月にはウサギがいるって!:では、火星には何がいる? (RTE-News, Jan 31, 2023)
雲一つない満月の夜は、キラキラと星がこぼれ、林の木立や草むらさえも月の光に照らされる。そんなとき、子どもたちは月を見上げて、ウサギが餅つきしているのは、どの辺か。あそこか、ここかと、その姿を探し求めたものだ。
科学がそんな情景に入り込んでは、せっかくのお月見もだいなしだが、月のもようを「ウサギ」と見るのは、心理学上の錯覚「paedolia (パエドリア)」として知られている現象だ。
さて、NASAの研究者たちは、火星探査機 MRO「The Mars Reconnaissance Orbiter」が地球に送ってきた高解像度カメラ「HiRISE」の画像にびっくり。なんと、まさしく、火星の地上に「Teddy Bear (テディベア)」の顔が刻まれていたからだ。
とくに、「snout (鼻)」のできばえがみごとだ。クマの顔は横約2,000m。その輪郭は、「impact crater (衝突クレーター)」の跡に、「deposit (堆積物)」が重なってできたと考えられる。
また、おそらく、クマの「snout( 鼻)」に当たる地形(丘)は、火山もしくは泥火山の噴気孔で、V字型に崩壊した形跡がある。その顔の部分の堆積物は溶岩か火山泥流が占める。もちろん、眼はクレーターに違いない。
NASAは、将来、火星に有人(またはロボット)探査機を送り込む計画で、そのため、過去10年以上にわたって、火星の詳細な地図の作成を進めて来た。そのプロジェクトの中で、「avalanches (なだれ)」の痕跡や泥状の「dark flow (ダーク・フロー)」を発見している。さらに、火星の地表では大規模な「dust devils (塵旋風)」が渦巻いていること、「Star Treck's Starfleet log (スタートレック宇宙艦隊のロゴマーク)」に似た地形も発見している。
残念ながら、ただ一つ、見つけられなかったものがある。それは「litte green men」だった。かって、火星に住んでいると信じられていた「緑色の肌をした小さな火星人」だ。
おわりに:パエドリアを楽しむには、空に漂う雲を眺めるのが一番。これをテーマにした Ms Leslie Williams と Ms Carme Solé Vendrell の名作は胸を打つ。ぜひ一読あれ。
・Leslie Williams & Carme Solé Vendrell: A BEAR IN THE AIR, Blackie & Sons Ltd., 1979
(写真は添付のRTE Newsから引用)