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激しい運動:筋肉が動かない「運動ニューロン病」の引き金に! (BBC-Science, June 6, 2021)

Boxing

 鍛えに鍛えたプロのアスリートと呼ばれる人でも、ある日、突然、体の筋肉が思うように動かなくなる病気。それが「motor neurone disease (運動ニューロン病MND)」だ。発症率は300人に1人。したがって、日本 (人口約1億2千万人)の患者数は推定40万人となる。

 

 運動ニューロン病 MNDは、さらに

筋萎縮性側索硬化症 ALS

原発性側索硬化症 PLS

・脊髄性筋萎縮症 SMA

・球脊脊髄性筋萎縮症 SBMA

 

などに分類される。残念ながら、有効な治療法はない。そもそも、病気の原因が分かっていないのだ。

 

 おそらく、遺伝性 (genetic)と環境因子 (environmental factors)が重なって発症するとも、あるいは、運動 (exercise)が原因ではないかとの疑いが持たれたり、遺伝子説 (genuine cause)は単なる「coincidence (偶然の一致)」によるものではないかと、諸説紛々であった。

 

 そこで、Sheffield大学の Dr Johnathan Cooper-Kockらの研究グループは、「Mendelian randomisation (メンデルのラダム化解析手法)」に従って、「UK Biobank」に登録された約50万人の遺伝子データを解析した結果、遺伝子に特定の変異が認められる人が、「いつも激しい運動 (regular and strenuous exercise)」を続けていると、MNDを発症するリスクが高くなることを突き止めた。(研究内容の詳細は医学雑誌「EBioMedicine」に発表。)

 

 なお、ここで「regular(いつも)」とは、一回15−30分間以上の激しい運動を、週に2−3回以上する人のこと。

 

 Sheffield大学神経科学研究所所長 Dame Pamela Shaw教授によると、激しい運動によって体内の酸素濃度が低下し、「motor nueurones (運動ニューロン)」が「oxidative stress (酸化ストレス)」を起こして、脳の運動神経細胞が傷つき、最終的に細胞の死滅を招いていると考えられるという。

 

 この説を裏付けるように、イタリアのサッカーチームについて調べた研究によると、サッカー選手がMNDに罹患する確率は、一般の人の 6倍であった。現に、UKの著名なサッカー選手 Rob Burrow, Stephen Darby, Doddie Weirらのいずれもが、この MNDを発症し、現役を退いたことはよく知られている。

 

おわりに:人によっては、激しい運動 (サッカー、ラグビー、ボクシング、マラソン、剣道、柔道など)が、脳に酸欠を招き、運動神経が死滅する。これが「genetic vulnerability (遺伝子の脆弱性)」の一言で片付けられては、若くして、身体の自由を失った人に余りにも気の毒だ。

  (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com