran Murphyは、『繕(つくろ)いなんて、思ったよりも簡単』と説く。まず、針と糸を準備し、あとは、ネット上に溢れている「繕(つくろ)い講座」を参考にすれば、誰にでもできることだと。
” As with everything, practice makes perfect.”
[ なんでもそうだが、習練すれば名人になれる。]
思い出がつまっていて、愛着のある一品を、自分で繕(つくろ)うと、さらに愛着が深まり、自分の「identity (自分らしさ)」が愛(いと)おしくなるものだとか。
なお、セーターなどの「bubbles (毛玉)」を、指でつまんで引き抜くのはやめたほうがいい。繊維がほぐれてしまう。「bubbles removers (毛玉取り)」が便利で確実だ。
さらに、近年、アパレル・メーカーの手口
・green-washing:洗っても環境に優しい
・green-husing:環境に良いか悪いかについてはノーコメント
には注意が必要だ。
とにかく、メーカーの宣伝文句、販売戦略などに一々付き合っていては、時間のムダだ。自分にとって大事な一着なら、とことん、これに付き合ってみるのも大事ではないか。
おわりに:出張先の、それも知り合いが経営する男性服専門店で、大金をはたいて購入した皮ジャン。もう、かれこれ、数十年前のことだ。そして、それから色々なことがあった。そのときどきの街の空気、通り過ぎて行ったたくさんの人々の思い出が、この一着に染み付いている。わたしの大事な宝ものの一つだ。
(写真は添付のRTE Newsから引用)