焼(やけ/やき)山、はげ山と呼ばれ、草木が枯れ果て、地面がむき出しになった山が、全国各地に多数点在する。その原因は、火山活動にあることもあれば、かっての鉱山に付随した精錬所の有毒ガスに帰されることもある
しかし、原因はどうであれ、いずれにしても、集中豪雨の際には地すべり や土砂流出が発生し、ときには深刻な自然災害を起こしかねない「醜く、危険な山の姿」であることに変わりはない。「eco (エコ)」とは真逆の存在だ。
ところが、Wales南部の都市「Brecon (ブレコン)」の近くにも、山頂が赤茶けた山がそびえている。その名も「Beacon (ビーコン)」。地元の人はWelsh (ウェールズ語)で
・Pen-y-Fan (ペン・ニ・ヴァン) [ 山頂の意]
と呼ぶ、標高 886mの山だ。
この山を中心にした一帯が、1957年、「Brecon Beacons (ブレコン・ビーコンズ) National Park」に設定され、その後、多くの人々に親しまれてきた。
しかし、その最高峰の山頂付近は、デボン紀の「Old Red Sandstone (旧赤色砂岩)」がむき出しのため、まるで「Giant burning brazier(燃え盛る巨大なブレイザー(鉄製火鉢))」のようでもあり、極めて殺風景な場所だ。
それに、「Brecon Beacons」の名は、単に、「(都市)ブレコンの焼き窯」の印象しか与えず、また、何の「ウェールズらしさ」も反映されていない。
『名は体を表わす』と言うが、このままでは「パーク」の意図する「Ethos (真髄)」を一般の人々に理解してもらうことは不可能。
そこで、このパークの責任者で CEOの Ms Catherine Mealing-Jonesは、「脱炭素化(decarbonisation)社会にふさわしく、かつ
・By Welsh people, Welsh culture (ウェルシュの、ウェールズ文化による)
パークづくりをめざして、パークの名称を
・Bannau Brycheiniog (バナイ・ブリフェーニォグ) Nationa Park
とすることにした。 「Brycheiniog (ブリフェーニォグ)」とは、5世紀(中世初期)にWales南部で栄えた王国の名称であり、したがって、「Bannau Brycheiniog」を直訳すると、 「ブリフェーニォグ王国の峰々」の意となる。
さらに時代をさかのぼって、「Iron Age (鉄器時代)」(BC1,000頃)には、この一帯の山脈の峰々に、数にして20を超す「Hillforts (ヒルフォート) [丘の上の城砦集落]」が築かれ、交易と政治の拠点として利用されていたことが分かっている。
今後、10年をかけて
・tree covers:木陰
・wetlands:湿地
・hedgerows:垣根
・peaty bogs:泥炭地
・wild flowers:野草
の保全と清浄な水環境の回復に努めるとともに、再生エネルギー設備を導入して2035年までに「net zero」とし、世界文化・自然遺産 (world natural and cultural heritage )の登録を目指す考えとか。
おわりに:山や川、草木に小鳥はもちろんのこと、地名、学校に至るまで、ものには名前があり、「なぜ、そのように呼ばれてきたのか」の理由もあった。地名などの中には、確かに権力者あるいは征服者がかってにつけたものもあるかも知れない。
しかし、この記事の「Brecon Beacons」は別にして、地名や山の由来、歴史を無視して「ひらがな」にしてみたり、意味不明な名に改称する「はやり」には、どうしても両手(もろて)を挙げて賛成するわけにはいかない。
(写真は添付のRTE Newsから引用)