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密かに進行する「卵巣ガン」:腫瘍マーカーCA125で発見できる? (BBC-Health, May 12, 2021)

Woman in hospital gown on bed

 ほとんど症状が現われない。腹部に違和感があっても、専門医でさえ、他の病気と区別がつかず、つかみどころのない (elusive)、しかも命取り (deadly)のガン。それが「ovarian cancer (卵巣ガン」だ。

 

 このガンに罹患すると、診断から10年以内に、3人に 2人が命を落とすという。

 UKでは、毎年、約7,500人が卵巣ガンと診断され、このガンで死亡する人は約4,000人/年。なんとかして、初期の段階で卵巣ガンを発見できないものだろうか。

 

 「University College London」の Usha Menon教授らの研究チームは、閉経後の被験者約200,000人の協力を得て、腫瘍マーカーCA125 検診の臨床試験を実施した。

 検査は2001年から2005年までの 5年間、毎年、被験者の血液を調べ、その中にCA125が含まれていないか確認した。CA125 はガン腫瘍から放出される糖鎖抗原の一種で、血液検査の結果、CA125値の高い人には、さらに「ultrasound scan (超音波スキャン)」を受けてもらった。 

 

 さて、その臨床試験の結果だ。

 

・ステージⅠ、Ⅱ(初期ステージ):卵巣ガンの発見率39%

・ステージⅢ、Ⅳ         :卵巣ガンの発見率10%以下

 これでは、新たな「blood test screening (血液検診システム)」によって、患者をガンから救うことができたとは言えない。(研究結果の詳細は医学雑誌「The Lancet Medical Journal」に掲載。)研究者は落胆 (setback)を隠せない。

 

 なお、腫瘍マーカーとして、ガン腫瘍から放出される「fragments of DNA (DNA断片)」、「exosomes (エクソソーム)」(ガン細胞をバラバラにする微細な膜小胞)も考えられるが、いずれにしても、医療現場で実用化されるためには、長期にわたる大規模臨床試験が必要になる。

 

 結局、New South Wales大学の Ian Jacobs教授が指摘するように、

 

”Realistically, this means we have to reluctantly accept that population screening for ovarian cancer is more than a decade away.”

[ 現実的に見て、この研究結果の教えるところは、我々は不本意ながら、卵巣ガンの集団検診を10年以上にわたって受けざるを得ないということだ。]

 

 卵巣ガンの初期症状は、極めて現われ難いが、

 

・トイレの回数が増えた

・下腹部の痛み

・膨満感 (bloating)

などがあったときは、専門医の診断を受けるのがベストだ。

 

おわりに:初期ステージで発見されると、治療効果も高く、死亡率も低くなる。とは言え、その発見・診断技術が遅れているのが実状だ。医学の進歩は進んでいるように見えて、精神疾患やガンなどの病気の原因、発症メカニズも、ほとんどよく分かっていない。

 

謝辞:なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。記して謝意を表したい。

 

The Guardian、May 12, 2021

・Annual screening for ovarian cancer does not save lives, study finds

 

                                 (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com