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怒り、悩み、不安が渦巻く「煩悩」:断ち切って平常心を取り戻せ! (RTE-News, Dec 22, 2022)

Stock image courtesy of Getty.

1.Overtinking?:クヨクヨと考えすぎだって?

 腹立たしいことや、悔しい過去の恨みつらみに屈辱・恥辱の数々。それに口惜しい深い心の傷は、忘れようとしてもなかなか忘れ切れるものではない。さらに、遥か遠くの沖合から高潮がヒタヒタと海岸に押し寄せるかのように邪気・悪鬼が群れになって迫り、平穏な生活環境が脅かされては、先々(さきざき)が心配で食事ものどを通らなくなる。

 ときに、そんなシャクにさわることが、何度も頭をよぎることもある。

 

 しかし、嫌なことをクヨクヨと思い詰めたところで、そのほとんどは何の役にも立たない。かえって、健全な心がとことんむしばまれ、挙げ句の果てに「懊悩、煩悩、煩悶(overthinking)」の「闇の世界 (dark world)」に引きずり込まれてしまうのが関の山。

 

 そうして、一旦、その闇にはまりこむと、そこから抜け出ることは容易ではなく、

 

・意思決定 (decision-making)に支障を来たし

睡眠障害 (sleep disruption) 

・精神疲労 (mental fatigue)

に陥りかねない。

 

 人間は、一日に約60,000- 80,000回も考え事をするとされる。しかし、悩みや心配事を頭の中であれこれと絶え間なく堂々巡りさせていては、

 

・depression (うつ病)

・anxiety (不安症)

・eating disorders (摂食障害)

substance abuse disorders (物質乱用障害 [アルコール・薬物依存症])

・Obsessive Compulsive Disorders (強迫性障害 OCD)

 

を引き起こすリスクが高くなることが知られている。

 過去の不本意なしくじり、恨み骨髄の屈辱、敵対する相手から受けた辛辣な仕打ち。それらの全てを克明に思い出しては、そのことが頭から片時も離れず、悔しさと恨み(regrets andresentments)を心にいだき続ける。あるいは、近い将来、身の回りの環境が悪化したり、とんでもない不運・災難が降りかかるのではと常にビクビクしていては、自分がまともな自分ではなくなり、正常な問題解決力 (healthy problem-solving)さえ失ってしまいかねない。

 

 また、人生、自分、あるいは社会に対して深刻に考えすぎて、

 

・Who am I:自分は何者か

・What’s it all about:人生とはいったい何なのか

 

などと「existential thoughts (実存主義的思考)」に没頭すると、これに悩まされ、本当の自分を見失いかねない。

 

 なお、まともな人間がクヨクヨと「overthinkings」するようになる要因としては

 

・generalised anxiety disorder (全般性不安障害[予期憂慮])

・depression (うつ)

・traumatic past experience (過去のトラウマ的な体験)

 

が挙げられる。しかし、性格、性別も関係し、

 

・introverts (内向的な人)

・women (女性)

 

に陥りやすい傾向が認められる。

 

2.So, what helps to keep the mind healthy?:では、健全な心を保つためにはどうすれば良いか?

 気がかりなことは、気がかりが故に何度もなんども頭に浮かぶのであって、これを考えないようにしようと努力しても、それは土台無理。しかし、思いつめている自分に気づくことはできる。思いつめている「自分」と、「思いつめていること」とをはっきりと区別することはできる。

 

 頭にあることは、とにかく、今、現実にあることではないものだ。それに、自分がそのことに縛られる理由は何もない。頭から離れない悩みごとは、不愉快さと強いストレスで実際以上に悪い方向へと捻じ曲げられていることが多いもの。

 今、悩んでいることは、頭の中でグルグル回っている間に、勝手につくり上げられた妄想、あるいはシナリオ (scripts)と呼べるものに過ぎない。まずは、そのことに気づくべきだ。

 もう、自分を厳しく責めることはやめよう。それだけで心は軽くなるはずだ。

3.Retraining your brain is possible:こころは、何度でも修復が可能 

 たとえ、どんなにやっかいな煩悩にとらわれていたとしても、そこから抜け出る手立てがないわけではない。とにかく「the brain is malleabe. (心はどうにでもなるもの)」だからだ。

 以下はその具体的な手段。

 

3−1 Activity:身体を動かす

 気晴らしの運動 (healty distractions)、心を清める修行 (mind cleaning activities)、友人とのつながり (interacting with others)で気分転換できる。

