ミクロな世界は不思議がいっぱい:最も知りたい不思議は病気の原因 (BBC-Health, December 18, 2019)
ある日、突然、体に力が入らなくなり、あれよあれよ言う間に、動くことも、話すことも、水を飲むことさえできなくなり、ついには呼吸困難となって死に至る病。難病の「amyotrophic lateral sclerosis (筋萎縮性側索硬化症ALS)」だ。この病気は、脳神経細胞と脊髄に障害が発生し、運動機能に支障を来す「motor neurone disease (運動ニューロン疾患MND)」の一種だ。
残念ながら、治療法はない。また、この病気の原因も正確に特定できていない。 これまでの説では、遺伝子に原因があるとも、重金属あるいは「農薬汚染 (agricultural contamination)」の所為(せい)とも言われて来た。
そこでExeter大学の Andrew Crosby教授らの研究チームはMND患者の遺伝子解析を行なったところ、コレステロールをコントロールする13ヶの遺伝子に異常があり、細胞内のコレステロールと脂肪類との間に「imbalance (アンバランス)」を発生させていることを突き止めた。(研究結果の詳細は、医学雑誌「Brain: A Journal of Neurology]に発表。)
これで難病のMNDの発生メカニズムがようやく見えて来た。しかし、まだ疑問が残る。
たとえば、遺伝子に異常が見つかったとき、何らかの方法で、細胞内のコレステロールのバランスを修正できるのか。あるいは、病気の進展を遅らせることができるのか。 病気の発生メカニズムの解明と、本格的な治療法の開発に至る道は、まだまだ遙か遠い。
なお、UKだけで年間約5,000人が新たにMNDと診断され、2,000人以上がこの病気で命を落としている。
おわりに:医学の最重要課題は病気の原因を究明すること。原因が分からないのに、予防対策だ、治療法がどうのこうのと議論を繰り返しても、それは空しいことだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)