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透明人間ならぬ透明ガエル:これが血栓症の予防と治療のカギだ! (BBC-News, Dec 23, 2022)

Glass frog

 かって「エコノミークラス症候群 (economu class syndrome)」がマスコミの話題をさらったことがあった。狭いエコノミークラスの座席で長時間じっと座り続けると、脚に流れる血液の巡りが悪くなって、脚がむくんでしまう症状だ。最悪のばあい、血液中に血液の塊すなわち血栓 (blood clots)を発生させ、突然、胸が苦しむ「肺塞栓症(pulmonary embolism)」を誘発しかねない。

 

 また、心臓に発生した血栓が、はがれて脚の動脈を詰まらせると、下肢血行障害すなわち「末梢動脈疾患 PAD (peripheral artery disease )」を起こし、脚の切断手術に至ることも少なくない。さらに、脳梗塞心筋梗塞、心臓発作の原因も、血液が固まる血栓の仕業(しわざ)だ。つまり「血栓症 (thrombosis)」は恐ろしい病気の元凶といえる。

 

 一般に、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールが高く、血液がドロドロの状態だったり、血液循環の流れが悪くなっていると、血栓が起こりやすいとされる。

 

 ところが、「The National Museum of National History (アメリカ自然史博物館)」のMr Jesse Delia、Duke大学の Mr Carlos Taboadaらの研究グループは、体内の赤血球 (red blood cells)を一箇所に濃縮させて、かつ、その流れを止めても、血栓を起こさない動物に着目し、その不思議なメカニズムの解明に取り組んだ。(研究成果は科学雑誌「Science」に発表。)

 

 研究対象の動物は熱帯のジャングルに生息する両生類「glass frog (透明ガエル)」。正式な名称は「アマガエルモドキ」。学名「Centrolenidae」という。体長3.0- 7.5cmの小さな夜行性のカエルだ。日中は、捕捉者の眼をごまかすためにカモフラージュの術をつかい、まるで葉っぱの上にこぼれたゼリーのような姿になって眠る。これで、そのカエルの体は、周囲の緑に完全に溶け込んでしまう。Glass frogs sleeping on leaves turn transparent to hide from predators

 このとき、カエルは、体中の全ての「red blood cells (赤血球)」の89%を肝臓だけにプールしているため、体全体が透明なゼリー状に見えるのだ。このせいで、日中の睡眠中の肝臓は、夜間の活動中に比べて約 2倍に膨れ上がる。睡眠中に体を流れるのは、ほとんどが血液から分離された「blood plasma (血漿)」。

 なお、体の一箇所にこれほど赤血球を詰め込んでは、地球上のたいていの動物なら血栓を起こす。なぜ、この「glass frogs」の体だけが、血栓を免れているのか。

 

 やがて、日没になって、カエルが動き始めると、再び、肝臓から赤血球が体全体に送り出されるという。

 しかし、このカエル、たとえ眠っているときでも、体に損傷を受けると、その傷口を止血(しけつ)するために血栓をつくることは可能だ。The frog has different levels of red blood cells circulating when asleep and when active

 人間が「glass frogs」から学ぶことは多い。濃厚な赤血球クラスターをつくっても、なぜ、血液の塊すなわち血栓に発展しないのか。どのようなメカニズムで血栓の発生を防いでいるのか。

 なお、このカエルの優れた血栓防止メカニズムが臨床に活用されるようになるまでには、残念ながら、まだ数十年先の月日が必要と、研究者は見ている。

 

おわりに:医者は決して奢(おご)ってはならない。たとえ、それが、ほんのわずかの油断、不手際あるいは些細な医療ミス(?)であったとしても、患者は命を失いかねないからだ。あるとき、某病院の不手際で患者の体内に血栓が発生した。それが原因で下肢血行障害を招き、片足を切断せざるを得なかった。その後、その患者は生きる気力も体力もなくし、まもなく他界した。合掌。

                     (写真は添付のBBC-Newsから引用)

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