 からだは、もう考えたくないと悲鳴をあげている。ならば、ヨガ、散歩、ハイキングに出かけるのも良し、絵を描いたり、写真をとったり、編み物やクラフトに挑戦するのも「頭を休める」のには効果的だ。

3−2 Cognitive defusion:認知的信管抜取り療法

  「心が痛む悩み・気がかり (painful thoughts and feelings)」から距離をおいて、心の中の「危険な信管 (fusion)」を取り外すトレーニング。

 

3−3 Acceptance and Commitment therapy:認知行動療法 ACT

 今の自分の心を受け入れた上で、目標を定めた行動に取り掛かるトレーニング。

 

3−4 Seeing thoughts as traffic:煩悩は往来のごとし

 あれこれと思い悩む様を、たくさんの人が行き交う道と捉え直し、それが大通りなのか路地なのか、また、どんな人が通り過ぎているのかと、分析してみる。

 

3−5 Using the observer mind:自分の心を観察する視点

 悶々とした心と戦っても埒(らち)が明かない。それよりも、その心を注意深く観察してみることだ。

 

3−6 Radio doom and gloom:ラジオのガーガー・ピーピー雑音として聞き流せ

 頭の中に浮かんでは消え、また浮かび上がる悩みごとなんて、四六時中、ラジオから流れる音のようなものだと考えればよい (Dr Russ Harrisによって提案されたテクニック)。ラジオでは、ときにガーガー、ピーピーと雑音が混じることもあれば、興味のない話題や、うるさい音楽が流れることもある。そのラジオのスイッチを切ることはできないが、嫌な音は雑音として聞き流すことは可能だ。

 

3−7 Meditation:瞑想

 心の迷走・暴走には「meditation (瞑想)」が有効。とくに、マサチューセッツ工科大学医学部の Dr Jon Kabat-Zinが開発した「Mindfulness-based stress reduction」には、著しいストレス緩和効果が認められている。

 毎日、瞑想しては心を整理し、無用なことに注意を払わないようにする。そして、自分の中に「mental sanctuary (心の聖域)を探すトレーニングだ。

 

3−8 Breathing method:呼吸法

 一日を通して、できるだけ何度も「the in-breath and the out-breath (息を吸って、これを吐く)」ことに心を集中させる。このとき、自分のからだのすみずみまで思いをはせる (mini body scan)。過去と未来にとらわれず、今、息を吸っている自分と、この瞬間の時空を感じ取るためだけに、すべての五感をとぎすます。これができたら、迷いは消えているはず、少なくともずっと小さくなっているはずだ。

4.Break the habit:これまでの迷いグセを打ち砕け

4−1 Three -step approach:三段階アプローチ

 Yale大学の Susan Nolen-Hoeksema教授によると、迷いグセを断ち切るための方法としては、次の「three -step approach」が有効

 

・Break the grip.(とらわれた心を解き放ち)

・See thoughts from a broader perspective.(広い視野で心を見直し)

・Avoid future traps.(後日の罠に はまらないような手立てを)

 

4−2 Questioning:問いかけ 

 モヤモヤした心の状態を大きな紙の上に描く。あるいはその心に次の質問をぶつけてみる。

 

・今、頭の中で渦巻いている考えは、正確無比なものか

・もっと賢い自分だったら、今の状態をどんなふうに捉えるだろうか。のっぴきならない重大なことと考えるだろうか。



 そんなことから、迷いの糸がほぐれて、心の動きに余裕が生まれるはずだ。

 

 ただし、上に述べたことをすべてやってみて、それでも「thoughts (心の迷い・悩み)」が

 

・distressing:悲惨で

・obsessional:執拗で

・intrusive:時、場所を構わず強引に出現し

・be impeding daily functioning:日常生活に支障をきたす

 

ようなものなら、専門家(医)に相談した方がよい。

 

 また、心の苦しみから逃れようと、酒や薬物に溺れている人なら、治療が必要なことは言うまでもない。

 

 「oberthinking (心の悶え)」は心とからだの両方を蝕む病気だ。けれど、それは不治の病ではない。適切な治療をすれば、やがて回復する病であることに間違いない。

 

おわりに:筆者は、Dr Russ Harrisの優れた「Radio doom and gloom」を、このRTEの記事ではじめて知った。頭に浮かぶ「こんちくしょう」、「かもしれない」はすべて雑音としてやり過ごす。これは極めて有効な「平常心」の保ち方だ。試してみる価値は十分にある。

                        (写真は添付のRTE Newsから引用)

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